ぼくの知ることを、あなたたちへ。(副題:マギアレリックの勉強会)【#ガーデン・ドール】

ぼくはヒマノ・リードバック
これはとある位置にいるドールたちへ情報共有をするお話。
マギアレリックのことを知ってもらうと同時に、とある目的を達成するための勉強会を開くことにした。
なんでもやると決めたから。知るために。

「皆様、お集まりいただきありがとうございますー。」

6月18日。煌煌魔機構獣が討伐されて少し経った頃。
ぼくたちは冬エリアにきていた。雪の降り積もる白銀の世界。

ぼくは目の前にいる5人…アザミさん、シャロンさん、ククツミさん、リラさん、ヤクノジさんに向かってお辞儀をする。

みんなを集めた目的は勉強会をするため。
ぼくの知っていることを共有し、マギアレリックを実際に使ってもらって体験してもらう。
その不思議な力と有用性を。

「今回はー、マギアレリックについてぼくの知っていることの共有と、折角だからマギアレリックを使ってもらって知ってもらおうと思ってー?この勉強会を立てさせていただきましたー。」

さて、勉強会をするにあたって、まずはどれくらいの認識か、知っておいたほうがいいと思った。
なので、今回の勉強会の目的を軽く話し、質問してみる。

「皆様はー、マギアレリックについてどれくらいご存じですかー?」
「私の元に訪れないあんちきしょうです」
「うーん……扱い方が限られた不思議なもの、って感じかなあ。僕のお面みたいなものもあれば、リツちゃんのチョコの蛇口もあるでしょ?」
「バンクさんとは七不思議以来ずっと一緒ですけれどね……」
「私もあまり使い道がなく仕舞いこんでしまってるので……物によっては戦いに活かせたりする武器、の様な認識もありますね」

各々自分の思っていることを話してくれた。
…アザミさんはおいておいて、恐らく他の方々の認識も大体似たようなものだろう。
不思議な力を持つ、道具。
戦いに使えるもの、使えないものはともかく限られた扱い方で力を発揮するもの。
…間違ってはいない。けど、マギアレリックが作られたことには理由がある。
各々の認識を確認したぼくは、続ける。

「マギアレリックとは、制御された異常です。『この情報にはプロテクトがかかっています』の為に『この情報にはプロテクトがかかっています』もの。イベント報酬の他、マギアビーストを討伐することでも得られます。…ここまでに、何か質問は?」

ぼくはとあるミッションで得られた情報を交えて知っていることを話す。
…あれ?そういえば…ミッションで得た情報ということは、ほぼプロテクトがかかっているということで…?
案の定、シャロンさんとククツミさんを除く参加者が不思議な顔をしていた。

「プロテクトがかからない範囲でもう一回お願いします」

そして、その沈黙を破るように、アザミさんが指摘してくれた。
…やっぱりー?
うーん、これ、相当難儀な仕様ですよ。
知る権利のないドールには思った以上に情報を伝えることができない。
どうやら、まだ知る権利のないドールに伝えられる情報はすべて『この情報にはプロテクトがかかっています』というものに置き換えられるらしい。

「…なるほど?やっぱりプロテクトかかっちゃいましたか。…それでしたらこの勉強会が終わったら理解できるようになるかも、しれませんね?今はまだ、ここまでしか言えませんが。」

…実は、プロテクトがかかってしまうことは覚悟していた。そのために今回の勉強会ではとあることをしてもらうつもりだった。
その行動によって、知ることのできる情報を増やす。それも目的の一つだから。
この話については一旦一区切りついたと判断したぼくは、とあるものをリュックサックから取り出し、縮小魔法を解除する。

浮いている箒、何でも切れるハサミ、雪だるまに押すと命を与えるスタンプだ。

「これは、ぼくのもっているマギアレリックです。浮いている箒に、雪だるまに押すスタンプに、なんでもきれるハサミです。お貸ししますので、自由に使ってみてください」
「えっ、いいの?わー、ワクワクするね」
「箒に乗るって、なんだか絵本の物語に出てきそうな魔女になれそうな気分ですね……!」
「と、言ってもボクは全部使わせてもらったことがあるんだよなあ……箒は乗せられた、に近いけれど」
「ハサミ……これすごいですね。刃を入れたらスーッってキレますもん」
「雪うさぎさんに、このスタンプを使って……」
『プ』
「鳴きました……!?」
「ククツミさんの作った子は、そんな鳴き声なんですねー。このスタンプ、大きさと作る人によって性格も変わるんですよねー。不思議なものですー。」
「そういえば、季節の石騒ぎの間にスタンプで作りだした子たち、戻る前にここに運んでやれなかったなあ……」
「ガーデンの季節が戻って、もうだいぶ経っちゃったもんね」
「見てください、この前バランスとる練習したおかげで綺麗に立って乗れるようになりましたよ! ほら!」

各々道具を手にして試し始める。
ふとアザミさんが目に入った。
箒に乗って…立って…あ、ひっくり返った。
ツルッ、ゴォン!

「アザミさん?!」
「本当にどうしてだい!?」

アザミさんが箒から滑り落ちて頭をぶつけてる…どうして立ってしまうんだろうね…。
アザミさんはククツミさんとシャロンさんにお任せすることにしよう。
ぼくはリラさんとヤクノジさんのほうを向き、声をかける。スタンプを手に持ったまま。

「リラさん、ヤクノジさんも。こちらを使ってみませんか?」
そういってスタンプを差し出す。
受け取ったリラさんとヤクノジさんは2人で雪が比較的多いところへ移動すると、雪だるまを作り始めた、

「ククツミちゃんみたいに作ればいいの?じゃあ……こうして、猫みたいにして……」
ヤクノジさんは、少しいびつな猫の雪だるまを作って、スタンプを押した。
レリックの効果はすぐに出て、雪だるまはぐるぐると喉を鳴らす。
「ふふ、可愛いなあ。ほら、リラちゃんも」
「はい!……こうして、こうで……えい!」
手元の雪を組み合わせて、子犬の様な雪だるまを作るリラさん。
そこにスタンプを押すと、元気に駆け回り始めて大きくひと鳴き。
『ヴォフッ!!』
見た目から想像出来ない重低音な鳴き声。面白いなあ、本当に。

一通り参加者がマギアレリックを試し終わったことを確認したぼくは、改めて全員の方を向いて話し始める。

「さて、一通り試してもらえたでしょうかー。では、最後にー。このスタンプ。これを皆で壊そうと思います。」

楽しく使ってもらったし、使わせた貰ったけれど、このスタンプはここまで。今日は元からこれを壊すことに決めていたから。

「あら……」
「そんな……!」
「もったいだい……」
「確かに、なんか勿体ない気がするね」
「……壊す、ということは、さっき作ったこの子たちも崩れてしまうんですか?」

それについては確認済みだ。レリックが壊れても、それによって生まれたものは死なない限り命が消えることはない。

「バグちゃんに聞いてみましたが、壊れても死なない限り大丈夫みたいですー。」

…この勉強会の最後の目的。それは全員で一つのマギアレリックを壊すことだ。
ここにいるメンバーにはそれをすることによって受ける恩恵がある。それが何かはまだ言えないけれど。

ただし...破壊できるマギアレリックというものは基本的にはガーデンの主催するイベントでしか入手することができない。とても貴重なものだ。
それに、破壊するとマギアビーストが出現する。
それもまた、必要なこと。
こっちもぼくの目的の為にやらなければいけないこと。
だから…続ける。

「理由を話しましょうか。マギアレリックを壊した後に出てくるマギアビースト。こちらを討伐したマギアレリックは『この情報にはプロテクトがかかっています』となります。物というものは意図しないタイミングで壊れる可能性があるものです。マギアレリックも例外ではない。だから…自発的にタイミングを見計らって出現させた方が対処しやすい、でしょう?…ぼくはいずれ手持ちの破壊できるマギアレリックはすべて壊すつもりです。それが必要になる気がするから。だから…どうせ壊すなら動ける人が多いときに壊した方がやりやすいのです。色々と。」

長々と説明して一息ついて、続ける。

「だから…一緒に壊してくれませんか?」

「……ヒマノさんが覚悟を決めているのであれば、構いませんよ」
「そういう、ことかい……わかった。その代わり、急いで対処しよう」

他の人も色々思うところがあるようだが頷いてくれた。
…一応納得いただけたようだ。安心した。
ぼくは全員に一箇所に集まるように声をかけ、スタンプを浮遊魔法で浮かせ、ハサミを手に持つ。

「それでは皆様、このハサミを全員で持って、壊しましょう。」

各々取っ手の部分を少しずつ持つ。
ぼくはそのままスタンプの方へ誘導すると、ハサミの刃がスタンプの取っ手に触れた。

少しだけ力を入れ…ハサミが閉じられたかと思うと…スタンプの取っ手が切れ、浮遊の効果がなくなり下に落ちる。

そして黒いモヤが出てきたかと思うと…あれ?
真上でぐるぐるしている?
もしかして…出現位置…ここ!??

「あっ、そういえばこれ…雪のスタンプだから…もしかして…出現位置冬エリアですかー!?皆さんー、出現しないうちにー、逃げますよー?」

ぼくは叫んで離れることを促す。
そういえばそこは考慮してなかったなぁ…うっかり。

「ね、念話でみんなに知らせるべき?」
「はい、お願いします!いつ出るかはわかりませんが、伝えておいたほうが確実なので!」
「うさぎさんたちは寮まで連れていけますかね……?!」
「クーラーボックスあります!これに入れて放散魔術を使ってもっていきましょう…!」

スタンプによって命を与えられた物達を雪が詰まったクーラーボックスにいれ、放散魔術をかけて冷やしておく。これで溶けることはないだろう。しばらくはここに入れておいて、マギアビーストがいなくなった頃に戻そう。
…定期的に冷やしておかないとね。冬エリアへ戻すために。
各々、撤収準備を完了させ、一目散にここから離れる。
いつ出現するかは不明だ。特に予兆のようなものもないので、準備が整っている時に来ることを祈るしかない。
…やりたいことはやった。恐らく参加した皆も得られたものはあるだろう。
あとは…出てきたものを倒すだけだ。
それで今回の目的はすべて達成できる。
それはそれとして…お願いですから、撤収するまで現れないでくださいねー!????

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