ヒマノの眠れない一日(マギアビースト編)【#ガーデン・ドール】
9月某日。
ワンズの森にてマギアビーストが出現した。
マギアビースト自体は特定のエリアを封鎖するもので、早めに倒しておかねば動きに支障が出るものだ。
…ただ、ぼくとしては願ってもないことであった。
電子魔導書。
バグちゃんから購入したそれは、そのままでは理解することができなかった。
頭に流れ込んだ情報から察するに…理解するためにはマギアビーストに対して魔術を使用する必要があるようだ。
渡りに船というやつだと思う。不謹慎かもしれないけれど。
ただ…一つ問題点がある。
魔法を使うためには当然魔力が必要で。
出撃する場合はバッジにより回数制限が課せられる。
大体3回も使えば魔力は切れる、というのが今までの経験上の感覚だ。
今回使う必要のある魔術…獣化魔術に変異魔術はどちらも一度発動してしまえば持続はするが...ぼくは魔力を放つ銃も使用するし、普通に足りない。
なので、目的を達成するために奥の手を使うことにする。
マキシウムという飲み物がある。
それは飲めば一日魔力が尽きなくなる代わりに、眠れなくなる。
…控えめに言って劇物では?
試したことはあるけれどそれは仮想での話。
実際に飲んだことはない。
少し躊躇いつつも、今回の目的には必要なことなので、一気に飲み干す。
…魔力が満ち溢れる感覚がある。
これならなんでもできそうだ。
…いきましょうか。
ぼくは戦闘の準備をして魔機構獣対策本部へと向かった。
本部につくと既に出撃待ちのドールたちがいた。
シャロンさん・ロベルトさん・イヌイさんだ。
マギアビースト討伐には初回は4人で行く必要があるのでちょうどよかった。
一言二言話をして本部でバッジと武器を借り、ぼくたちはワンズの森へ。
少し歩き森へ到着し、その異形を見上げる。
…クラゲのような姿をした異形…マギアビーストと対峙する。
そのマギアビーストはどうやら致命傷に対しての、自動回避システムがあるかのようだった。
シャロンさんの気合の入った一撃も、効いている様子がない。
ぼくは他のドールが動いたのを見て獣化魔術を使用する。
鷲の頭に獅子の体を持つ大きな獣、グリフォンへ変化したぼくは勢いのままにマギアビーストへ突撃する。
その一撃は…水に攻撃しているかのように揺らぐだけで、効いている様子がない。
…この姿では加減が効かない。
そう思ってぼくは獣化を解き、変異魔術を使用する。
腕をクラゲの触手に変異させ、その触腕で銃を構え、放つ。
…今度は命中した。
触手に当たるところに命中したことから察するに、急所を避けるといったところかな?
あと一個、試してみましょうかー。
ぼくは変異を解き、手から氷の柱を生み出し、投げつける。
樹氷魔術と呼ばれるものだ。
その柱は放物線を描きマギアビーストに直撃…する前に何かに弾かれたようにこちらに向かってきた。
…反射ぁ!???
えっと、つまり。
このマギアビーストは、強い攻撃に反応して液状化し、魔法は反射する...ということ!???
あれ、これぼく相性悪くない?
そのまま氷の柱はぼくに突き刺さり、強制帰還バッジが発動した。
…うん、データは取れたけど釈然としない。
その後のぼくは、寮に戻った後そこにいたドールと一言二言話をして、眠れなかったので
魔力が満ち溢れているこの体をうまく有効活用しようと海へと向かうのだが…それはまた別のお話。
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