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易の八卦をルーツにした東洋占術

今回は占いのスキルだけでなく、東洋の基層文化の根底にある「易の八卦」についてお話しします。占いに関心のない方でも、八卦(はっけ)という言葉は耳にされたと思います。

道教のカリスマ・老子は、「人のからだは小さな宇宙(ミクロコスモス)、宇宙は大きな人体(マクロコスモス)」と、天とひとは一体という思想を、端的なことば遺していますが、その宇宙や世界観のシンボルが、乾(天)・兌(沢)・離(火)・震(雷)・巽(風)・坎(水)・艮(山)・坤(地)の八つのエレメント、「八卦」なのです。

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他の生物と同じように、人にも体内時計が仕組まれていますが、天と地と人のエネルギーを融合させることで、宇宙の循環サイクル(四季・朝昼夜・明暗・寒暖など)と、ひとの生体バイオリズムがシンクロしているのです。

四柱推命や九星気学など、東洋運勢学をひと言で表現すると、宇宙的規模の壮大かつ、精密な循環の思想で、ひとの運気をはかる占術だと言えます。自然の循環のリズム(波長)に、人それぞれの運気の波長を同調させれば、ものごとは順調に運ぶのです。

八卦思想のシンボルが大相撲や囲碁

易の八卦思想が、いまに受け継がれている代表的なものが大相撲です。天を表す乾は円、大地のシンボル坤は四角(方)で表しますが、日本の国技でもある大相撲の土俵は正方形で大地を表し、俵で丸く仕切られたいるのは天を象徴しています。

吊り屋根には、黒、青、赤、白、四色の房が垂れ下がっていますが、これは東西南北の方位を示しているのです。ふた筋の縄を寄り合わせた横綱のしめ縄は、陰陽合一の形で、太極を意味する小宇宙を表しています。

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力士が大地の象徴である土俵で四股を踏むのは、地の負(陰)を鎮め、天の勝(陽)を祈るセレモニーです。

土俵の闘いをさばく行司の軍配には、太陽(陽)と月(陰)が配され、「ハッケヨイのこった!」と叫んでいます。これは自然界のすべてが穏やかに鎮まり、五穀豊穣の願いが込められれているのです。

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古代中国で「陰陽説」が実在した証明として、いまに残っているのが囲碁です。古代ではゲームではなく、戦争の図上演習(シュミレーション)として、作戦を練る手段に用いられていたのです。

1尺2寸の碁盤の寸法は、1年12か月を表し、縦、横に刻まれた360の木目は1年360日。碁石の黒は陰、白は陽を表し、まるい碁石は動いてやまない天、不動の碁盤は大地を象徴です。

コンピュータ誕生につながる易の64卦

パソコンが普及し始めた30年前まで、占い師は八卦見(はっけみ)とか、易者と呼ばれていました。八の卦を上下に組み合わせた六十四卦で、吉凶を占っていたからです。

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易の六十四卦には現代のIT時代につながる、歴史的なエピソードがあります。17世紀のドイツの哲学者で、数学者でもあったライプニッツが、新王朝のラストエンペラー溥儀(ふぎ)に仕えていた友人の宣教師から、六十四卦の原盤チャートを送られたのがきっかけで、のちにコンピュータ開発の基礎となる「二進法」を編み出したのです。

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紀元前17世紀の殷王朝時代から、連綿として受け継がれてきた古代中国の自然科学・哲学の易経が、現代の最先端サイエンスと結びついた、悠久のドラマに感動をおぼえます。

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人のライフサイクルにも反映されている陰陽の循環

ものごとは陰と陽がスパイラル曲線を描いて、エンドレスで循環しています。視点を変えれば陰と陽は、「同時同所に共存」していることになります。

わたしは20代でブラジルへ単身移住して、現地の新聞・ラジオ・テレビ・通信社の記者として活動し、17年後に帰国したときから出版社を立ち上げ、主に企業の歴史(社史)や、経営者の自伝を書いてきました。

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ブラジルでは日本人移住者の歴史を追ってきましたが、人種のるつぼの中で多様な民族とも接してきました。何度も死線をかいくぐり、アップダウンの激しい人生を送ってきた人ほど、「いぶし銀の輝き」を発していることを知りました。わたしが占い師になった動機です。

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陰陽が錯綜した密度の濃い人格、社風が醸成されることを知らされました。もの書きも占い師も、さまざまな人生ドラマに遭遇しますが、実体験を積むにしたがって、成功と挫折の分岐点には、共通の法則があることを痛感しました。

禍福は積み重ねの結果

ひとは誕生したその日を起点にして、生涯運の流れが定まっていることを、ケーススタディとして学び続けてきました。人生の早い時期に生命活力を先食いしてしまった人や、晩年になってから旺盛なバイオリズムに恵まれた、いわゆる大器晩成のひとなどです。

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生年月日によって、人生のエネルギーの盛衰が操られることは、理不尽とも思えますが、運気の流れを事前に把握したうえで、自分の運気の波をコントロールすることができれば、破綻なく歩むことができます。人それぞれに備わった運気の流れを読み取り、クライアントに伝えるのが占い師の大切な使命です。

人生には災厄と幸せが、スパイラル状で編みこまれている現象から、「禍福はあざなえる縄のごとし」ということわざがありますが、易経では「禍福は積み重ねの結果」、すなわち自己責任だと説いています。

すべては自分が招き寄せた「因果応報」であって、原因や責任を他者に転嫁することは容認していません。占いによって示された吉凶は、変えることのできない宿命として捉えるのではなく、従うべき法則に従って運命開拓の努力をうなすものです。

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自分に備わっている資質で勝負に挑み、足りないものを補う努力をすることが、運勢を操縦する秘けつだと言えます。


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