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ツキノワグマの生態

【森との関係】 
 ツキノワグマは、森林に棲む生き物です。森とツキノワグマは、相互に依存し合う関係にありました。ツキノワグマは、きわめて、森の状態に影響を受けやすい生き物です。逆に、ツキノワグマの方でも、森に影響を与えています。例えば、食べ物を探す時、地面を掘り起こすことが、土壌を豊かにしているからです。また、糞をすることで、木の実が散布され、それが森づくりの役割を果たしています。
 ツキノワグマは、昆虫も食べる雑食性の動物です。昆虫類を食べることが、虫の大発生を防ぐ役割を果たしているとされています。ツキノワグマが、昆虫をよく食べるのは夏です。食べ物は、季節ごとに異なります。季節に合わせ、森の四季折々のものを食べているからです。

 【行動圏】 
 ツキノワグマは、群れを作らず単独生活を営みます。基本的には、自分の縄張りというものを持ちません。ただし、自分の行動圏にこだわって生きています。行動圏とは、生活のために利用する範囲のことです。特に大きなオスは、自分の行動圏に定着しています。その行動圏は、約40平方キロです。基本的に、そこから出ることはありません。この行動圏は、他の哺乳類に比べたら広い方です。ツキノワグマ同士が競合しないように、一定のエリアに生息できる頭数は限られています。そのため、ツキノワグマの生息数は、あまり多くありません。 例えば、広大な面積の秋田でも、4000頭程度です。

 【人間との関係】
 ツキノワグマは 、基本的に臆病な動物です。そのため、相手が大きいと怖がります。ツキノワグマと人間は、同じくらいの大きさです。危険かもしれない人間に、わざわざ自分から、向かって来ることは、ほとんどありません。人間を見たら、だいたい逃げ出します。もともと人間を食べ物だと思っておらず、積極的には人を襲いません。ただし、身に危険を感じれば攻撃してきます。その攻撃は、あくまで防御のためです。
 ツキノワグマは、どこかに隠れていることを好みます。そのため、潜むのは、だいたい暗いところやヤブの中です。人間が襲われるのは、たいてい隠れているツキノワグマとバッタリ遭遇した時だと言われています。驚いたツキノワグマが、防御のために攻撃して来るからです。そのため、見通しが良い場所では、あまり襲われません。 

 【食性】
 ツキノワグマは、大食漢です。単一食で、同じものを大量に食べます。その食べ物の90%は、植物性のものです。ツキノワグマは、積極的に獲物を襲って食べるようなことはしません。ただし、もともと歯の構造や消化器系は、肉食動物のものです。ツキノワグマも、事故死などをした動物の死体を食べることがあります。熊は、食べ物に対して、きわめて執着心の強い動物です。一度肉の味を覚えれば、その食性が変わります。カモシカなどの肉を食ったツキノワグマは、気性が荒くなり、生きたカモシカを襲うこともあります。
 問題なのは、人間を食べるかどうかです。確かに、人間の死体を食べたという事例はあります。ツキノワグマの胃の内容物から、人間の肉が発見されたからです。ただし、食べるために、わざわざ人間を襲ったかどうかは分かりません。

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