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「麒麟の子」たちの向かう先/Sexy Zone 「ザ・ハイライト」感想

Sexy Zoneの最新アルバム「ザ・ハイライト」(2022.6.1発売)がとってもよいです。
語りたいことがたくさんあって、なかなか記事がまとまり切らなかったんだけど、まずはこのアルバムを通してSexy Zoneがしている(ように見える)、さまざまな「挑戦」について語ってみようかと思います。

① テーマへの挑戦

アルバムを通してテーマとなっている「80'sシティポップ」。どうやらここ数年音楽界隈で流行っているジャンルらしい。
昔のリバイバルってともすればダサくなりがちだし、「シティポップ」自体も他のアーティストの二番煎じにもなりかねないけれど、そうならない現代っぽさの織り交ぜ方というか、バランス感覚が素晴らしい。今のSexy Zoneがあわせ持つ若さと経験値があるからこそのバランスなんだろうなぁと思います。

また、もう一つの「夏」というテーマ。タイトルに「夏」「Summer」を含む曲が3曲もあって、それ以外にも夏のさまざまな表情を思わせるような曲たちがアルバムに入っています。
Sexy Zoneとして初めて夏にコンサートツアーをするにあたってのリードアルバムであることを考えて、楽曲も夏のイメージでまとめてきたんだろうなぁと思いつつ、これだけテーマ性の高いアルバムを作ってしまうとかえってそこから広げてライブを作るのは難しいんじゃないかなとも思います。
だからこそ、これだけ完成度の高いアルバムを引っ提げたうえで、アルバムとしての完成度をさらに超える、すっごいライブを作ってやるぞ! という決意のようなものを感じます。

② ジャニーズとしてできることへの挑戦

EDMやファンクの曲、ベースがゴリゴリ聴いた曲とか、いわゆる「ジャニーズっぽい曲」ではない曲をたくさん含むこのアルバム。それなのに、ちゃんと「ジャニーズアイドルのSexy Zoneのアルバム」に聴こえる不思議。
洋楽や韓国のボーイズグループのやっていることをコピーするのではなく、そのテイストを取り入れつつもあくまで「J-Popの曲」に仕上げている。ジャニーズの枠を越えるのではなくて、ジャニーズアイドルとしての自分たちでどこまでできるか、という挑戦をしているように感じます。
Sexy Zoneというグループがジャニーズとして10年積み上げてきた経験と、持ち前の品の良さがあるからこそ、どんなジャンルの曲でも自分たちらしさ(≒ジャニーズとしてのアイデンティティ)を出すことができるのかなぁ、と思います。

③ サブスク時代の聴き手への挑戦

世はサブスクリプション全盛期。Twitterを見ていても「Sexy Zone、こんないい曲歌ってるのに、なんでサブスク解禁しないの? もったいない!」という声をよく目にします。
わたしも、楽曲の良さをもっと多くの人に届けるにはサブスク解禁しかないだろうと思っていたんだけど、アルバムを通して聴いてちょっと考えが変わりました。

「自分の好きな曲を、好きな時に、好きな順で、好きなだけ聴ける」のがサブスクの良さだとしたら、この「ザ・ハイライト」というアルバムは、「この14曲を、自分の好きな時に、この順番で、何度も繰り返し聴く」良さがあるなぁと感じます。それだけ、一つの音楽アルバムとしての完成度の高さがある。
多様な曲が集まっているのに、「夏」という軸と、何より「Sexy Zoneの曲」という軸でしっかりまとまっていて、通して聴いた時の曲の流れがとてもスムーズに耳に入ってきます。
どの曲も、YouTubeのアルバムダイジェストや公式HPの試聴で一部分を聴くだけでは感じきれない良さがあるし、先に発表されていたリード曲やシングルで既に発売されている曲も、アルバムを通して流れの中で聴くとまた違った良さを感じられる(シングル曲が2曲だけとはいえ、アルバムの中でこれだけ浮かずに存在しているのもすごいと思う)。
現状、サブスクが使えないからこそ、「アルバム」という形態を最大限生かした構成。痺れます。
これまでのSexy Zoneのアルバムは形態ごとに収録曲が違っていたけど、今回は全形態共通の収録曲というところに、14曲のアルバムとしてのパッケージへの自信の現れが見て取れます。

④ 世間の持つイメージへの挑戦

わたしもそうだったのだけど、Sexy Zoneといえば薔薇を片手に「時代を作ろう Sexy Zone」って歌って踊っていたイメージがまだまだ強く残っている人たちが多いと思います(それだけセンセーショナルなデビュー&メディア露出の量だったのだとも思う)。
最近テレビで見る機会が増えた中島健人・菊池風磨両氏も、「セクシーサンキュー」「許せない!」のイメージが先行して、本来の彼らのタレントとしての魅力のごく一部のみが世間に広がっているのかなぁという印象です。
あとは、「ジャニーズ」というだけで、「あぁ、どうせチャラチャラっと歌って踊って、顔が好きなファンが黄色い歓声をあげてるんでしょ?」と思われがちだったり。
このアルバムは、そういう世間の持つ「ジャニーズ」「Sexy Zone」「メンバー個人」のイメージをいい意味で華麗に裏切っているなぁと思います。
こんなにお洒落で多様な曲を、こんなに自在に歌いこなして、自分たちの世界観を作り出せるグループ。
バラエティやYouTubeでしかメンバーを見たことない人がこのアルバムを聴いたら、こんな歌を歌えるのか! とびっくりするんじゃないかな。
それだけ「表現者」「歌い手」としてのSexy Zoneの魅力と強さが楽しめるアルバムだなぁ、と思います。

⑤ 自分達への挑戦

曲を繰り返し聴いて、なんとなく一緒に曲を口ずさみ始めると、あることに気づきます。

「え、この曲、歌うの超難しくない…?」

聴いているだけではあまり感じないけど、歌ってみると難度の高い曲が多いと思います。
そもそものメロディーの動きやリズムも複雑で難しかったりするんだけど、メロディーをオクターブでハモって歌ったり、「どこまで上がるの!?」ってくらいファルセットの高音を聴かせたり… この曲達をライブでやるってわかってるんだよね? という難度の曲たち。

また、集まった楽曲の多様さも難しさに拍車をかけていると感じます。
「夏」がテーマ、と一口に言っても、青空のような爽やかさ、開放感、夜のギラギラ感、アバンチュール、水面のキラキラした輝き、夏の終わりの寂しい感じ、線香花火のような儚さ…
楽曲のクオリティが高い分、それに見合うだけの表現力や曲に合わせた歌い方が求められるだろうなぁと。

ファンの欲目かもしれないけれど、Sexy Zoneのメンバーたちはその難度にしっかり応える歌唱をしているなぁ、と思います。

また、アルバムを聴いたり、雑誌やYouTubeで彼らが語るのを観たり聞いたりしていると、これだけの楽曲を十二分に表現するだけの力量と、成長してきた自分たちにはそれができるという自信を感じます。
無理矢理に背伸びをした挑戦ではなく、今の自分達ならここまでのことができるという冷静な判断がなされた上で、レーベルや事務所をしっかりと納得させたうえでの挑戦なのだろうなぁと。

Where is the “Wonder Child” going?

このアルバムを聴いて、Sexy Zoneの曲「麒麟の子」の歌詞を思い出しました。

飼い慣らされていた麒麟が 高い柵を飛び越えた
Sexy Zone 「麒麟の子」

Sexy Zoneのメンバーたちを表しているともとれる、麒麟の子、という表現。
飼い慣らされていた麒麟は、鎖を喰いちぎって柵を飛び越えるのではなく、周りの大人達に逆らうのではなく、柵があるからこそ出来ることの面白さを最大限追求して、「自分達にはこんなことができるよ」と示して周りを納得させて、信頼を勝ち得て、まだ見たことのない地平へ私たちを一緒に連れて行こうとしている
これからどこへ向かっていくのか、その途中でどんな景色を私たちに見せてくれるのか、もう本当に楽しみでしかないです。

人類みんなこのアルバム聴いてほしいー! そして感想を語り合いたいぞー!
「ザ・ハイライト」最高だー!!

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