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名画の謎 ギリシャ神話編


中野京子と読み解く名画の謎ギリシャ神話編
著者  中野京子
2011年3月10日第一発行

『怖い絵』シリーズでもお馴染みの中野京子さんの著書であり、こちらも絵画からいろいろと読み解いていく内容になっています。
今回はギリシャ神話編ということでざっくりいうとヴィーナスとかゼウスとかアポロンが出てくる絵の解説ということになります。

この本の前に旧約・新約聖書編というのも読んだのですが基礎知識ゼロでも分かりやすく、本当に読みやすかったです。

まず、元知識ゼロの私が意外とびっくりしたのは聖書とこのギリシャ神話は全くの別物(というかキリスト教はギリシャ神話を批判?している)ということ。
でもまあギリシャ神話は神が12人以上出てくるのでそりゃそうですよね。
あとは、初歩的ですが天使は聖書でキューピッドはギリシャ神話の生き物です。
区別の仕方としてはその人のアトリビュート(持ち物や付近にある物体)で見分けます。キューピッドの場合は弓矢、ゼウスなら鷲などなど…。

本の表紙となっている絵はフランスの画家ジェロームの『ピグマリオンとガラテア』。

http://gemeinwohl.jp/2019/05/10/ジェロームの『ピグマリオンとガラテア』~ピグ/

この絵は美と愛欲の女神、ヴィーナスに関係してきます。
主人公は絵の題名にもなっているピグマリオン王。ざっくりいうと自分で作った美女の彫刻に惚れてしまったのでヴィーナスに彼女のような花嫁が欲しいと頼んだら彫刻に命が吹き込まれたという話。
少し神の出番が少ない感じがしますが、この話、なんとなく今どきっぽいですよね。こういくアニメ作品があってもおかしくないというか…。
かの有名な是枝監督の作品で『空気人形』という映画があり、それも人形に命が吹き込まれるという設定でした。

そしてこの神話に対する中野さんの見解がおもしろいです。
"やはりピグマリオンは男性の夢のひとつと見なすのが一般的だろう。だからこそピグマリオンの熱い思いばかりが語られて、ガラテアがどう感じていたかはほとんど問題にされないのだ。
(中略)
女性はふつうこんな考え方はしない。10歳の可愛い少年をみつくろい、手間ひまかけて理想の青年に育てる、などリスクが高すぎる。そのくらいならすでに完成済みの男性を発見し、彼好みの女を演じた方が早いし、結婚してしまえばいくらでも夫を操縦できる、と思っている(のではないだようか、たぶん)。"

最後の結婚の件はしていないので分かりませんが確かに女性はピグマリオン的な願望は薄い気がします。女性漫画でも二次元からイケメンが出てくる設定ってあまり見かけないので。(それはそれで面白そうな気はしますが…)

ギリシャ神話編は旧約・新約聖書編に比べヌードの絵画が多かったです。昔の人は神話の絵を描いてもらうのにかこつけて家にヌードを飾っていたんですかね…。そうだとしたら人間って変わらない生き物なんだなぁと思えて少し笑えてきます。

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