裏切の末路



すべてのはじまりは どこから?





あの存在は許せない。
私から大事なものを奪った。

あの人は
ただ拒めなかっただけ。

私はあの人を知っている。
だから解る。



会社のことを考えたら
要求を拒否して
円滑に事が進まなくなるのは
不利益。

円滑な状況が利益を生み出す。

それぞれが
きちんと役割を果たしてこそ
会社の利益は得られるもの。


あの人と一緒になるまで
私もそこに属していたから解る。


それは理解は出来る。
でもやっぱり許せない。


あの存在の事は
興信所を使って調べた。


仕事上では優秀だったらしい。


でも人としては不適合。


上司と関係を持つなんて
あるまじきこと。


すべてを伝えた時
あの人はひたすら謝ってくれた。


『すまない。油断したんだ。
仕事の相談だと言うから
就業後に時間を作ったのに
何故か酒を提供する場所に
誘いこまれて』

あの人のお酒の強さは
私は知らない。

家では缶ビール一本だけしか
飲まないから。


『仕事の疲れ休めだよ』

そう笑って
私の作るおつまみで夜を過ごす。


そんな穏やかな時間が
大事だったのに。


今ではもう
そんな時間は過ごせない。


あの人は家に帰宅すると
すぐに自室に籠もってしまう。

そして
ばらばらに夜を過ごす。


あの女は
会社を辞めたとは聞いたけど
ただそれだけ。

何の罰も受けずに
どこかで
何食わぬ顔で過ごしているなんて。



『……見つけた』


偶然立ち寄った店で
あの女を見た。


若い男と一緒。

その男の表情を見て
すぐにあの女の事を
特別に思ってると解った


『……』


それに気付いた途端に沸く感情。


『……そう……それなら……』


目の前の硝子に映った
自分の姿。

今までに見たことのない
表情を浮かべていた。

【了】

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