続く道への下調べ【#ガーデン・ドール】

ぼくはヒマノ・リードバック。
これはいずれぼくがとるべき道のための調査のお話。

セイさん…あなたは一体なんですか?

ここはキッチン。
ぼくは皆が食べられるように焼きそばパンを量産していた。

「今日の分はこれでよし…かな?セイさん…出てきてくれないかなー」

今回の目的はそれだけではなく。
セイさん。
額縁に閉じ込められた少女。
見た目はぼくたちドールと一緒で、羽がある。
ブルークラスのドールと同じ特徴だ。

…でも、ドールかどうかはわからない。
直接聞いたことはないから。

なので、もし現れたら聞いてみようと思っていたのだけど…。

ぼくは焼きそばパンをもって額縁の方に近づいていく。

「セイさんー、ごはんですよー」

そんなことを言いながら近づくと、額縁がガタガタと揺れる。
そして次の瞬間、その少女は現れた。

「……あ、ヒマノさん!」

よかった。出てきてくれた。
どうやったら出てくるかはわからないが、どうも何か食べ物があるときに出てきている気がする。
ぼくは安堵し、パンを差し出しつつ話しかける。

「セイさんー、こんにちはー。ちょうどよかった、パン作ったので食べますー?」

「こんにちは!良いんですか?ありがとうございます!」

セイさんは椅子に座ってパンを受け取ってもぐもぐ食べ始める。
うん、パンは手で持っても火傷しないからいいですよね。
セイさんはどんなものでも手づかみで食べちゃいますから。

「ん〜、美味しいです!」

とても幸せそうな笑みだ。こちらも嬉しくなる。
…そうだ、しばらくするとまた額縁に戻ってしまうんだった。
早めに聞くことは聞いておかないと。

「それはよかったですー。そういえば聞きたいことがあるんですがー、食べながら答えてもらってもいいですかー?」
「はい、なんでしょうか?」
「セイさんってー、ドール、なんですかー?」

…前に質問に答えてくれた『センセーのような何か』によると、ぼくの願いを叶えるには額縁の少女…セイさんの体が必要なようだ。
ただ…セイさんがマギアビーストのような存在である、もしくは本部さんのような存在であることを否定できない。
なので、直接聞いてみることにしたんだけど…どうやらわからないようだ。
…そういえば昔いたところの記憶もあまりない状態だった。
自分のことも…わからない、そんな可能性はある。
ドールであれば動きを止める方法は簡単だ。
…だが、それ以外なら?

「ぼくたちみたいな存在ってことですねー。ぼくとセイさんは同じ、なのでしょうかと思いまして」
「……どうなんでしょう……?ごめんなさい、私よく分からなくて……ヒマノさんから見て私と皆さんは同じ存在に見えますか?」

…ぼくから見て。セイさんはドール…だと思う。
羽の大きさは違うけど、ブルークラスと同じような羽が生えているわけだし、魔術も使えるし…。

「そうですねー。羽もありますし、魔術も使えますー。なのでぼくたちと同じドールなのかなー、とは思ってます。」
「それならきっと同じだと思います!分かりませんけど……まるっきり別の存在というわけではなさそうな気がします」

セイさんも同じようなものだと思っているようだった。
…それならセイさんはドールと仮定して、次の動きを進めてしまおうか。

「…そうですね。それなら嬉しいのです。答えてくださってありがとうございますー。…思い出せると、いいですね。自分が何者か、も。」

何者かわからないことは、とても怖いから。
…まあ何だったとしても、セイさんがそこにいることには変わりない。
でも、折角なら。すべてを思い出してほしい、そう思う。
…その結果、覚悟が鈍ることになったとしても。

「ありがとうございます。皆さんが協力してくれれば思い出せると思います!ヒマノさんはいつもパンを作ってくれて優しいですね、私も何かお返しができたら良いんですが……」
「パンを作るのは趣味ですしー、セイさんはここガーデンの一員みたいなものですからー、ぼくのパンでよければいつでもー。
…お返し…そうですね、でしたらセイさんにしか解決できないことが起きたとき、協力していただいてもいいですかー?」

ふと、提案してみる。何をするつもりかは極力言葉にのせないようにして。

「はい!私にできることなら協力しますよ!何でも相談してくださいね〜」

お墨付きをもらえた。これなら…罪悪感も、少しは減るかな?

「何でも…ありがとうございますー、ではその時はよろしくお願いいたしますー」
「やっぱり美味しそうに食べているのを見ると嬉しくなりますねー。追加でいりますかー?」

ある程度食べ終わったのを見て、ぼくは追加のパンをもってセイさんの方へいく。

「じゃあ追加でお願いし」
と言ったところでセイさんがその場から消えた。
どうやら額縁の中に戻ったようだ。

「…消えちゃいましたか。ぼくのお願いがあんなことだと知ったら…セイさんはどう思うのでしょうか。…それでもぼくは、やるしかないから。」

そう、ぼくの願いの為…セイさんには一度…。

「ドールと同じ…だといいんですけどね。死んでも復元できますしー…」

そういって軽く片付けた後キッチンを去る。

その覚悟が実行に移されるまで…まだ遠い。

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