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ヤマメの生態


【渓流の女王】 

  ヤマメは、渓流に棲むサケ科の魚です。別名「渓流の女王」と言われ、美しい流線形の魚体をしています。その最大の特徴は、パーマークと呼ばれる小判型の模様です。ヤマメの鱗は、細かく薄いので、直接手で触ると人体との体温差によって火傷すると言われています。コイ科の魚との一番の違いは、脂ビレがあることです。またコイ科の魚に比べて、体のわりに大きな口をしています。近い種類のアマゴとの違いは、赤い点がないことです。 

 【性質】 

  ヤマメの平均寿命は、約2~3年です。性成熟するのに、オス・メスともに約2年くらいかかります。同じ渓流魚のイワナと比べると成長が早い魚です。1年で10cm位づつ増え、最大で約30cmくらいに成長します。ヤマメが、30cmくらいになることは、自然界では珍しいことです。そのため「尺ヤマメ」と呼ばれ、重宝されます。イワナと比べると、成長は早いですが、寿命は短い魚です。

 ヤマメは、主に中層や早い流れを好みます。泳ぎ回っているのは、たいてい早瀬などの流れのある所です。ヤマメには、早い流れの中でも泳げる遊泳力があります。相当早い流れでも泳ぐことが可能です。これに対してイワナは、流れの緩い所や、川底を好みます。ヤマメは、イワナと比べると、動きが機敏な魚です。また性格もイワナより神経質で、警戒心が強いとされます。

 【生息場所】 

  ヤマメに適した水温は、13℃~18℃です。そのため真夏の水温が18℃以下の河川でなければ生息できません。標高が300m付近から、1000mの渓流地帯がヤマメの生息域です。渓流の「渓」とは、谷のことであり、山地の谷にある流れのことを渓流と呼んでいます。ヤマメが棲める川は、休息する淵と、餌をとる瀬が連続していることが条件です。 

 【産卵期】  

 ヤマメの産卵期は、紅葉が始まる9月下旬~11月頃です。この時期、最上流の瀬にて産卵します。産卵期間は、各河川の禁漁期間になっている場合が多いので、そういう場所では釣りは出来ません。ヤマメは、秋の冷たい雨による増水に触発され、産卵のため支流に遡上します。この時、本流とは異なる水温や臭いで判断して遡上しているようです。ヤマメの産卵回数は、生涯で1~2回とされています。その卵の生存率は、1~2%くらいです。メスは、産卵後その多くが死にます。産卵のために体力を消耗するからです。オスの場合は、産卵期にサビと呼ばれる婚姻色が出ます。婚姻色とは、産卵期のオスの魚によく出るものです。 

 【捕食】 

  ヤマメは、自然に流れてくる餌に注目しています。流れて来る餌や、上から落ちて来た餌を素早く捕食するためです。流れてくる餌を持っている時は、顔を上流に向けています。下流に顔を向ける時は、餌を追う時です。ヤマメは、流れの緩やかな所から、早瀬に移動して、餌を捕食します。イワナよりも、捕食レンジが広く、かなり離れた場所からでもチェイスすることが可能です。ヤマメの捕食方法は「追跡反転型」と呼ばれ、餌をくわえてから反転します。どちらかと言えば、食べるというより、吸い込む感じです。この時、水と一緒に餌を吸い込み、水だけエラから出します。ヤマメは、針を口に含んで吐き出すまでのスピードが、淡水魚で最速です。そのため釣りでは、その前にアワセる必要があります。ヤマメが早アワセなのは、そのためです。 

 【定位】 

  ヤマメは、捕食のため「定位」をしています。定位とは、川の流れの中で、だいたい自分の居場所を決め、いつも同じような位置で餌を待ち伏せることです。ヤマメは、基本的には流れの中にいます。それを可能にしているのが、早い流れの中でも泳ぐことが出来る遊泳力です。ヤマメは、流下してくる餌を待ち構えていて、それに素早く食いつきます。ポイントさえつかめれば、高確率でヤマメが釣れるのはそのためです。また優位な個体順に、餌が食べやすい場所に陣取っています。  

 【縄張り】 

  大型のヤマメは、縄張りを持つと言われています。その方が、餌をとりやすいからです。縄張りに他のヤマメなどが侵入してきた場合、追い払われます。自然界で生き残るのは難しく、長く生存できるわけではありません。縄張りの主が死んだ場合、別のヤマメが新たな主となります。同じ縄張りで、イワナとヤマメが混生している場合、サイズが同じくらいなら、優位に立つのはヤマメの方です。 

 【ライズ】  

 ヤマメは、流れて来た餌だけでなく、水面にいる虫なども捕食します。水面に虫がいるのは、羽化する時間帯である「夕マズメ」です。この時、ヤマメは、水面の虫めがけて、飛び出しながら捕食します。この勢い余って、水面から飛び出すことが「ライズ」です。水面の虫を捕食した時に「ボイル」と呼ばれる波紋が出来ます。ヤマメの意識が、水面に向いている時は、小魚を模したルアーには、あまり反応しません。

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