私達はスクープされない恋愛をしているようだった

あなたにキスをした

交差点、車が沢山走ってる
人は少しだけ
ネオンだけが明るい
東京の深夜

私はあなたにキスをした

あなたは どんな気持ちだったんだろう?

あなたが私の耳にキスをする
あなたが私の首の後ろにキスをする

私はあなたを見つめる
あなたは私を見つめる

そして私はあなたにキスをした

一瞬だった

あなたは

でも驚いたような

少し見たことないようなぽーっとしてる
子供のような笑顔をしていた

愛情全てを受け止めてるような
そんな雰囲気だった

それが、凄く嬉しかった

「この街には私達のことなんて誰も知ってる人いないよ」

そうやって私は言う

そうやって言った時から

手が恋人繋ぎされていることも

ハグを何度も何度もさせてくれたことも

少しだけ遠回りして路地裏に入り込んだことも

今この瞬間

私たちは、スクープされない恋愛をしているようだった

私は心底貴方が好きで好きでたまらなかった

数日前まであんなに声を出して泣いていたのに

自転車で坂をおりるときあんなに涙が溢れていたのに

次の日にどうでもいいやと思う気持ちを何度も自分で確認していたのに

少しだけ傷をつけてこの恋は案外あっけなく終わったと思っていたのに

居酒屋で前に座っていた貴方が隣に来た時から

私はあなたを好きな私にいとも簡単に戻ってしまっていた

貴方が私のほっぺたに手を触れてむにむにとする
私もあなたの顔をむにむにとする

お酒の中に入っている大葉をあなたにやってといって潰させる
 
私がそんな風に甘えるのは貴方だけなんだよと思う

貴方が自分の箸の持ち手の方で器用に私の大葉をくるくるとかき混ぜた時

もうとっくに私は貴方から戻れなくなっていた

抱きしめられているときの

あなたの胸の中がとてつもなく好き

Tシャツの上から伝わるあなたの硬い感覚が好き

いつまでもこのままで居たいと思う

いつだって私はあなたに守られたいと思う

いつだって私はこの時間が今しかないことを知っている

知っているからこそ離れたくなかった

いつまでもこのまま夜の中に溶けてしまいたかった

東京のネオンの中に紛れ込んでこの気持ちのまま
 
でいたかった

何も思い出を上乗せしたくなかった

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