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わかものを襲う「ディストピア社会」

新刊の「無理ゲー社会」を開いたとたんに、ショッキングなデータに打ちのめされました。

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参議院自民党の「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」が、コロナ禍以前の2020年1月に募集した、「あなたの不安を教えてください」についての、投稿の一部が同書に紹介されていました。

コメント総数は1741名(20代が34,3%、30代が32,2%、40代が23,3%)におよびますが、もっとも多いのは経済的不安です。

理不尽な競争社会を写した、やるせない告白

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「年収は200万に届かないくらいです。家賃、光熱費、食費で手一杯で、住民税や国保、年金が払えません。 -中略ー 早く自分なんて消えてしまいたいけど、親がいるうちは自死は親がかわいそう。ただただ苦しい毎日です。」(30代)
「派遣社員で月収は手取り14~15万円で、30代後半です。 ー中略ー 今の政治や社会が、社会的弱者を限界まで追いつめていると思う。未来に希望が持てない。」(30代)
「90歳の祖母を60歳の母といっしょに介護している、30歳の独身女性です。 ー中略ー 未来に絶望しかなく、どうせ年金受給の年金すら延ばされるのなら、60歳くらいで両親とともに命を絶ちたいと、本気で考えています。」(30代)
「正直、将来に対する不安が多様で、大きすぎて、早く死にたいと毎日考えています。今の社会では、結婚して子どもを産みたいとも思えません。安楽死の制度化ばかり考えています。」(20代)

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「早く安楽死の合法化と、自由に自殺できる制度が欲しい。」(30代)

20代から年金・社会保障、30代から安楽死・尊厳死、40代から老後・介護・孤独死に不安を感じていて、中でも安楽死は、不治の病を宣告されたときの、死の決定権ではなく、「自殺の権利」を求めるものが大半を占めていることに、心がふさがれ、涙で活字がかすんで見えました。

女性の自殺者数が急増した2020年

空腹を抱えた焼け野原の中でも、「明日は必ず、今日より良くなる」と、希望をもって生きてきた戦後世代から見ると、世捨て人のような若ものの告白に、暗澹(あんたん)とします。

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コロナ禍で人生設計が一変した2020年の自殺者数は、2万919人(厚労省速報値)で女性の自殺者は前年より885人増加、女子高生が倍増していることに、やりきれない気持ちになります。

厚生労働省は、「自殺は、その多くが追い込まれた末の死であり、その多くが防ぐことができる社会的な問題」で、総合的な自殺対策を推進すると宣言しています。

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エリート官僚たちに、社会の底辺にうごめく弱者の痛みが、どこまで通じているのか疑問符をつけざるを得ません。「その多くが、未然に防げる」と断言するのなら、なぜ効果的な具体策が打ち出せないのでしょうか。

食料、衣服が買えない、子育て世代が20%

2020年の労働力調査によると、非正規社員数は2090万人、雇用者全体(5620万人)の、3人に1人強が非正規になります。

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国税庁の「民間給与実態統計調査」(令和元年分)によると、非正規雇用の平均年収は、わずか175万円(男性226万円、女性152万円)にすぎません。

食料や衣服が買えない子育て世代の割合は、20%(内閣府・子ども貧困指数)もいる事実に、言葉を失います。

早くもほころびが見える、岸田総理の「新資本主義」

誕生したばかりの岸田内閣は、経済政策の目玉として、格差解消に向けて成長と分配をテーマにした、「新しい資本主義」をかかげて船出しました。

富める者から貧しいものへ富を分配し、幅広い層の所得を引き上げて消費を活性化し、国の成長を目指すと意気込んでいます。

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しかし、富裕層の金融所得課税のアドバルーンを上げたその日から、株価や円相場、国債のトリプル暴落の憂き目にあい、一気にトーンダウンしています。

派閥力学や党利党略、政権の延命のみにとらわれた政策では、リーダーの表紙を付け替えただけで、本質は安倍長期政権の中身と変わり映えしません。今月末の衆議員選挙で、国民がどのような審判をくだすのか見守りたいと思います。


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