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アリの「社会性」

【アリ】
 アリのバイオマス総量は、1200万トンに達し、体の大きな哺乳類の700万トンを上回っています。バイオマス総量とは、特定の時点、その空間における生物の量のことです。通常、それは「質量」や「エネルギー量」として数値化されます。体の小さなアリの数値が高いのは、それだけ数が多いということです。
 アリは、雑食性ですが、基本的には肉食で、主に虫やミミズなどを食べています。大顎が発達しており、噛む力が強い昆虫です。また、力も強く、自分の体重の40倍のものを持ち上げることが出来ます。アリは、ハチの仲間です。そのため、腹部に毒針を持つ種類もいます。また、種類によっては、蟻酸という毒液を直接相手にかけることが可能です。その毒に触れると、皮膚に水疱が出来きます。

【社会】
 働きアリは、交互に入れ替わっています。アリの社会の構成は、働きアリが全体の2割、普通のアリが6割、特に働かないが2割です。この2対6対2の割合は、自然に分かれていきます。こういう分け方が、群れ全体を安定、効率的に維持することが出来るからです。アリには、エサを分け合うなど、利他的行動が見られます。お互いに協力し合い、それぞれに役割分担がある「社会性昆虫」です。一方で、取り締まりが厳しい「監視社会」でもあります。アリの脳は小さく、単体で、複雑な情報処理が出来るわけではありません。しかし、集団になると、連携し、非常に高度な社会システムを実現しています。それを可能にしているのが、分業による流れ作業です。
 分業によって、様々な仕事を効率的に行うことが出来ます。例えば、危険な外でエサを探しているのは、寿命が近い老齢のアリです。若い個体は、安全な巣の中で、子育てやエサの管理などを担当しています。その方が、群れ全体のリスクが低くなるからです。アリの社会性は、群れのアリ同士だけではありません。別の種類の生き物であるアブラムシとは、共生関係にあります。アブラムシは、アリに天敵から守ってもらう代わりに、お尻から、アリの好物の蜜を出すからです。

【フェロモン】
 地面を見ると、餌を運ぶアリの行列をよく見かけます。一糸乱れず、一列に行列を作ることが出来るのは、先行するアリが、通り道にフェロモンを残しているからです。それを「道標フェロモン」と言います。フェロモンは、揮発性の高い物質です。ただし、餌を見つけたアリは、濃いフェロモンを出します。そのため、そのフェロモンは、なかなか消えません。後から来たアリは、それを辿るため、餌の所に行くことが出来ます。フェロモンは、情報を交換、共有するための化学物質です。それは、仲間と会話する時の、言葉のような役割があります。フェロモンは、生物が体外に放出し、効果を発揮するものです。それは、同じ仲間の「行動」「発育」「分化」などの生物学的変化をおこす誘引物質となります。

【女王アリ】
 女王アリは、たんに一匹で生殖の役割を担っている者であり、群れの司令塔ではありません。たいていの種類のアリは、女王が死んだ時、巣もまた滅びます。しかし、すぐに滅びるわけではありません。女王がいなくても、しばらくは、個々の働きアリの判断で、自分の作業を続けます。働きアリは、一匹の女王アリから産まれた娘たちです。そのため、働きアリにも、もともと繁殖能力はありましたが、女王からのフェロモンによって、不妊の状態にされています。
 幼虫の時は、女王になれるか働きアリになるかは、まだ決まっていません。女王になれるのは、1番大きな幼虫です。それは、幼虫の時のエサの量によって決まります。新女王が育てられるのは、巣のアリがある程度に増え、余裕が出来た時です。繁殖期に、巣で産まれる「新女王」と「オスアリ」は、共に羽アリで、どちらも巣からは飛び去ってしまいます。そのため、巣の役には立ちません。巣から飛び立つので「結婚飛行」と呼ばれています。日本のアリだと、結婚飛行は、4〜5月頃です。新女王は、交尾した他の巣の雄アリから得た精子を、貯精嚢という所に一生分貯蔵することが出来ます。


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