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成功するのは、臆病な人たちだけ。

タグボート岡康道さんの「勝率2割の仕事論」

広告に携わる人なら知らない人はいない、と思うのはもう古いのかもですが。でも岡さんのことは知っていても、この本のことは知らない人が多いのではないかと思います。岡さんは昨年亡くなられたのですが、まさに2016年に出版されていて遺書みたいな本だなぁ、こんな最後の本音みたいな本あったんだ、と驚きました。

今ではクリエイティブブティックと言いますが、当時海外では当たり前だったクリエイティブエージェンシーを日本で初めて設立され、多田さんは映画をつくったり、麻生さんは
CHEMISTRYの作詞したり、当時その潔さとかカッコ良さとか、孤高の存在だった気がします。

岡さんと吉田望さんの「ブランドⅠ.Ⅱ」という2冊の本は何度も読み返した記憶があります。

ロト7も1UPもsansanもペプシもライフカードもdocomoも、この20年間だいたい素敵で面白いCMって思ったら、やっぱりタグボートの制作であることが多いように思います。

ちょうどこの本が出る前後くらいですかね、2016年とか2017年くらいに岡さんが会社で講演してくれて、ブランドの話とかプレゼンの話とか最近のCMの話とか、若手の頃に気持ちが戻ってワクワクしながら話を聞いたのを思い出します。

その時、岡さんがしてくれたプレゼンについての話があって、それを自分の本でも引用させれもらったのですが、オリエンを受けたら4つの順番で考えるそうなんですね。

1.オリエンの中にすでに答えが出ている。
2.本質を考える。
3.ファンタジーにしてしまう。
4.やけくそ。

3.4.になると手段の話なので、もうプランナーやディレクターの腕によるのだけれど、大体は1.2.でアイデアの骨子が浮かぶとのこと。

この本に書いてあることも、核となるのはその話で、大切なのは「人生の本質を衝くこと。」

「強い広告をつくるためには、意表を衝かなくてはならない。それと同時に、それが本質を衝いていなくてはならない。」

「プロフェッショナルは、テーマに時間をかけない。テーマは本質的なことだから。」

柳井正さんは一勝九敗という本を書かれていますが、岡さんのタイトルの勝率2割の仕事論の意味は、、、

「2割の確率で面白いかもしれませんね、と言ってくれる人と出会う。僕たちはその2割に賭けて仕事をしている。」

「オリエン通りの全部入りプランが勝つが、それだと絶対に面白くならない。」

「負ける覚悟でやらないと、いい勝ち方はできない。」

「つまらないものを、絶対につくらないことだ。」

プレゼンに勝つことだけを考えていたら、結局は本質的で永続的な結果は得られないということですよね。プレゼンについても書かれていて、

「プレゼンは下手な方がいい。上手いプレゼンは怪しい。良い企画は話さなくても良い。悪い企画を上手いプレゼンで通す方が悪。」

「小田桐昭さんのファーストフードチェーンのプレゼンに背筋が震えた。」

とあります。こちらの背筋が震える思いです。

企画やアイデアの出し方もいくつか書かれていて、ウソの日記を子供の頃から50年以上書いていらっしゃったそうです。空想を6行以内で書き留めるというもので、そんな発想の筋トレ凄いなと。

「企画とは、商品を使う人の隠された心情をあぶり出そうと試みる作業のことである。」

「人間が内面に抱えているものはそう大差がない。自分のいま持っているものや覚えているものから、いかに素早くアイデアやストーリーを引き出せるか。それにはものを引っ掛けるための釣り針のような思考法を用意する必要がある。」

「商品に自分の人生を絡めていき、その後自分を離れて少し遠くから商品と人との関係を凝視しながら企画に仕立てる。商品は必ず人が使う。人がいる限り、何らかの感情がその商品の周囲に浮遊しているはず。その感情の中から、いままで誰も注目しなかったものを抽出する。つまり、商品と人を凝視する。」

最近、クリエイターやマーケターの方が「ブランドって何?」って聞かれたらどう答えるかを色々探しているのですが、岡さんの答えもこの本にありました。

「ブランドとは、理由を論理的には説明できないが、どうしてもその商品でなければならないような気がする不思議な力のことだ。」

この本を書かれたときちょうど還暦くらいなので、人生の振り返りとしてこんな言葉もありました。

「青春とは、光の速さを超えるような特別な時間軸を生きる経験である。」

タグボートの輝かしい成功と、岡さんの広告マンらしい大きくてカッコいい姿から、全く想像つかないのですが、「自分の成功は臆病に尽きる」とのことでした。

「制作者として成功するのは、威張らずにひたすら臆病な人たちだけである。」

この本を読めば読むほど納得しますし、つくられたCMを思い返すと、本当にその通りだなぁと改めて感じました。

先日亡くなられた小霜さんとの思い出もそうですが、改めて偉大なクリエイターの方の想いを辿る旅を見せてもらっているようで、この本との縁にも感謝です。

#岡康道
#勝率2割の仕事論

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