太陽てえのは

占星術でいうところの要であり、自分自身を生きる際に一番重要とされるんですが。

まぁ、、、
日々を生きていると疎ましく感じることも無きにしも非ずです。

なんていうやさぐれた心とリンクする「通勤」で今日はさようなら。

朝、起き抜けの太陽は勤勉の炎
無数のまぶしい指先で
団地の窓をしつこく小突き
だるい夜明けの
だるい人々を
夢の畑から引っこ抜く

それから
黙々と働きに出る人々を
東の空から くっきり照らす 満足そうに
照らしさえすれば
人の心が明るくなると信じ切って!

ああ、やりきれない善意の太陽
明るいばかりで暗さがない
人の心のヒダにある闇を知らない
その上 性懲りももなく太陽は
通勤途上の人々に
今朝もまた
マイクを突き出して
勤労意欲の調査でござる

人々はカンシャク玉を湿らせながら
吐き出すように答えるさ
くらしに疲れてなんかいないさ
蒸発したいなんて思ってもみないよ
日々がむなしいなんて考えもしないぜ
電車が止まれば歩いてでも通うさ

朝の太陽はご満悦
太陽てえのは始末が悪い
明るさと希望と忍耐しか理解できない
とりわけ 朝の太陽は
気色悪いほど勤勉の炎でして―――

「通勤」 ー 吉野弘 

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