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愛とは、"種"に注がれる水と日差しのようなもの。

『アーモンド』ソン・ウォンピョン

本屋大賞2020翻訳部門の作品。
ずっと気になっていましたが文庫になったのを機に読みました。

✔︎どんなことも、何度も繰り返してると意味がなくなるものよ。初めのうちはだんだん意味がはっきりしてくるように思えるけれど、しばらく経つとそれが変わっていったり色褪せたりしてくるの。そして最後には、意味が消えてしまうのよ。真っ白に。

✔︎救うことのできない人間なんていない。救おうとする努力をやめてしまう人たちがいるだけだ。

✔︎本屋は何千、何万という作家たちが、生きている人も死んだ人も一緒になって押し合いへし合いしている、すごく人口密度の高い所だ。でも本は静かだ。手に取って開くまでは、まるで死んでるみたいに黙りこくっている。そして、開いた瞬間から話し始めるのだ。ゆっくりと、ちょうど僕が望む分だけ。

✔︎難しいのは、冬が春に変わることだ。凍った土がとけ、芽が出て、枯れていた枝に色とりどりの花が咲き始めること。本当に大変なのはそっちのほうだ。夏は、ただ春の原動力をもらって前に何歩か進むだけで来るのだ。

✔︎愛というのは究極の概念だ。規定できない何かを、かろうじて単語の中に閉じ込めたもの。

✔︎遠ければ遠いでできることはないと言って背を向け、近ければ近いで恐怖と不安があまりにも大きいと言って誰も立ち上がらなかった。ほとんどの人が、感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れた。

✔︎感じる、共感すると言うけれど、それは本物ではなかった。僕はそんなふうに生きたくはなかった。

✔︎僕は初めて人間になった。そしてその瞬間、世の中のあらゆることが僕から遠ざかっていった。

✔︎それが悲劇なのか喜劇なのかは、あなたにも僕にも、誰にも永遠にわからないことだから。そんなにすっぱり分けることなんて、初めから不可能なのかもしれない。人生は、そのときそのとき、いろんな味を味わわせてくれながら、ただ流れていく。

✔︎人間を人間にするのも、怪物にするのも愛だと思うようになった。

✔︎平穏に過ごした成長期の中で受けた応援と愛、無条件の支持がとても有り難くて貴いことなのだとわかった。それが一人の人間にとってどれほど大きな武器になるか、世の中を、何の偏見も持たずにいろいろな見方ができる力を与えてくれるものか、親になって初めてわかるのだ。

✔︎愛とは、"種"に注がれる水と日差しのようなもの。人に対してもう一度注がれる視線とか、決めるつける前になぜそうなったのか質問してみること、それが愛なのではないか。

#アーモンド
#ソンウォンピョン

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