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怖い話。スリッパをなくす現実の話。

スリッパが見当たらない。片方だけ、見当たらない。
どんな大豪邸だ。二宮邸だ。2LDKの一部屋に、大人ふたりがひしめき合って暮らしている。
ちなみに2LDKのもう一部屋は本と雑貨とソファーベッドが占めている。ソファーベッドに人間は寝ない。普段使っているお布団を上げたら、このソファベッドの上に畳んで重ねる。洗濯物を取り込んだらいったんソファベッドの上にバラす。洗濯物はたまに、ときどき、畳まずにそのまま着用したりする。
話がそれた。

つまり、生活空間的にはほぼほぼ1LDKのどこかに、スリッパが片方隠れている。なぜだ!
これが読みかけの文庫本とか 返信が必要なハガキとかヘアピンとか、いや、靴下片っぽうだって、まだ話はわかる。
でもスリッパだぜ???
あんな、ある程度固くて厚みがあって、常に床の上で使用していて、
なんなら見失う30分前までは私が履いていたスリッパが、どこへ消えるというの?
積ん読のスキマになんて、挟まりっこないじゃないの。
間違って捨てた?ベランダに履いて出た?トイレに?押入れの中に?
いや、押入れにもトイレにもベランダにも、もちろんゴミ箱の中にだって無かった。在りそうな場所がどこにも無いのだ!

とうとう、失せ物の常套句「在る所が無い」が発動した。

そんなにも、二宮邸は散らかっているか?
…そこそこだ。
そこそこ。
でもけして、30分前に履いていたスリッパが無くなるほどの散らかりようではない。ないと思う。ううんわかんない。でもきっとそう!

こんな事ってある?

そう思った私は、つい、ネットを検索し始めた。
「スリッパ 片方なくす」で検索したら、どうやら私は孤独ではないようだ。
他にもスリッパをなくしたっぽい記述がいくつか。
曰く、「小動物のせい」「温泉で、間違って履いて行かれた」等々。
ここは温泉地ではない!!!

百歩譲って何かしらの小動物が持っていったとする。
そいつは、部屋の中の、私が座ってるすぐ横にあったはずのスリッパを、片方だけ持っていったというのだろうか?? あ…なんだか怖くなってきたぞ。

とうとう、
「スリッパやサンダルをなくす事の、スピリチュアルな意味」とかまで検索に出てきた。スピリチュアル!
あと「履き物を片方だけなくす夢 夢判断」とかも出てきた。
夢の話じゃないんだよ!これは現実だ!!!

あまりにも腑に落ちなくて、ついに私はnoteを書き始めた。
もうすっかりご無沙汰していたのに。
自分でnote記事を書かなくなると、読みに来ることもだんだん少なくなるね。
白状する。
書きたくなるまでは意地でも書かん、くらいに思っていた。
面倒だなあとか思いながら、鍛錬のようにして書くなんて、絶対嫌だと思っていた。継続が嫌いです。

…嘘です継続は好きだ。

って言うか、継続に憧れてる。
なんで私は何事も長続きしないのか。クズだにんげんのクズだ。
だからこんな狭い部屋でスリッパ片方なんて失くすんだ。
関係ないかそれは。

ああ。毎日絶え間なく努力して、あまつさえそれを楽しみにしてしまうような
そういう人に、わたしはなりたい。
あと多分、スリッパ以外にももっと大切なものをたくさん失くしていると思うけど、失くした事にも気づいていない。にんげんのクz…

やめよう。
自責で満足するのはもうやめよう。
わたしは継続できない人間。努力できない人間。2LDKでスリッパを片方失くす人間。「できない」って言うな「しない」だけだろ、って自分ツッコミも、ゲップが出るほどやったので、もう勘弁してちょう。


字面にすると大したことないな、って、今思ってます。
でもね。
さっきまで履いていたスリッパの片方だけが、どんなに探しても見つからないなんて。実際に起こったらホラーですよ。
わたしは我が家に妖怪スリッパ舐めが居て、そいつが持っていったと疑ってる。
めちゃくちゃ怖い。

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