10の獣を想う【#ガーデン・ドール】

ぼくはヒマノ・リードバック

マギアビーストを討伐した後にもらえるものにステッカーがある。

ぼくはこれを机に広げて思い出していた。
それは10の獣の記憶。

ぼくは一枚目に手を取る。
それは羽の生えた虫のような姿。

-途上魔機構獣 モニュメンタラーバ-


それはぼくたちが初めて仮想を除き戦うことになったマギアビースト。
花を食べ傷を癒し、羽を飛ばしてくる。
普段見る獣とは違う異質な姿に当時は驚いたものだ。
…言葉が通じないことがわかったのも、確かこの辺り。

二枚目。
それは王冠のようなものを被った異形の姿。
記録によると蛇らしい。
…蛇ってもう少し長いものだったと記憶しているが…はて。

-邂逅魔機構獣 ヨコシマロード-


それは自分からは動かず、口に見えるところから小さな何かを吐き出し、物を集めさせていた。
この時ぼくは物であれば何でも切り裂けるハサミを持っていたため王冠に使用したが、刃が通らず、生き物に効く魔術が効いていない様子から物でも生物でもないことを知る。
ある意味戦い方の模索をしていた時期だ。

三枚目。
それは二足で立つ鳥のような姿。
…マギアレリックが壊れた際にマギアビーストが出現する、とわかったきっかけ。
その時ぼくは動ける状態ではなかったので詳しいことはわからないが、
他のドールに聞いて分かったことだ。

-冥奏魔機構獣 ヘルスパロット-


嘴から音を出し、獣を呼び出す力を持つマギアビースト
今まで本でしか見たことのなかったライオンやワニを呼び出していたことから本に書かれている獣は実在していたのかもしれない、そう思ったきっかけだった。

四枚目。
それは細長い何か。
結局何を模していたかはわからなかった。
蛇ではなさそうだし、これはなんだろう…?

-地縛魔機構獣 ロータス-


何かをとらえ尻尾とし、それを使用して襲ってくる。
倒した後空へ飛び立ち、その結果月の満ち欠けが生まれたと聞く。
その時は屋上に特別な思いがあったため封鎖されるきっかけとなったこれに少し殺意を覚えたものだ。今となっては懐かしい。

五枚目。
それは箱に入った蛸。
突然図書館に現れた存在。

-方双魔機構獣 オックトライ-


箱を出入りし、出てきた時は毒を持つ触手で攻撃してくる存在だった。
箱に入っている間は思うようにダメージが与えられず苦戦した記憶はある。
討伐後、海が生えたと聞く。
おかげでぼくは海の生物の存在を知ることができ、獣化する対象が増えたためこのマギアビーストには実は感謝している。

六枚目。
これは...アルスさんのなれの果ての姿。
…ひっくりかえした花瓶のような、異形。
…こうならない未来はあったのか、今はもうわからない。

-偽神魔機構獣 アルストロメリア-


それは不死身で、とある存在による助言がなければ倒すことができなかったであろう存在。
生きることに絶望させ、諦めさせることでようやく止まったもの。
何故その性質を持っていたのかは…知ることはできたがここには残せないだろう。
その亡骸は願いを叶えるマギアレリックとして元居た場所へ設置されている。

七枚目。
それはぼくの願ったものが叶った結果出現したもの。
二頭をもつ蜥蜴の姿。

-双頭魔機構獣 ツインテールリザード-


頭と思っていたものは実は尻尾で、尻尾と思っていたものは頭だった。
ぼくの元々所持していたマギアレリックから出現したそのマギアビーストは、マギアレリックの持つ透明になる異常ではなく、バスケットシューズのような対となるものをもつ存在として現れた。
これが透明になる方だったらどうなっていたのか…想像したくない。

八枚目。
それはチョウチンアンコウのような頭を持つカモノハシ。
海に出現した毒をまき散らす獣。

-潜考魔機構獣 プラタナシナプス-


それは頭の触覚から毒をまき散らす迷惑な存在。
その分本体はほとんど何もしなかった気がするが、とにかく毒が大変だった。
確かほかのドールたちが集中して出撃したためすぐに討伐された気がする。
そんな存在だったはずだ…あまりにもカモノハシだった為獣化の参考にもなった。
ある意味感謝はしている、そんな獣。

九枚目。
それはドールのような異形の姿。
出撃したドールに合わせ姿を変える存在。

-像幻魔機構獣 ロールライク-


姿形だけはドールに見えるそれは、出撃したドールのクラスに合わせ姿を変えていた。
ブルークラスがいるときは羽が生え、
イエロークラスがいるときは目玉が増え、
グリーンクラスがいるときは角が生える。

攻撃方法もそのクラスのドールの使える魔術を行使したように見えた。
結局何がしたかったのか…それもわからない異質の存在。
ぼくが感じたのはそれくらいだった。

そして…十枚目。
それは箱庭を徘徊し最後にグラウンドに居座っていた鎧の姿。
…つい最近まで教育実習生として存在していたグロウ先生が処分された後に現れたもの。
何故現れたか、詳細について知ってはいるが、ここでは諸事情により明かせない。
…本当に難儀なものだ。

-煌煌魔機構獣-グロウイングナイト-


箱庭を規則性のあるようなないような動きで徘徊していたそれは、
最初は如何なる攻撃も通さず、佇んでいた。
グロウ先生から貰った飴…それを触れさせたときに変化があり、
いくつか触れさせた段階で魔法が入るようになったと聞く。
そしてすべての種類の飴を触れさせたとき…崩れ始めた。
あの現象がなかったとしたら、ガーデンはどうなっていたのだろう。
想像したくはないが、恐らくろくなことになっていないだろう。

…すべてのステッカーを確認して思いを馳せ、一息つく。
ぼくたちは今までたくさんのマギアビーストを討伐してきた。
ただし意思疎通はできず…倒された後はマギアレリックとなるのみ。
例外はあるが。

…マギアビーストは何のために生み出されたのだろう。
ロメリアさんのような幼体からマギアビーストの成体となるパターンもある。
マギアレリックから生まれるそれとは何が違うのだろう?

…その答えは、もうすぐ。見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない。
…とあるミッションを達成し、辿り着いた先に。


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