薬毒の恐怖

あらゆる病原は薬剤であることは、私の常（つね）に唱（とな）えているところであるが、これについて一層深く突っ込んで書いてみると、右の原理を常に頭に置いて診査（しんさ）すればよく分かる。例（たと）えばこの病気は何（なん）の薬を服（の）んだためとか何（なん）の注射のためとか、何を塗布（とふ）したからだとか、洗滌（せんじょう）したからとかを考えてみるのである。仮（かり）に盲腸炎（もうちょうえん）にしろこれはいつ何の薬を服んだから、消毒薬を用（もち）いたからと考える。

言うまでもなくその薬毒（やくどく）が膿化（のうか）し、盲腸部に固結（こけつ）したものだからである。また胃に関する病気にしても、何の薬を何年間服み続けたからだととか、この神経痛は、リュウマチは、腫物（はれもの）は、瘭疽（ひょうそ）は、脱疽（だっそ）等々もそうであり、頭痛、眼、鼻、耳、歯痛（しつう）、歯槽膿漏（しそうのうろう）、扁桃腺炎（へんとうせんえん）、声嗄（こえが）れ等、なにもかも原因は薬を用いたことのない子供とすれば、勿論（もちろん）親の薬毒（やくどく）が遺伝したものであるから、その気で考えれば直（す）ぐ分かるはずである。

というようにほとんど想像もつかないわけであるから、恐ろしい話である。しかしわが神霊（しんれい）医学を修得すれば根本（こんぽん）が薬毒であることが分かる以上、病気の心配から解放されるのである。そうして歯痛の原因が盲腸手術のためがよくあるのも、ちょっと意外に思うであろうし、あらゆる手術の際の消毒薬がいろいろな痛みの原因になることも、非常に多いものであるから、身体（からだ）のどこかに激しい痛みや、執拗（しつよう）な痛みのある場合、既往（きおう）の手術を想（おも）い出せば必ずうなずくであろう。また歯槽膿漏の原因が腎臓委縮（じんぞういしゅく）による余剰尿（よじょうにょう）が上へ昇るためと知ったら驚くのほかないであろう。その他数え上げればキリがないから、この辺で止（や）めておくが、要するに万病ことごとくの原因は薬毒なりと知ればいいので、これだけでもその人は安心立命（あんしんりゅうめい）を得たのである。

（「栄光」百七十三号　昭和二十七年九月十日）