あなたの名前を知りたい【#ガーデン・ドール】

ぼくはヒマノ・リードバック。
これは、とあるミッションを達成したことにより得た権利を使うお話。
…なんと呼んでいいか、知りたいよね。

ぼくはせんせーにとあるミッション達成の報告をした後、自室で待っていた。
…来ましたか。
音もなくどこからともなく現れたタブレット端末。
『せんせー』だ。

「…こんばんは。せんせー。権利を行使して質問させていただきますねー」
『はい、どうぞ』

無機質な声が響く。
いつものように淡々とした調子だ。

…とあるミッションを達成したことにより、ぼくは『せんせー』に一つ質問する権利を得た。
知っていることであれば普段聞けないようなことも聞くことができるというものだ。

…さて、何を聞こうか。
まず思いついたのはマギアビーストの幼体について。
…ただ、なんとなく望む答えは聞けない気がした。
…ガーデンにとってマギアビーストは害をなすもの。
成体になって初めて認識されていた。
だから…情報は残っていないのではないか。
これを聞かないとなると、どうしようか。
…そうだ、アルスさんの身に着けていたマフラー…元々ロメリアさんがマギアビーストとなり、倒されたことにより生まれたマギアレリック。
…これの名称なら知っているかもしれない。
今後探し出すとしても固有の名称があったほうがわかりやすい。

「…元々ロメリアさんだったマギアレリックについてー、マギアレリックとしての名称と具体的な効果を教えてくださいー」
『あのマギアレリックは命名される前にアルスと名乗る少女に持ち去られたため名前はついていません。具体的な効果は認識阻害だと思われます。マギアレリックを装備すると見る者によって姿が変わるという効果があったようです』

…名前はない、ですか。
そして効果についても目新しいものはない。

…そっか、あの名称はガーデンがつけていたんですね。
それで…アルスさんが先に持って行ったから名前がない状態、と。
それなら今まで通りに呼ぶしかない、か。

マフラーについて考えていたらふと思ったことがある。
マギアビーストの幼体とドールは違う存在。
だから本来は意思疎通はできない。
それでも、あのマフラーを付けていたアルスさんとは会話ができていた。
ということは何かしらの人格があるものなのだろう。
…あの人格というか、性格は一体どこから来ていたのだろう?
気になる。聞いてみたい。
…質問できるのは一つまで。
それは理解している、けれど。
ふと思い立ったこれを、どうしても聞いてみたかった。

「ありがとうございますー。おまけで答えてはもらえませんかー?あのマギアレリックにより姿が変わった存在と会話ができたのですが、その人格はどこから来たものだと推測できますかー?」
『ミッションで答えられる質問はひとつまでです』

…はい。機械的に処理するしかできないせんせーでは、こんなものだ。
人格については自分で調べるしかないだろう。

「やっぱりそうですかー、ありがとうございます。」
『ほかになにかありますか?』
「いえ、大丈夫ですー。ありがとうございました。」
『ガーデンはキミ達が優等生であることを願っています。』

…そういってせんせーはぼくの前から姿を消した。

さて、どうしましょうか。
たしか…映画館にいたマギアビースト。
あの子を討伐したときに多目的室に置かれているマギアレリック。
意思があるとのことですが…一度話に行ってみましょうか。
もしそれがマギアビーストだった頃のことを覚えているのなら…
マギアビーストにも人格というものが存在することにはならないだろうか。
もしあるのなら…アルスさんやロメリアさんの人格をコアに入れることができるかもしれない。…それができるのなら、ぼくはどんな手段であろうと…。

…ほしい情報は得られなかったけど、気づきを得ることができたからこれでいい。
何か思い至ったらもう一つ…ミッションを達成することにしよう。
そこに…ぼくの求める答えがあることを信じて。


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