いる

そこに居ない人、というのが強烈に、猛烈に、そこに、居る。
居てほしくない人ほど、そこに漂う。
やはり忘れるには難易度が高く、スルースキルも持っておらず、あの人の面影だけでかすり傷が増える。本当は名前も聞きたくないほどトラウマなんだけど、そんなこと誰も知らないから、平気で他人の口から名前が出る。たまにわざと自分から名前を出してみる、愚痴なんか言ってみる。おちゃらけてみる。でも自分の口から出たその人の名前にゾッとする。聞かなきゃ良かった。
これから先、会わないので、あの人の印象も当時のまま止まっていて。一生アップデートされないのもキツい。でも、どこかで出会うには心臓がもたない。会ったら自分自身が壊れてしまいそうだから、会えない。きっと、向こうもそうであって欲しい。へっちゃらで生きていられたら、すごく悔しいな

生きていけば生きていくほど、あの人 とわたしが呼んでいる人たちは増えていく。最初はひとり、それがふたり。さんにん。そのうち、おばあちゃんになって、世界中の誰にも会えなくなっちゃったらどうしよう。かつて、大切にしたかった、大切にされたかった相手のこと、名前すら呼べなくなるのはものすごく寂しいことだったな。
もしも、その場所に、あの人が染みついてしまっていたら、わたしは離れざるを得ない。思い出も出来事も消せそうにないなら。
早く忘れちゃえばいいのにね。そうしたら、あの人のことフラッシュバックしているだけの時間を、
他の人のことを考える時間にあてられるのに。

みんなは、あの人のこと、どうしてる?

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