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絶滅危惧種の「感動」を守れ

2021年1月11日。新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」にて歌声を添えさせていただきました「ペンギン・カフェ」の公演が、無事に配信終了しました。
お世話になったみなさん、ご観劇くださったみなさん、本当にありがとうございました!

当初、1月9日~11日に上演を予定していた「ニューイヤー・バレエ」でしたが、事前に行ったPCR検査で公演関係者1名に陽性反応が出たことにより、一度は公演中止となり。
1月7日に改めてその他の公演関係者への検査を行ったところ全員陰性という結果が出て、保健所からは新国立劇場内には濃厚接触者はいないとの判断が出たため、急ピッチで調整がなされ、1月11日のみ無観客で上演し無料ライブ配信を行うことになった、そんな流れの、ある種の奇跡が重なったことによる特別なオンライン公演でした。

バレエ「ペンギン・カフェ」は、デヴィッド・ビントレー氏が振り付け、1988年に英国ロイヤル・バレエが初演した作品。ペンギン・カフェ・オーケストラの楽曲が管弦楽にアレンジされています。
主人公は、オオウミガラス。かつて大西洋に生息していて、人間の手によって乱獲され絶滅してしまった原初のペンギンです。

軽快な音楽とともに可愛らしくユーモラスな踊りで人々を魅了しますが、痛烈な文明批判と動物保護、環境問題への問いかけが大きなメッセージとなっていて。冒頭と、唯一人間が登場する大切なシーンに歌声が入ります。
お話を伺って、このストーリーならぜひ歌わせてもらいたい!と、今回の出演を受けさせていただいた、の、です、が・・・

めっちゃ緊張した!!!!!!!!笑

日本を代表する新国立劇場バレエ団のみなさん、そしてなんと東京フィルハーモニー交響楽団の方々と、同じ舞台に立たせていただくという、初めてのチャレンジ。

これ、ほんとにわたしで!
大丈夫ですかー!!!!!!!!!

(↑誰にも届かない心の中の全力の叫び笑)

楽屋はひとりきり。
素敵なピアノがあったので、弾きながらきもちを落ち着かせます。
せっかく一流のみなさんとご一緒する機会なんだから、緊張なんかしてないで楽しもう、力を抜こう(と言い聞かせてる時点でバッチリ緊張している笑)

オーケストラピットへの入り口の壁には、たくさんの人たちのサインが。

新国立劇場のオペラパレスは天井が高くて、客席も重厚感があって荘厳なかんじ。
これまで偉大な人たちがこの空間に音楽を響かせてきたんだなぁ、それをこの壁たちはみんな聴いているんだなぁ。
そして今日ここにはたくさんのお客さまが集まって、熱い拍手が押し寄せるはずだったんだよなぁ。と思いを馳せていると、涙がつうーと勝手に頬を流れていきました。

お隣でクラシックギターを演奏されていた村治奏一さんと記念にパシャリ。
リハーサルのときから気さくに話しかけてくださって、とっても心強かったです。
今週末には蔵前のギャラリーで単独ライブをされるそう!情報チェックしてみてくださいね◎

YouTubeのライブ配信は、最終的に28,000人近くもの方々がご観覧くださっていたとのこと(!)
急な決定で、バタバタ調整を重ねてライブ配信を実現してくださった主催やスタッフのみなさんのご尽力、限られた稽古の時間の中で素晴らしいパフォーマンスを発揮されたバレエ団とオーケストラのみなさんの熱意。心の底から尊敬します。

歌い終わったあとピットから最後の舞台を見つめていて、みずみずしくエネルギッシュに踊るダンサーさんたちの姿があまりにも神々しくて、抑えていた涙が止まらず、コンマスの方に微笑まれるくらい号泣しておりました笑

初音合わせの日から、さわやかな笑顔でわたしの不安を一掃してくださった指揮者の冨田実里さん!明るくてフレンドリーで、大好きです。もはや立派なファン笑

終演後、楽屋のほうに戻ると、優しいダンサーの方々が駆け寄ってきてくださり、パシャリ!

実は、配信をご覧になったお客さまから「ぜんぜん声がきこえなくて、どこを歌ってるかわからなかったよ〜」というメッセージがスマホにわんさか届いていて、終演後ちょこっとしょんぼりしていたのですが・・・
「大事なシーンで、歌声をありがとうございました!素敵でした!」と熱帯雨林に住む人間役のダンサーさんに伝えていただけて、ステージには聞こえていたのなら、よかったことにしよう!と安心をもらえました。
配信での音響って生とまた違って独特のシビアさがあるのですよね。
声をかけてもらえてありがたかったー。泣

これはわたし個人の感じ方・考え方なので、反対意見の方ももちろん大勢おられると思うけど。

一刻も早く、確実性がどこにも立証されていない「PCR検査で陽性反応=感染者=危険=営業停止・公演中止」という、あまりに独裁的で暴力めいた社会ルールを見直してもらって、生の空間で、個人の選択によって自由に観劇ができるような世の中にシフトしていってほしい。

誰もが安心して暮らし、人としてあたりまえに生きて表現する権利を、そんな純粋なたくさんの願いを、お金の都合なんかのために奪わないでほしい。

配信じゃ伝わりきれないことが確かにあるのだから。そしてその、伝わりきれないことこそが、芸術を創造し表現する人たちの、命に代えても伝えたいことなのだから。

ぜんぜんおおげさではなく
「感動」は今、絶滅危惧種です。

乱獲されすぎて自覚はないかもしれない。
だけど「感動」は今、胸にあるだろうか。
毎日なにかに、心が震えているだろうか。
特別なことがあるとかないとか関係ないよ。
ささやかな今日に、通り過ぎていく風景に
わたしたちは「感動」できてるだろうか。

大きな声で、みんなで喋ったり笑ったり涙を流したり、そんな心震える空間を共有することを禁じられ、マスクを強いられた「感動」の呼吸はどんどんと浅くなっている。

まずは気づいてあげよう。自分自身が。
そしてみんなで守っていこう。
きちんと触れながら育んでいこう。
家畜ではなく人間として生きるために。
野生を、生きるエネルギーを
ひとりひとりが、取り戻そう。

そのために芸術がある。
そのために表現者がいるんだと
わたしは信じています。

忘れられない2021年のスタートに感謝を。
本年もどうぞよろしくお願いいたします!


かおり

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