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≪行ってみたい≫の店に行く話【ピエレッテ】

経緯

野々市市に住み始めて4年。先日卒論に合格したことで学部4年間の大学生活も終わりを告げ、無事卒業できることが決まった。それに伴い、来年度からは既に決まっていた就職先の方へと引っ越すことになるのだが、そこは遥か400㎞離れた土地である。それなのに、私のGoogleMapには≪行ってみたい≫のマークが残った店が沢山残っている。残り少ない時間でそれらを巡ろうと思った。

ピエレッテ

本日伺ったのは、街灯も多くない住宅街の隙間にたたずむ、カジュアルレストラン、和の薫りがある洋食屋【ピエレッテ】
口コミの評判が非常によく、自分の中でいつかいこうの筆頭になっている店だった。ランチメニューもあるようだったが、これを思い立ったのが夕方だったので今回はディナーで伺った。

探せば目立つが無意識だと気づかないタイプ

店の意匠は現代風ではなく、いかにも「洋食レストラン」らしい風貌であった。店内はいくつかのカウンター席と、左右に3人座れる丸机が並ぶ、広すぎず狭すぎない、丁度良いサイズ感だと感じる。
自分の前には客が1組おり、派手ではないが瀟洒な客と店構えに、そぐわないと感じて恥ずかしく思っていた。しかし改めて考えると、何か粗相を犯したところで、一か月後には日本の反対側なため、怯える必要は何もない。それに、社会人になるのならこういった店に一人で入れるメンタルは培っておくべきだろう。店主を呼ぶ声が小さくならないように気を付けながら、通された奥の席へと座った。

エモーショナル

メニュー表は1冊を使いまわしているようで、文明の利器は何一つとして存在しない。事前の口コミではハンバーグやオムライスといったわかりやすい洋食が主だったため、それらを期待してメニュー表を開く。
1ページ目は常設メニュー。定番のハンバーグ、オムライス、スパゲッティなどがさまざまな種類と共に並んでいる。ほとんどが700円から900円のお手頃価格で頼みやすい。しかし、中には「海の幸ピエレッテ風」「ハンバーグフォレスティ」といった名前だけでは想像もつかないものもある。普段ならそういったものを頼むことを良しとする私だが、この店は違った。

エモを感じる

改めて考えるとわざわざ写真を撮るほど珍しいものでもない気がするが、これを見た時はそこそこに大きな衝撃を受けた。現代ではタブレットにすべての料理の写真が載っており、簡単に見た目から味やサイズを想像することができるが、それとは違う。背景にワインを添えたり、テーブルクロスの色を変えたり、美味しく見えるような趣向が様々こらされている。現代の人間である私は、具体性の無い雰囲気にエモーショナルを感じたので、いつまでも残していってほしいと思う。
ちなみに写真の所為かわからないが、メニュー表のページがめっちゃ分厚かった。

日本人の性

「ハンバーグフォレスティ」にそこはかとない興味を惹かれながらページを捲ると、そこには「本日のディナー」の文字。Japaneseという人種が、限定品に強く惹かれてしまうことは周知のとおりだろう。そうでなければ大手コーヒーチェーンやドーナッツチェーンが月ごとに途切れることなく限定品を作る理由がない。私もその例に漏れず限定品が大好きで、二度とこない場所にある店だろうと、限定と書いてあれば注文したくなってしまう性である。
そこには2種類のオムライスともう一つ、非常に興味をそそられるメニューが存在した。
それは、「ハンバーグカツ」。人間、大人になっても中身はそう変わらない。ガキの心を社会性と常識というトンカチで凹ませて、無理矢理に一般人という枠に詰め込んだだけである。少なくとも自分はそうだ。だから、カツカレーやハンバーグオムライスのような頭の悪い足し算でできた料理はとても好きなのだ。そこに来てこの、「ハンバーグカツ」一目ぼれだった。脳の片隅では「これただのメンチカツでは?」と考えてもいたが、衝動に抗うことができず、席を立って店主の元まで行き、注文をお願いした。

ハンバーグカツ(ランチとスープはセット)

届いたメニューはこんな感じ。先ほどの写真に「ハンバーグカツ」は乗っておらず、どんな見た目から届くまでわからなかった。
堂々と鎮座するハンバーグカツの周囲には、新鮮そうなサラダに定番のポテトとこちらも定番のパスタ。ハンバーグが揚げられていることを除けば、AIに「洋食屋のハンバーグランチを書いてください」と頼めば書いてくれそうな風貌である。
十分な期待感を持ちながら、まずは一口、ハンバーグカツを頂戴した。

いわゆる箸上げというやつ

これはハンバーグだ」「これは揚げ物だ」と、それぞれの感情が同時に沸いた。確かに、揚げたての衣のサクサクの触感のするひき肉だ。しかし、これはハンバーグであった。メンチカツではない。ハンバーグである。洋食屋で食べるハンバーグの味と言われてイメージが付くだろうか。玉ねぎでかさましされない厚い肉感と、赤ワインの深い薫りが残る風味が残る。ソースは控えめであったが、肉自体の味が物足りなさを感じさせず、非常に美味しかった。

これ以上下手な食レポを続けても味の素晴らしさは伝わらないと思うので、この程度にしておく。量は男子大学生1人の胃袋にはちょうどいい量で、ライス、スープまで食べきったところで良い満腹感だった。そのうえで、この料理、なんとたったの900円である。味、量、値段、どこをとっても満足で、時間があればリピートしたいと思える店だった。

終わりに

もし、何かの拍子にこの記事に辿り着いた方が、【ピエレッテ】に伺える場所にいるなら、ぜひ足を運んでみて欲しい。たとえ失敗だとしても損失は大きくない。思い出した時にでも試してみることをお勧めする。

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