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もとの漢字は「鯰」(ナマズ)だった

釣り人たちが待ちわびている「アユ釣り」の解禁は、6月中旬から7月初めになりますが、あちこちから聞こえてくる稚魚の放流たよりが、太公望たちの血を騒がせていることでしょう。

ところで「鮎」という漢字は、魚偏に占いと書きますが、文字とおり占いから生まれた文字です。「魏志倭人伝」をひもとくと、3世紀ころの邪馬台国の女王「卑弥呼」は、神功皇后と同一人物という説がありますが、その神功皇后が朝鮮半島の新羅遠征を前にして、朝鮮遠征が神の意に沿うのかどうかを、魚釣りで占いました。

そうして釣り上げたのがかぐわしいアユでした。魚で占ったから「鮎」という字が生まれたのです。鮎は「國」と並んで数少ないmade in Japanの漢字ですが、漢字の本家本元・中国へも輸出されました。中国ではそれまでアユは「鯰」と表記されていました。

ちなみに中国ではアユは「年魚」と呼ばれていました。アユが春に生まれ、夏に育ち、秋に衰え、冬に死ぬ、一生をなぞったものでした。

恐ろしい意味をもつ漢字

周知のように漢字は、紀元前17世紀ころに実在した、殷王朝の遺跡から発掘された甲骨文字(象形文字)をルーツにしていますが、今の私たちが使用しているものとは異なる意味をもつ字があります。

NHKのアンケート調査によると、日本人がもっとも好きな漢字が「愛」と「夢」ですが、愛には死に装束、夢には呪詛されて死に絶えている人の意味があります。

「美」は大きな羊と書きますが、古代中国では群れの中でもひときわ大きく、立派な体躯のヒツジは丁重に飼育され、天下の行方を神に問う神事で殺されて、その内臓で吉凶を読み取りました。そこから美には「人の犠牲になる」という意味に使われました。

「童」という字も、忌まわしい意味が込められています。鋭い針で地に届くほど目を突き刺すという、象形文字から生まれました。童とは奴隷で、「童謡」は奴隷が敵国で苦役を課せられる中で、国の家族をしのんで歌う、「労働歌」だったのです。

わたしは命名や改名のおりには、甲骨文字までさかのぼって漢字の意味を確認するよう、心がけています。








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