新しい環境でバリューが出せずに悩んでいる場合の解決法

中途での転職など、新しい環境に入った時に自分がバリューが発揮できていない、と焦ったり悩んだりした経験はないでしょうか。

この種の問題については、人によって感じ方や対処法は様々だと思いますが、少なくとも僕自身はそういった状況に大きなストレスを抱えやすい性格です。また、度合いの強弱はあれど多くの人が似たような経験を持っている、またはこれからの人生で経験するのではないかと思います。

大事なことは自分に合った対処法のゴールデンルールを持っておくこと、そして同時に自分が落ち入りがちなアンチパターン、つまり良くない思考・行動の癖などを把握しておくことです。

この記事ではそういった、「新しい環境でまだ価値を発揮できずに焦っている」というシーンにおける対処方法を、僕自身のパターンを元に書いていきます。

僕と同じような性格の方はそのまま参考にしていただければ幸いですが、自分はそう言う経験はないな、という方は「少なくとも自分の中のパターンを持っておくことが肝要なのだな」くらいに理解して斜め読みいただければ幸いです。

自分の性格を理解する

僕自身は、下記のような条件の環境下ではパフォーマンスが大きく落ちることが分かっています。

・前提が理解できているか不安
・やっていることに意味があるのか自信がない
・周囲の人と信頼関係が築けていない
・必要な情報の全体像が把握できていない、また情報同士の結びつきが明確でない

4つを並列的に書きましたが、これらは実は相互に絡み合う構造を持っています。なぜこの条件下で自分がパフォーマンスが落ちるか、を詳細に説明するのも面白いのですが、ここは一旦置いておきます。

当然のことながら、このパフォーマンス発揮のブロッカーは個々人の性格や適正によって大きく異なるでしょう。重要なのは、自分のブロッカーがどのようなものであるかを正しく理解しておくことです。

正しいイシューの理解から、正しいソリューションの模索が始まります。

僕の場合

僕は、中途で株式会社メルカリに入社したとき一時的にこの状況に陥っていました。入社初期の1ヶ月ほどは自分の持つパフォーマンスが存分に発揮できてないという感覚に悩まされ、会社の居心地も、正直あまり良くは感じられていませんでした。

新しい環境に変わった直後にはベースとして精神がナーバスになっており、その上でパフォーマンスが十全に発揮できていないとストレスも溜まります。また、周囲から自分がどう見られているかも気になってしまいます。特にメルカリのように、プロフェッショナルで自立した社員が多い環境では尚更でした。

ここでは、そんな中で自分が取った解決法をいくつか紹介します。

出来ることをする

大したことがないかもしれないことでも、まずは自分にできることを見つけて取り組んでみることが大事だと思います。これは陳腐な言葉ですが、行動あるのみ、です。

例えば、入社して自分が知りたかった情報(例えば、各種DBのデータの仕様など)が社内でいろんな場所に散らばっていて、情報収集に苦労したとしましょう。

その場合、それは苦労ではなくチャンスです。
その情報を一つにまとめて、整理する、という作業に取り組むことが出来るからです。作業、という実際の行動は脳の不安を消してくれます。また、その作業によってあなたは社内で小さいながら貢献をしたことになります。

実は会社の中には、このように「すでに実務にどっぷり浸かっている人」にはできない = 新入りの時期だからこそ手を付けやすいような仕事が山ほど転がっています。まずはそういった仕事を見つけて、一生懸命に取り組んでみることがオススメです。

その作業を通して、自分の情報キャッチアップにもなり、作業興奮によって不安を軽減し、社内の情報整備に貢献した、という実績も作ることができます。

人間は、基本的に思考によって「不安」や「焦り」といったものを払拭できるようには設計されていません。一方で、行動することによってストレスレベルを減らすことが有効であることはよく知られています。どんな小さいことでも、今の自分にやれることを見つけて、行動あるのみ、ではないでしょうか。

アウトプットベースでインプットする


目標に変える
「出来ることをする」を通して多少の心の平穏を取り戻せたら、徐々に大きめの作業に挑戦してみましょう。ここで重要なのは「アウトプットを目標にする」ことです。

僕の場合、先述の通り「前提がわからない」「必要な情報の全体像が把握できていない」「また情報同士の結びつきが明確でない」といった状況に対して自分が脆弱であると書きました。

このとき、この状況を打破するために、有効なようで実は最も好ましくない方法は「頑張ってインプットをしに行く」ことです。確かに情報は必要です。しかし、社内に置かれた全ての「前提」や「情報の結びつき」を一方的なインプットで充足するのは、実のところ非常に困難を極める作業でアプローチであることを理解しましょう。

欲しい情報がダイレクトに整理されて存在している事はほぼなく、頑張ってインプットをしようとするほどに情報の波に溺れて疲弊してしまうでしょう。

重要なことは「適度なインプット」→ 「アウトプット」→ 「フィードバックインプット」の流れを作ることです。

「全力でインプットする」ではなく「適度なインプットからアウトプットを作る」ことを目標に置くことが重要です。

アウトプットこそが最も良質なインプットに繋がる
100%正確でなくてもよいので、なんらかの具体的なアウトプットを作りましょう。それによって、周囲から「こいつは今こういうことをしようとしているのか」と理解してもらえると同時に、フィードバックに寄るインプットが得やすくなります。

多くの人は「なにもない状況で適切な情報を与えてくれる」という都合のよい特性は備えていません。しかしその一方で、具体的に見えるアウトプットがあればそれに対して、何かとフィードバックをしたくなる生き物です。その特性を活かしましょう。

アウトプットの精度が低いうちは、寄せられるフィードバックはちょっとした文句だったり、指摘だったりするかもしれませんが、それも重要な情報です。少なくとも自分のアウトプットに対してのフィードバックは、「自分がまさに知りたいことに対するピンポイントな情報」です。逃さずに吸収するようにしましょう。

また、アウトプットがそれなりに形になっているものであれば、周囲が多少なりとも自分のことを認めてくれるようになります。これはあくまで副産物で、初期のうちは周囲が称賛するようなものを作ることを意識しすぎないほうが良いでしょう。ただ、同時に可能な範囲でクオリティは高める努力はするべきでしょう。あなたのことを知らない人にとって、そのアウトプットのみが唯一のあなたの名刺になります。

アウトプットとフィードバック、の具体イメージ

ひとくち「アウトプット」や「フィードバック」といってもいろいろなパターンがあると思います。なので、ここでは少し具体的イメージしやすいように、僕がメルカリでやっていたことをお話します。

僕の場合、「アウトプット」とは社内のドキュメントシステム(社内wikiやconfluence、いまだとnotionでしょうか)のことで、「フィードバック」とはそういったドキュメントに対するコメントや、Slackに投稿した際のリプライ等でした。

メルカリに入って最初の頃は、自分で適切なイシューを見つけて、勝手に考察をしたりちょっとした分析をしたり、と自分なりのアウトプットを綴ってそれをSlackに投稿したり、もちろん時にはそのアウトプットを元に直接他の社員と話したりしていました。

自分が知りたいことを直接誰かに聴く、よりも「自分的にはこうじゃないかと思うのだが」というアウトプットを作って、それを土台に情報収集をしていたことになります。この方が情報の吸収に関して効率的であることは前述のとおりです。

特に「それは既にやられているが、実はこっちのほうが問題で...」「これ、ずっと手を付けたかったところなんだよね」「これは着眼点は悪くないが、実はこういう事情でいまは...」などと言ったフィードバックが寄せられた場合、これらは値千金の情報と言えます。(そして、良いアウトプットをしていると概してこういった声が上がってきます)

これらはいわば社内の暗黙知の塊のようなもので、多くの場合、文書などでは表出していることが無い「温度感」「勘所」のようなものだからです。

社内の文書を漁るような情報収集では、100年経っても得られることが無い質のものと言えます。

アウトプットベースで関係構築する

自分のアウトプットに対してフィードバックがもらえたときに、その情報自体が非常に価値があるというのは疑いがないのですが、実はそれ以上に価値が高いのは「その人がフィードバックをくれたという事実」です。

その人は、
・あなたのやっていることに関する情報を持っている
・あなたのやっていることに興味がある

人物であるわけです。

また、あなたのアウトプットを通して小さいながらコミュニケーションが取れている状態です。新しい環境に入ったとき、周囲の人と関係を作っていくことはとても重要ですが、そこには意味のある優先順位が必要です。短期間に深い関係を築ける人数にはどうしても限りがありますし、あまりに多くの、かつ多様な角度のインプットを集中的に受けるとどうしても疲弊してしまいます。

最初のうちは、自分のアウトプットに対して強く反応してくれた人と深い関係を作ることにフォーカスするのも良いでしょう。その人たちとの関係ウィ深め、情報の交流をしていく中で新たなインプットや関係性が徐々に深まっていくこともよくあります。

3年ほど前に書いたnoteでも触れたのですが、メルカリにいたころも自分が書いたドキュメントを通して多くのメンバーと繋がることができました、という自分なりの成功体験があります。

気にしない

まず、新しい環境に入ると周りの人が異常に凄く見えてしまう時期があります。また、自分という新しい存在が値踏みされている、お手並み拝見といこうか、的な態度で周囲が見ているのではないか、と思ってしまうことがあります。

これらは、まったくないわけではないと思いますが、90%が錯覚か自意識過剰です。まず周囲の人は新入りの仕事ぶりにさほど強い興味は持っていないのが普通です。

ただ、これは僕の場合、さほどうまくは行きませんでした。
自分にあまり気にしないように言い聞かせれば一時的には焦りはなくなるのですが、それはまやかしのようなものでやはり本質的な解決にはちゃんと自分が納得するパフォーマンスを発揮するしか無いでしょう。

まとめ

「新しい環境で価値発揮できずに焦る問題」は多くの人がぶつかる問題ではないかと思いますが、自分なりの思考の癖と解決パターンを理解しておくことが重要です。

その中で、僕の場合は「とにかく拙くてもアウトプットを作ることに集中する」というのが一番のソリューションだと捉えて実践しています。

みなさんも自分なりの解決パターンを見つけてください。
自分はこうだよ!などあれば、コメントなどで教えていただけると幸いです。

この記事が悩めるあなた役に立ったり、あなたの周りの悩める人にそっと渡してあげられる記事になっていれば幸いです。

それではまた。


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