【音声配信】ライブ配信のよさ、非ライブ配信のよさ。
こんにちは。himalaya公式note編集部の佐藤です。
個人のメディア化がどんどん進んでいて、音声にも「音声配信」という形で、その波が来つつあります。そして、最近の音声配信のトレンドの1つになってきているのが「音声のライブ配信」です。
残念ながら私たちの日本版「himalaya」はまだライブ配信機能を実装しておりません(要望は多くいただいており、検討を進めております…!)が、国内では「stand.fm」「radiotalk」「spoon」などのプラットフォームがすでに音声のライブ配信機能を提供しています。※2020年11月時点
今回のnoteでは、そんな音声のライブ配信について、お話をしてきます。
そもそも音声配信は、“ライブ”からはじまった。
ラジオ放送以外の音声配信には、古くはアマチュア無線(免許必要)やミニFMという方法があり、これらは基本的にすべてライブでした。それが、iPodやiTunesの普及によって00年代半ば以降にポッドキャストという新しい手段が登場し、音声配信はかなり身近になりました。
ただ身近とは言っても、それはアマチュア無線やミニFMと比較しての話であり、大衆化にはまだまだ高いハードルがあったように思います。
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一方で、ポッドキャストの登場で音声配信に大きな変化が起きています。それは、ラジオ以外でも「非ライブ配信」が一般的になったことです。
リアルタイムで電波を送信しなければいけないアマチュア無線やミニFMと違い、ポッドキャストは音源をインターネットのサーバ上にアップロードすることでアーカイブ化します。リスナーはそれをダウンロードして聴くことになるので「非ライブ」の配信となります。
同じ頃、ストリーミングによるインターネットラジオ配信のサービスなども出てくるわけですが、SNSがない時代に集客するのは容易ではなく、結果として「非ライブ配信」のほうが主流になっていきました。
音声“冬の時代”から、再び脚光。
しかしながら、特に日本ではポッドキャストの“下積み時代”は長く、配信も聴取も一部のラジオ好きのモノという、「マニア向け」的な印象が強かったように思います。その大きな要因には、デバイスを含めた環境が追いついていなかったこともあるかもしれません(デバイスの話はまたあらためて……)。
そうこうしているうちにYouTubeが登場し、動画配信も徐々に一般化していきました。一方のポッドキャストは長い間、無くなりこそしないものの流行りもしないという状態が続きます……(泣)。
とはいえ、スマホ(&スマートスピーカー)の普及にあわせて、少しずつ音声配信も勢力を強めてはいました。中国では2013年にhimalayaの母体である「喜马拉雅(シマラヤ)FM」が登場し、その後爆発的な広がりを見せていきます。
そして、ライブへの回帰(?)。
日本でも、himalayaはじめ、この2~3年で多くの音声配信プラットフォームができ、ポッドキャストもスマホ1つで配信できるようになり、10年前、20年前とは比較にならないほど音声配信は身近になりました。
そして、音声配信のさらなる楽しみ方として「ライブ配信」があらためて登場してきました。「ライブ」「非ライブ」という分け方だけで考えるなら、アマチュア無線時代に回帰してきた(?)とも言えなくもないわけです。
盛り上がりを見せる「ライブ配信」、何がいいの?
さてそんな音声のライブ配信ですが、現在、実際にライブ配信を行っているユーザーの意見をSNSで見てみると、好意的な意見が非常に多いようです。では、音声のライブ配信は何がいいのでしょうか。大きくわけると、3つの点が考えられそうです。
1.リスナーとリアルタイムでコミュニケーションできる
配信者とリスナーが同じ時間を共有すること、それ自体がライブ配信の最大の価値と言っても過言ではありません。
ただ、「時間の共有」の先――「相互コミュニケーション」の手段は技術の進歩とともに変わってきています。アマチュア無線でコミュニケーションするには、双方での「交信」か、直接会いに行く(うーむ…)などの方法がありますが、容易ではありませんし、ミニFMの場合は交信もできません。
ラジオでは、ハガキやEメールを番組に送ることでパーソナリティとコミュニケーションが可能です。特にEメールやTwitterなどの登場でリアルタイム性が向上しました。
そして今のライブ配信では、チャット機能により、ほとんどタイムラグのない同期コミュニケーションが可能になりました。まさにパーソナリティと同じ時間&(仮想の)空間を共有している感覚を味わえ、より近い距離感でコミュニケーションができます。
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ライブ配信に参加してきたユーザーをパーソナリティ自身が把握できるので、「来てくれてありがとう」といったコミュニケーションが生まれます。また、その場で質問やリアクションもできるので、「聴取者」ではなく、文字通り「参加者」として配信を楽しめるわけです。
2.自分自身がコンテンツになる
ライブ配信におけるコンテンツは、知識やノウハウなどの「情報」である必要性が「非ライブ」よりも小さく、配信者自身が特別な情報も提供せずとも、ライブ配信を成立させることが可能です。
これは、「自分自身がコンテンツである」という側面が強いとも言えるでしょう。もちろん有益な情報があるに越したことはないですが、配信者と音声でコミュニケーションすること自体に価値があるので、そこに情報がなくても問題はありません。
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このことは、配信のハードル、あるいは配信を継続するハードルを下げることにつながります。毎回有益な情報を準備する必要がなく、そのままの自分で配信すればよいので、始めやすく続けやすい(また、生のコミュニケーションができることもモチベーションになります)というわけです。
3.比較的マネタイズしやすい
一般的にコンテンツで収益化を図るには知識やノウハウなどの情報が必要なことが多いのが現状です。いわば、情報を提供する代わりにお金を得る「コンテンツ販売」のモデルです。
本やCDはその代表ですし、ほかにも有料メルマガや、音声で言えばオーディオブックなども同様です。クローズドの情報を提供する、という意味では多くのオンラインサロンもコンテンツ販売モデルの1つと言えるかもしれません。
一方、ライブ配信では、上項目でも述べたように必ずしもこうしたコンテンツを提供する必要がありません。アイドルなどのケースを例に考えると想像しやすいかと思いますが、ユーザーが買うのは「有益なコンテンツ」ではなく、「配信者とのコミュニケーション」そのものです。
名前を呼びかけてもらったり「ありがとう」と言ってもらうためにユーザーは投げ銭(ギフティング)をし、配信者はその対価として少し特別なコミュニケーションを提供する。情報を持っていない人でも比較的マネタイズがしやすいのはメリットと言えるでしょう(ただし、多くのお金を集めるにはそれなりの努力や研究が必要であることは言うまでもありません)。
ライブ配信にはデメリットもある?
最近盛り上がっているライブ配信には多くのメリットがあることが分かりました。一方でデメリットはないのでしょうか?……もちろん、デメリットもあります。
1.決まった時間に集客する必要がある
ライブ配信の醍醐味はリアルタイムでコミュニケーションができることだと述べましたが、ここで大きなハードルになるのが「集客」です。ライブ配信を多くの人に声を届けるには、配信時間にそこに来てもらう必要があります。配信者に十分な集客力がない場合、せっかくライブ配信を始めたのに人が全然集まらない、ということも当然ながら起こりえます。
2.アーカイブされない(あるいは、しにくい)
音声ライブ配信の一番の楽しみ方はリアルタイムで聴くことです。最近はライブ配信の音源をアーカイブすることもできるようになってきていますが、実際問題、リスナー自身が「蚊帳の外」になっている過去のライブ配信音源は、聴いてもイマイチおもしろみに欠けるものです。
そのこともあり、あえてアーカイブをしない(ライブだけの楽しみにする)配信者もいることも確かです。また、アーカイブした音源では「コミュニケーション」という見返りが得られないため、投げ銭による収益を見込みにくいという面もあります。
3.知識のシェア/アウトプットにはあまり向かない?
ライブ配信はコミュニケーションに重きを置くことが多く、必ずしも情報を提供する必要がない、と述べました。これは、逆に情報をコンテンツとして提供したい人側から考えると、「情報コンテンツの発信は、ライブ配信でなくてもよい」と言うこともできます。
むしろ、情報コンテンツはライブ配信の「消えモノ」にするよりも、何度も聴くことができたり、空いている時間に楽しめたりできるアーカイブ型配信のほうが適しています。また、アーカイブのほうが聴取環境に左右されにくくなるため、より多くの人にコンテンツを届けられる可能性が高まります。
4.編集ができない
ライブ配信では編集はできませんから、例えば、「うっかり発してしまった失言」を取り消すことはできません。そのことを念頭に置いて話す必要があり、扱う話題によっては、事前に収録して配信するコンテンツよりもやや慎重に言葉を使う必要があります。
また、音やBGMなどで作り込んだ番組を配信する難易度は上がります。トーク番組などでもカッコよく演出を作り込みたい場合などはアーカイブ型配信のほうがよいかもしれません。
非ライブ配信だから、いいこともある。
2020年は、音声のライブ配信が広がり始めた「ライブ配信元年」ともいえる年になりました。気軽に始められ、マネタイズの可能性も開けるライブ配信は、ラジオに馴染みの薄い層にも少しずつ広がりを見せています。
ただ、音声の楽しみ方が増えた一方で「ライブ配信は万能ではない」ということも付け加えておく必要があるでしょう。
例えば、オーディオブックは朗読コンテンツ、ドラマコンテンツなどの作り込み系コンテンツをライブ配信で行うのは無理がありますし、トーク番組でもデリケートな話題を扱う場合は収録にしたほうが“炎上”のリスクを抑えることができます。
また、知識やノウハウを伝えるコンテンツは、ライブ配信である必要はなく、むしろアーカイブされていったほうがコンテンツ資産としても有効に作用します。
つまり、ライブ配信と非ライブ配信は、それぞれに得手・不得手があります。伝えたいことや、音声配信の目的に応じて使い分けていくことが今後はとくに求められていくでしょう。
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