残酷な果物格差社会
はじめに:果物は完全に格差社会になった。
果物は完全に値段にあった味の食べ物になった。
昭和の頃は、みかんを一箱2000円で買ってくると、色んな味のみかんが入っていた。薄っぺらい味のもあれば、酸っぱくて濃い味のものもあった。ごくごく稀に完璧な甘みと酸味のバランスのみかんがあって、それを当たりみかんだと、それを食べるために毎日みかんを大量に食べていた。完璧な果物というのは、完璧な料理に近い完成度を持つから好きだった。
今はもう、当たりみかんが2000円のみかん1箱に入っていることはありえない。安いみかんの袋には安い味のみかんしか入っておらず、高いみかんの袋には高い味のみかんしか入っていない。
当たりみかんは、だいたいみかん1個が200円とか250円の値段で売られている。
非破壊糖度計という革命
昔は糖度というと、果汁を絞ってそれを糖度計に乗せて計測するもので、だから当たりが完璧には選別出来なかったわけだが、この数年で非破壊糖度計が一気に広がり、果物流通の世界に革命が起きた。
糖度と果物の美味しさはほぼイコールだと言ってもいい。糖度の高いものは美味く、低いものは不味い。それが、センサーをピッと一瞬当てるだけで計測できるようになったらどうなったか。糖度格差社会だ。
糖度13以上の梨は「太鼓判」というブランドになった。これは梨の品種に関わらずつく。幸水の太鼓判、豊水の太鼓判、南水の太鼓判。これらはすべて糖度13以上という全頭検査済みブランド梨だ。
太鼓判ブランドの梨はだいたい非太鼓判ブランドの2~3倍の値段がついている。太鼓判ブランドは高級果物に属するので、普通のスーパーではめったに売っていないだろう。今、スーパーでノーブランドの梨を買ってもそこに糖度13以上の梨は含まれていない。選別済みだからだ。
糖度が裏付けるブランド化
同じ糖度13以上の梨でもさらに格差が生まれている。糖度16以上は最高級品として、梨1玉で1000円の値がついたりする。ノーブランド梨の5倍くらいだろうか。
シャインマスカットも、糖度がだいたい13~15が一般品、16~18が高級品、19以上は最高級品という感じだ。シャインマスカットが好きなので食べ比べてみたことがあるが、一般品は高級品と比べると食べるに値しないというくらい不味い。最高級品は天上の調べというほどの美味さだ。
なんと残酷なことだろう。君たちがシャインマスカットだと思って食べている、その1000円のシャインマスカットは出来損ないだ。3000円のシャインマスカットこそ食べる価値のある選別されたシャインマスカットだ。
果物は糖度計という技術革命で一気にひどいことになったが、別にこれは全てにおいてそうだ。俺は色々食ってきたが、ほぼすべての食物において、高級品に慣れると一般品などは不味いとしか言いようがない。それはマツタケやフグといった、高級食材と言われる食べ物でもそうだ。
どうせこれを理解しているのは、食費に月に数十万使える一部の人間の、さらに舌がまともな一部の人間だけだ。
美食という趣味は最も残酷だとつくづく思う。この記事も残酷な事実を伝えることにしかならない。
2.5kgあたり、一般品は1650円、高級品は2980円、そして最高級品は4500円。一般品を1万個食べても、最高級品に勝てるりんごは1個も無い。これが果物格差社会だ。
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