ヒマノの眠れない一日(黄の魔法の練習編)【#ガーデン・ドール】

これはマキシウムを飲んで眠れなくなった夜のお話
魔力が尽きないこの機会に練習をすることにしたぼくは
いつもの海へと向かう。
そんないつもの延長線上のこと。

ここは海。
ぼくが魔法の練習をするときによく立ち寄る場所。
視界の先は水で満たされており、先が見えない。

…そもそも夜だからよく見えない。

「たしか、こういう時はー、この魔法がいいんでしたっけ。」

少し前に使えるようになったイエロークラスの魔法に『発光魔法』というものがある。
効果は単純。体の部位を光らせるというもの。
今回は、手を光らせてみるとしようか。

「…我が右手に光あれ。世界を騙す力を。」

初回はイメージを固める為に目を閉じて言葉に出して念じる。

閉じた視界が少し明るくなる。

目を開けると…手を中心に周りの景色が見えてきた。

「おー、これは便利ですねえ。落ちてるものを探すときとか。」

さて、次だ。次は『反射魔法』…だったっけ。

確か、物体に鏡の性質を与える魔法。

ぼくは持ってきていたクーラーボックスの側面に手を触れ、目を閉じる。

「…我が手に触れるは即席の鏡。世界を騙し、光を反射せよ」

目を開け、クーラーボックスを確認する。

ぼくの顔が映る。成功のようだ。

「うん、これも結構便利ですねー。たまーに小麦粉が角についていることがありますしー」

ノートにかければいつでも自分の姿をチェックできる。なかなかよさそう。

「では次ー。…透視魔法でしたっけ」

『透視魔法』。

筒を繋げた壁の向こうが見える魔法とのこと。

ぼくは反射魔法を解いて自分に獣化魔術をかけ、プレシオサウルスに変化し、海に飛び込む。

…近くにいる魚をぱっと捕まえて...獣化を解いて手に掴む。

その魚に放散魔術…物体から熱を奪う魔術をかけ、凍らせる。

魚が動かなくなったことを確認すると、クーラーボックスに放り込み蓋を閉める。

そしてカバンから紙を一枚取り出し、筒状に丸めてから…クーラーボックスにあて、唱える。

「これは壁の向こうを見通す物。世界を騙し、その先を映せ。」

筒から覗き込む。

ちゃんと凍った魚が見える。
…これはあまり使い道はないけど、箱の中を取り出さずに確認できる、くらい?

…最後。
『幻視魔法』。

自分の幻を発生させる魔法らしい。
どうやら同じ動きをするんだとか。
どんな感じなんだろう。やってみたらわかるか。

「…そこにあるのはぼくの影。世界を騙し、虚像を生み出せ。」

目を開ける。右を向く。そこには右を向いた自分の姿があった。
手を顔に当てる。影も同じ動きをする。

…もう一つ左側に増やしてみる。

増えた。

あー。これは面白い。出せる範囲は結構狭そうだけど、魔力があればいくらでも出せそうだ。

グリーンクラスの魔法と合わせれば、攪乱がさらに複雑になる。いいかも。

…さて、今回練習するべき魔法はこれくらいですか。

寮に戻るとしましょうか。
まだ眠れはしないけれど、帰りながらいくつか練習しておこう。

いつか使うときが来た時に迷わぬように。


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