推しと繋がるな。

久しぶりです。ヒカリゴケです。

前回のnoteを書いてから二年たった。その間にいろいろあった。そのことを書こうと思う。

※特定を避けるため、過去の記事を非公開にしました。

私はこの二年間の間に、推しと繋がった。
繋がった末に出た結論は、「推しと繋がるな」ということだった。

繋がった相手はデビューしたばかりのVTuberだった。デビューしたばかりとはいえ、ある程度名の通った事務所所属だったこともあってそれなりに人気があった。最初、私は絵が描けたので、サムネイル用のファンアートを描いたりして応援をしていた。
その頃ちょうど、Twitterではサークルツイートという機能が追加された。サークルに追加された人物にしか読めないツイートを投稿できる機能。私はその機能を使って推しだけに見えるように設定をしてリプライを送るようになった。今までリプを送っていなかった理由は周りに推しへのメッセージを見られるのが恥ずかしかったからだ。
彼はそれに律義にいいねをつけたり、返信をくれたりした。ファンアートもたくさん使ってくれた。役に立てているということが嬉しかった。もっと何かできることがあれば、手伝うから連絡をくださいと連絡先を伝えた。ファンと推しがプライベートで関わるのはご法度だけど、クライアントとクリエイターという立場で依頼という形で関わるのは問題ないと考えた。

彼から連絡がきた。とんでもなく嬉しかったのを覚えている。
だけどそれは依頼ではなかった。私が落ち込んだようなツイートをしたのをきっかけに、心配して、連絡をしてくれたのだ。
私が落ち込んでいるというのは彼の勘違いで、大丈夫だと問題ないですと伝えようと思ったのだが、そこで少しだけ欲が出た。
「もし時間があるなら、通話しませんか?」
彼はそれに了承してくれて、彼と初めて一対一で通話をした。声を発すると「え?女の子?」と驚かれた。変な名前を使っていたり絵柄を見て男だと思っていたらしい。もしかしたら、同性だと思ったから連絡をくれたのかもしれない、だまし討ちのような形になってしまって申し訳なかった。
けれど、こちらも別に男女の関係を求めているわけではなかったし、いつも配信を見ている延長線で、話をしてみたいと思っただけだった。

会話は弾んで、二時間くらい話していたと思う。ツイートの誤解を解いて、あなたの役に立つ仕事をしたいんだけど何かないかとか、そういう話をしたと思う。明日も配信予定があるから、そろそろ寝るね、と言われ通話を切った。貴重な体験だった、面白かったな。これがきっかけで何か手伝えるようになったら嬉しいな、と考え、その日は就寝した。

ところが、翌日から、ほぼ毎日のように連絡がくるようになった。
配信が終わると「終わった、まだ起きてるよね?話せる?」とメッセージがきて、配信終わりに小一時間通話をする日が続いた。今日の配信どうだった?から始まって、ファンアートを直接ここがこうで素敵だとほめてもらえたり、歌やダンスのレッスンが大変だとかそういった愚痴などもきくようになった。配信の背景やサムネを作ってほしいと頼まれるようにもなった。これが一番うれしかった。

あれ?と思い始めたのは一か月くらいたったころからだった。通話の頻度が減り、別の人の名前で呼び間違えられたりして、「あ、他のファンともつながっているんだ」と気づいた。それ自体は別によかったのだけど、彼からの言動が「俺と結婚したい?」とか「会いたい?」といった内容に変わってきて、もしかしたら女として天秤にかけられているのかな、と感じた。そして、繋がってるであろうファンからマウントのようなものをとられ始めるようになった。掲示板で匿名から叩かれたりもしたが、その内容は、ネットに書いてない、私が彼にだけ話した内容が含まれていた。彼からそれを聞いた別の繋がりが書き込んでるのは明白だった。

「マネージャーに怒られたから、もう連絡とるのやめるね。ごめん。」そう告げられたのは初めて通話をしてから一か月半後くらいのことだった。「他の繋がりもバレて全員切ったんだけど、まあみんなに泣かれたよね」と困ったように話されたけど、私ももちろん泣いてた。自分だけは、クリエイターとして認めて貰って、後ろ暗いところがなく関係を構築していると勘違いしていた。彼にとってはただのファンで、彼女候補みたいなノリでちょっかいをかけられて、簡単に切れる存在だったんだと思い知らされた。

その時の自分の感情に恋愛感情が含まれていたのか、今となってはもうわからない。ただ、それでも私は食い下がって、「表に出ない形、もしくは、ファンとして支えられる範囲で役に立ちたいから、困ったことがあったらいつでも連絡して」といって彼専用の鍵アカウントを一つ作って、彼は裏垢からそれをフォローして、繋がり続けた。通話はもちろん、リプライやDMもしないけど、たまに「あのゲームやろうと思ってるんだけど、いいサムネがないなあ」「今度出すグッズのいいデザイン案ないかなあ」とぼやきが投稿されて、そのたびに私はせっせとサムネを描いたり、デザインを考えたりした。クリエイターとしての価値はまだ残っているんだと嬉しかった。

その頃一度だけ、彼が直接会いに来たことがあった。自宅住所は教えていたんだけど一度も来たことも会ったこともなく、それなのに何の事前連絡もなしに突然現れて、「最近元気なさそうだったから」と言って、「汚い部屋w」などと冗談まじりに少し話して、10分もたたずに帰って行った。あとから配信で知ったけど撮影スタジオから私の家まで1時間かけて来て、彼の家はさらに遠かったから、途中のビジネスホテルに泊まって翌朝帰ったらしい。元気がなさそうだったから、というだけで、通話もリプライすらもしないくせにわざわざ時間をかけて会いに来た意味がわからなくて、かなり混乱した。喜んでいいのかわからなかったけど、でも、元気づけてくれようとしたことは嬉しかった。

それでも、関係は突然切れた。マネージャーに再度釘をさされたから。と。鍵垢は消えて、Twitterはブロックされた。会いにまできたのに、なんで?と本当にわからなかった。
彼の配信を見ると、少し前に彼がぼやいていた欲しかった素材、私も作ったんだけど、私じゃない誰かが作った素材を使っていた。自分がクリエイターとして尊重されていると一瞬でも勘違いしていたことがすごく馬鹿らしく思えた。

推しとファンは、対等じゃない。どんなにフェアでいたくても向こうは「相手は自分のことを好きでいる」という前提があるから、多少めちゃくちゃなことをしてもいいし、こっちはできるだけ良好な関係を築きたくて頑張るけど向こうは自分のことを好きでいてくれる相手はたくさんいるから、別に私に嫌われたところで気にしないんだと思う。変わりはいくらでもいる。だから簡単に傷つけられたんだと思う。
少しも得がなかったと言えば嘘になる。彼と毎日通話していた時は楽しかったし、今でも自分の作ってあげた素材を使って配信をしているのを見ると、嬉しくなる。それでも彼は簡単に私との関わりを切ったのだ。もう彼の配信は見ていない、彼は私のコメントを、スパチャお礼以外で読み上げないようにしているのに気づいたからだ。そこまで拒否されて、応援し続けるのは精神衛生上無理だった。

これが私が推しと繋がった半年間の出来事だ。
ずっと推しのことを応援したいなら、推しとは繋がらないほうがいい。

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