空色(男性目線)
空色 作】葉月奏詩
人称、語尾変更可
今日も大好きな空を眺めています。
雲ひとつない空を。
君は、どんな時も優しい笑顔を見せてくれる。
春の暖かさに包まれたような心地よい気持ちになるんだ。
君に会えなくて寂しい時は、君とつながっている空を見上げて思い出す。
嬉しい時は一緒に笑いあって。
悲しい時は僕が守ってあげるからね。
だから君の空に雲が陰った時はいつでも教えてほしい。
ずっと一緒にいようねって約束したけれど、君は日に日に仕事に追われて会うことも連絡することも減っていった。
時々送る僕の気持ちを隠した心配メール。
ちゃんと食べてる?一緒にご飯食べたいな…。
ちゃんと眠れてる?一緒のお布団に入りたいな…。
僕の思いに気づいてるかな?
今、僕にできることは頑張り屋な君が、無理しすぎないように見守る事だけ。
本当はもっとそばに居たい。
本当はもっともっと話したい。
君が仕事に押しつぶされそうな時に内示された。
僕の転勤。
本当は誰にも教えてはいけないけれど。君にだけは…。
だって君と離れるなんて考えられないから。
ありったけの勇気を込めて…携帯の画面をタップする。
3度目のコールの後に君の元気のない声が聞こえてきた。
≪突然電話してごめんね。僕、転勤が決まった。一緒に来てくれないかな?≫
…お願い。いいよって答えて…。
また、君と笑いたいんだ。
≪ごめん。今、忙しいから…。ついて行けない≫
…分かっていたよ。
今の君は仕事が1番なんだよね。
強く言えない僕は、君の答えに頷く事しかできなかった。
五月晴れの今日。
引っ越し業者の後ろを僕の車が走る。
僕の隣には君がいない。
あるのは持ち主を失ったペアリングのみ。
車の窓から覗く空は今日も綺麗。
どうか幸せになってください。
僕は、君の幸せを空に願う。
君からもらった雲のキーホルダーがきらりと光った気がした。
おわり
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