クラス対抗PGP 種目:ドッジボール?(ヒマノの場合)

クラス対抗PGP。
9月から10月にかけてガーデンで開催されているイベントだ。
これはその中の種目、ドッジボールに関する記録。

「...ドッジボールなのにボール以外を投げていいとはこれ如何に。」

ガーデンからの通知を見てぼくは思った。
これ、無数の投擲物を飛ばす練習になるのではないかと。
しかし、そんな飛ばせるようなものなんてあったかなあ。
…そういえば。最近サングリアルからたくさん出てきたものがあったような。
サイリウム…っていうんでしたっけ。光る棒。
あれなら飛ばすのにちょうどいいサイズだし、箱に詰めて浮遊魔法で射出するのも楽しいかもしれない。
そうと決まれば…

「シャロンさんー、ちょっとお願いしたいことがあるんですけどー。」

-グラウンド-

ぼくはグラウンドに立っていた。
対峙するのは、募集をかけて来てくださった別クラスの方々。
アザミさん、アキツミさんにフユツミさん。
カガリさん、ドロシーさん、ヤクノジさんになたりしあさん。
リツさん、ラズールさんにロベルトさんと…新しい方。確かニチカさんだったかな?

…ロベルトさん?あれ?どうしてそこに?

ぼくはマキシウムを一気に飲み干し、箱を一つ構えてせんせーからの合図を待つ。

「みなさまー、よろしくお願いいたしますー」

…一瞬の静寂。
状況は、せんせーの『競技開始です。』の合図とともに動く。

「さあ、はじめましょうかー!」

ぼくは箱の上面の空いている部分からサイリウムに触れ、浮遊魔法を発動する。
自分のイメージできる限りの出力最大で。

魔法のかけられた棒はすごい勢いでまっすぐに射出される!
それを間髪入れずに射出。ついでに投げる瞬間に変装魔法でボールに変えて投げるのも織り交ぜて。

箱の中身を打ち尽くしたらその次の箱。
そんな感じで楽しく射出している間、各々のドールの反応は様々だ。

「ひゃぁぁああ!?」
悲鳴を上げながら初撃を見極めて避けるアキツミさん。

「ひゃあああそんなのアリ!?あああああ…!ふぎい」
驚き逃げ惑いながら頑張って避けようとするも当たってしまうドロシーさん。

「んぇぇぇぇえええ!?!?なにこれどうなってるの!?!とっとりあえずキャッチしたrふぎゃッッ!!」
パニックになりながらも飛んできたボールを取ろうとして変装させたサイリウムに当たってしまうなたりしあさん。

「ヒマノさんが箱から手を離したタイミングで……なたりしあさん?!」
そしてそれを見ちゃうアキツミさんに…
「ふはっ、やると思った!!!」
何かやらかすだろうと思っていたのか大爆笑しながらもきっちり避けるフユツミさん。

「カガリさん、リツさん、ロベルトさん、危な――ッ!!?」
3人をかばおうと走りだそうとして足をもつらせてそのまま転んで当たるニチカさん。

…あ、カガリさんが避けるついでに踏んでる。大丈夫かな…

ちょっと心配しているとカガリさんから叫びが聞こえる。
「ちょっと!!これライブ盛り上げるやつじゃん!!ふざけんなー!!!!」

…あ、投げ返してきてる。
サイリウムで弾いて…えい。
そのまま持っているサイリウムをカガリさんへ向けて浮遊魔法で勢いをつけて射出。
避ける余裕がなかったのか、勢いよくあたって吹き飛んだ。

あとは…。

「っとと……危ない!」
自分に向かうものは避け続けていたヤクノジさんが一般生徒ドールに向かったサイリウムへ身を挺してかばう姿が見える。
…あー。一般生徒ドールのこと何にも考えてなかった。
本当にごめんなさい、ヤクノジさん。

視線をロベルトさんに向けると、呟きが聞こえた気がした。
「これ、私いりました…?」
…一瞬念話魔法に切り替え、声を飛ばしておく。
「…ロベルトさんなんでそっちにいるんですー?」
…あ、返事が返ってきた。
「なんか、成り行きで……」
…うん。成り行きなら仕方ないか。
しっかり避けている辺りさすがというべきか。

「数だけ多くても……おぁああぁ!」
リツさんもしっかり避けている様子。
ただまあ…避けるのに必死な感じがしますねー。
それでもこの弾幕を避けられているのが凄いというべきか。

「えぇ…?なんでこんなことに…」
ラズールさんも困惑しながら隅の方で全部避けている…?
ちょっと集中して飛ばしてみる。
あ、それでも全部回避できているみたい。すっごいなあ…。

アザミさんもさすがというべきか、ぼくの攻撃の軌道を全部読んでいるのか、全く当たる気配がない。

…うん、たのしー。
そのまま射出を続けていると、箱の中身がなくなった。
なので、箱をボールに変化させて投げつけて、次の箱を持つ。
さあ、おかわりだー。

…2箱目の半分くらいでアキツミさんとフユツミさんの動きがシンクロしてぶつかる。
さすがククツミさんズというべきか…隙を見逃さず射出してアウトをとる。

その後もアウトになったドールはフィールドから去り、残っているドールは避け続け…。
…用意していたサイリウムをある程度撃ち尽くした頃。
立っていたのは…リツさん、アザミさん、ラズールさん、ロベルトさん。

すごいな、あの弾幕を避けきったんですねー。
…満足したし、このくらいでいいかな。
そう思ったぼくは使われず転がっていたボールを手にして相手の陣に放り投げる。

「あ、アザミさんー。パース」

困惑しながらもアザミさんはそれを見事にキャッチ。

「随分と楽しませていただきましたのでー。当てちゃってくださいー。」

「……あなたアレがやりたかっただけですよね?」
心の底から不満そうな表情を浮かべている。

アザミさんは適当にボールをぼくに向かって放り投げて。

そうしてぼくの思い付きは、グラウンドに散乱するたくさんの棒と、ボールに当たった感覚で無事?終了した。
…後片付けはしておこう。さすがにこのままにするわけにはいかないのでね。

その後誰かが呟いた言葉が空気に溶けていった。

「…ドッジボールって、こんなんだったっけ」

…多分違うと思う。

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