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風邪ひいてるときの夢

体調の悪いときには悪夢を見やすい。
朝の空は暗く、大国の戦闘機が隊列をなし吐く黒煙で、見る間に満たされていった。
今日は戦争の夢を見た。

むかし真剣な話をしている場で、ただ勝ち負けだけのための口論に持ち込まれ
煙に巻かれたことがあるのだと、その人は言った。
だから摑みどころのない言葉を並べられると不安になる、
だから自分は詩人が嫌いなのだと。
そのときわたしは詩人でそのひとは大切なひとだったのでとても悲しい気持ちになった。
そんなわたしを見てさらに困った顔をして頭を撫でてきたので、そのひとも悪意はないのだよなということが感じられた。
勝ち負けなどにしたくないのだ。
わたしはなるだけ心を正確に伝えたくて、だから言葉の曖昧さを利用してむしろあなたに一歩でも近寄ろうとしているのだ、と説明したけれどどうだろう。
詩は、はたしてそういうものなのか
わたシは、はたしてそういうものなのか
さっぱり自信がない。

曖昧さの悪意。
黒煙は他人事のように何の恐怖もわたしに与えない。
空はますます暗く、わたしはどこか高揚すらしていて
だめだこれではあの人にすこしも近寄れまいと確信する。


目がさめると煙に巻かれたように喉が痛んでいた。風邪は悪化した。

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