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あなたは伝説の『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレを知っているか ~一人の人間が百合に落ちるまで~

今日は昔話をしたい。

個々人がアカウントを持つ形式のSNSが浸透した昨今、あまり馴染みの無い方も多いと思うが、ネット上のやりとりといえば昔は『匿名掲示板サイト』『スレッド』と呼ばれるものが主流の形式の一つだった。

キャプチャ

↑こういうやつね(自作のイメージ図です)

また、創作物の発信という観点で言ってもpixivやTwitterなどのSNSの登場の影響は大きく、個人サイトを持つ方も以前に比べれば大きく減っているだろう。

今でこそTwitterなどで自由に百合の話が出来、同じ百合好きとも十分に交流が深められる時代になったが、そんなSNSが今より普及する以前、オタクの百合好きは交流の場がほとんど無く、そうした匿名掲示板サイトや個人サイトの掲示板などでちまちまとやりとりするしかなかった。

参考:ある成人レズビアンが個人的な記憶として記す「百合界隈の歴史」

これはそんな時代のある伝説のスレッド(=スレ)についての話だ。

『スレッド』とは

未だに『スレッド』というものにピンと来ていない方もいるかもしれないが、まず2(5)ちゃんねるのような匿名掲示板サイトにはそれぞれに「漫画」「テレビ」「スポーツ」といったカテゴリ分け(これは『板』と呼ばれ、基本的に勝手に追加や削除は出来ない)がされており、その中にさらに細分化されて特定のトピックについて語るための掲示板がユーザーによって自由に作られる。これを『スレッド』と呼ぶ。

・例:漫画板の「やがて君になるを語るスレ」

この『スレッド』は登録など無しに誰でも自由に書き込む(=発言を投稿する)ことが出来、基本的に匿名が推奨されることが多い。(まあそういう文化なのだ)  誰がどんな人物でその場にどれくらいいるのかはわからないが、匿名性の高さ故に自由に思ったことを発言出来る。匿名掲示板とはそういう場所である。(それだけに自演や嘘の情報なども多いため気をつけなければならないが)


さて、表題にもある『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレも、PINKちゃんねる(BBSPINK)という2ちゃんねるから派生した掲示板サイト内のスレッドの一つだ。名前から想像される通り成人向けの掲示板サイトであり、板やトピックもそれに準ずるものになっている。

ということはこのスレッドではらき☆すたの女の子でエッチな妄想が繰り広げられているのか?と思われるかもしれない。まあ一部は間違っていないのだが、実はこのスレッド、恐らく百合の歴史においても他に類を見ないであろうほどの「百合SSの大量投稿スレッド」になっていたのだ。(しかもエロパロスレなのに非エロのほうが多いという謎の現象になっていた)

実際私もTwitterで、このスレッドに常駐していた・投稿していたという百合好きの方を何人も見てきている。そして何を隠そう私自身もこのスレッドの住民であり、更にはまとめサイトの管理人だったのだ。というか権利は放棄したわけではないので今も一応そうだ。

もっと言うと、『らき☆すた』という作品は私が二次元オタクになった作品でもあり、かつ同時に百合のオタクになった作品でもある。それを手助けしてくれたのがこの『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレであり、私にとってはもはや育ての親のような場所なのだ。

今日はそんな伝説のスレッドについて、当時の雰囲気や思い出、らき☆すたについての語りも交えながら紹介していきたい。まあ老人の昔語りだと思ってゆるく聞いていただければ幸いだ。

『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレと私の出会い

まず『らき☆すた』については見たことはなくとも名前くらいは知っている方が多いだろう。原作は美水かがみ氏による4コマ漫画で、ゲーム情報誌『コンプティーク』において2004年から連載されている。そして2007年に放映されたアニメが爆発的ヒットを飛ばし、アニメ聖地である埼玉県の鷲宮神社ではキャラクターを使用した神輿が作られるなどの社会現象を巻き起こした。(尚、今でも毎年渡御が行われているようだ)

中毒性の高いセンセーショナルな楽曲やダンスが特徴的なOP映像は黄金期とも言われる2007年当時のニコニコ動画でランキング上位を何週にも渡って取り続け(まあ違法アップなのだが)、そういった目に見えるブームの力もあり、らき☆すたはまたたく間に超人気作品へと駆け上がっていった。

私もそんな例に漏れないうちの一人で、うっかり見てしまったOP映像でキャラクターの可愛さに一瞬で虜にされてしまい、そのまま流れ落ちるようにこの作品にどっぷりとハマることになった。というか私は上述の通りそれまでオタク的作品をほとんど通ってきておらず、そういったコンテンツは友達のオタクに布教されて読んだ『涼宮ハルヒ』シリーズぐらいなもので(これは普通に気に入った)、基本的にはどちらかと言えばあまり良い印象は持っていなかった側の人間だったのだが、人生何があるか分からないものである。らき☆すたがなければヤギ子はおらんかった。

さて、そんなほとんどオタクコンテンツを通ってこなかった私ではあるが、匿名掲示板サイト(2ちゃんねる)は利用していた。というのも趣味で音楽をよく聞いている関係で、アーティスト関連のスレッドをよく見ていたのだ。よって頭が「何か情報を知りたいときや語りたいときは匿名掲示板」という回路になっており、当時も「らき☆すたにハマった→じゃあ掲示板にスレッドがあるか見てみよう」という流れで2ちゃんねるを覗いたと思われる。(※当時はTwitterも出来たてで、まだ日本ではそこまで大きく普及していなかった時代である)

しかしながら、当時のアニメ板のらき☆すたスレの雰囲気は自分には合わなかった。話題作であったこともあるが、アニメはパロディネタを散りばめたりオリジナル要素の強い作風であったこともあり、いい意味でも悪い意味でも目立つ作品だったため、荒らしや粗を探す人間、ただ話題作を貶したいだけの人間などが入り乱れた無法地帯になっていたのだ。当然まともにファン的な語らいなど出来るはずもなく、私はすぐにアニメ板のらき☆すたスレを見なくなった。漫画板のほうはあまり覚えていないが、記憶にないということは同じような感じだったのだろう。

もっとどこか純粋にらき☆すたのファンが集まり、語れる場所はないのだろうか。そう思った私は関連スレを片っ端から見ていった。そして一つのスレッドにたどり着く。スレ番もきっちり覚えているが、BBSPINKの『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレのPart2だ。

私があまり二次元コンテンツに良い印象を持っていなかった理由として、「女の子がひどい目に合う系のエロ本がいっぱいある」という偏ったイメージを持っていた(周りにオタクの友達は居たので同人誌などの存在はなんとなく知っていた)ため、そういうものを嫌う私は「エロ系のスレかぁ…」とあまり期待はしていなかった。しかし、どこかにある安息の地を求め、扉を開いたのだ。

そんなスレッドの過去ログがこちら

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いやめちゃくちゃ懐かしいなオイ。


まず「昔の匿名掲示板のノリ」自体がこう、「うわっ」と思う方もいらっしゃるとは思うが、出身者としては古き良き?ものを感じてしまう。「GJ」「乙」とか久々に見た。地元の祖父母の家に帰ったときのような空気感である。

それはさておき、エロパロスレとは「エロパロ&文章創作板」に属し、漫画やラノベ、アニメやゲームなどの一般作品について、エロ妄想や萌え語り、そして小説(SS)の創作が投稿されるスレッドのことだ。(こう見ると、要素としてはオタクのTwitterみたいなものを感じなくもない) 

そしてエロパロ系のスレ全般に言えることだが、冒頭の注意書きからも分かる通り、ここはかなり「ローカルルール」がしっかりとしていた。「カプは自由」「過激な内容は断りを入れてから投稿する」など倫理的にも配慮がされており、とてもそれまで見てきたスレッドとは似ても似つかない気遣いの精神を感じた。また、>>1(スレッドを立ててくれた人)に対する感謝を見ても分かる通りかなり雰囲気も良く、期待していなかった反面まず初見から「おやおや?」と意表を突かれたことを覚えている。

実は当時からSS文化自体はちょっとだけ馴染みがあった。というのも『涼宮ハルヒ』シリーズを貸してくれたのと同じ友人からの布教でRPGの『テイルズオブ』シリーズも通っていたのだが、同シリーズは(男女メインの)カプ要素も若干入っており、同じく検索の過程で初めて二次創作に触れ「こういうのもあるのか」と少しだけ個人サイトやまとめサイトを見ていたことがあった。

ちなみにエターニアが好きでキルメルがお気に入りだったのだが(ヤギ子の口から男女カプの名前が出るなんて…)、流れでファンタジアのミント×アーチェのSSも読んだことがあり、それが私の明確に覚えている初めて触れた百合創作だった。多分このとき初めて「百合」という単語も知ったかもしれないが、この時点ではまだ二次元オタク的な気質は目覚めていなかったこともあり、百合にはハマらなかった。(らき☆すたに出会う1~2年前くらい) ただ「カプ要素」や「二次創作」という概念は頭に残っており、それがこのスレッドの内容を自然に受け入れられる下地になっていた。

よって私がこのスレを訪れた地点では、まだ百合のオタクではなかったのだ。『らき☆すた』は私にとっていわゆる「萌え系」に初めて触れた作品で、当初は単純にキャラクターの可愛さに惹かれていた。原作自体はフラットな目線で見ればそこまでカップリング要素の強いものではなかったし、そういった発想も当時の私にはほとんど無かったと思われる。

しかしながら、私はこのスレッドを見始め、そして毎日訪れるほどの住人になっていくと同時に、完全な百合のオタクへと変貌を遂げていくことになる。一体このスレッドの何がそうさせたのだろうか?そして、何故このスレッドは今でも語り継がれるほどの伝説を残しているのだろうか?

『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレでは何故百合創作が盛んだったか

まず、エロパロスレは前述の通り、エロ寄りの萌え語りやSSが投稿されるスレッドなのだが、らき☆すたの場合はそのほとんどが「百合SS」だった。理由としては複数考えられるが、まずらき☆すたは作中に男性キャラがほとんど登場しないことが大きな要因の一つだろう。今でこそ珍しくはないと思うが、らき☆すたは当時から徹底して(キャラと同年代の)男性キャラは排除されており、名前付きのキャラは登場人物達の父親ぐらいであった。(もちろん他にもそういった作品は無かったわけではないと思うが、詳しくはないので語らない)

しかしながらアニメでオリジナルの男性キャラは登場(ほぼ特定の一人のキャラとしか絡まないが)するし、まあ正直無から発生させることも出来るので、それらのキャラを代わりに使ってどうこうするいわゆる「俺目線」でのSSが投稿されてもおかしくはなさそうなのだが、実際はそうはならなかった。それは何故か。

もちろん推測の域は出ないが、理由の一つとして「キャラスレ」の存在があるだろう。キャラスレとは、「アニキャラ個別」板などに属するスレッドのことで、要は「キャラクター単体について語る」スレのことだ。通常の作品であればヒロイン格のキャラや特に人気があるキャラぐらいにしかスレッドは立たないが、大ブームを巻き起こしたらき☆すたでは主要キャラのほとんどにキャラスレが立っていた。よってキャラクター単体についての萌え語りや簡単な「俺目線」的な妄想は、ほぼそれぞれのキャラスレのほうに集まっていたと考えられる。ちなみに主人公であるこなたの父親にまでキャラスレが立っており、このことからも当時のらき☆すたの人気ぶりが伺える。

しかしながらそれだけでは「百合」がエロパロスレ内で主流になる直接的な理由にはならないだろう。では何故『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレでは百合SSの創作がこぞって行われるようになったのか。

『らき☆すた』という作品の特色

まず触れておきたいこととして、らき☆すたはメイン4~5人+α程度が登場人物としては主流の萌え系4コマ漫画としては、登場キャラクターが比較的多めだったということだ。

◆メインの登場人物(年次はゆたから入学時)
・3年生:こなた、かがみ、つかさ、みゆき、みさお、あやの
・2年生:こう、やまと
・1年生:ゆたか、みなみ、ひより、パティ
・先生:ななこ、ひかる、ふゆき
・親族系:ゆい、いのり、まつり
・その他:あきら、ひなた、ひかげ

と、知らない方はわけが分からないと思うが、ざっとこれだけの女性キャラクターがらき☆すたには登場していた。上記だけで21人である。もちろんスレではどのキャラクターについてもそれぞれしっかりと他キャラとの百合SSが書かれていたし、また、ここでは省いたが、キャラの母親についても百合SSは作られていた。

今でこそソーシャルゲームにより何十人規模のキャラの存在は珍しくはないが、「男性主人公」や「ハーレム主」のような、いわゆる女性キャラクターの好意が一点に向けられがちな人物が不在の作品において、百合作品というわけではないのにこれだけの女性の登場人物が動いていたというのは、恐らく当時にしては珍しかったのではないかと思われる。(男性キャラほぼ不在の作品で、だ。念の為)

しかしながら単に登場人物が多いだけであっても、まだSSが大量に作られる理由としては弱いだろう。私はそのさらなる理由に、「作品にいい具合に隙があった」ことが大きいと考えている。

例えば女児向けアニメの『アイカツ!』も百合系に限らず二次創作が多めのジャンルだが、これも作品における隙が上手く働いている結果であると思われる。魅力的なキャラクター達に対して、対象年齢もあってか描かれる一面やストーリーはわりとシンプルで、大人目線で見るともうちょっとここ深堀りしてほしい!と、少しわがままな思いを抱いてしまうこともある。そういった想像の余地は、自ずと二次創作を増やすことに繋がるのだろう。

らき☆すたの場合は登場人物たちの日常がショートショートのような形式で描かれる作品だっただけに、見方によっては作中のエピソードの前後を考えさせられるような創作のタネが多く散りばめられている作りになっていた。また(これもアイカツと同じ現象だが)、多くのキャラにエピソードが分散されることも要因の一つだろう。

加えて、アニメでは主人公であるこなたの死別してしまった母親が(誰にも見えないが)こなたの家に帰ってくるというエピソードも存在し、それが二次創作の閾値を下げていたことも特筆すべき点である。これによって多少のファンタジー要素のある創作もしてもいいのだという意識が受け手側に生まれ、結果創作の幅が広がっていたように思う。(実際、タイムスリップものやパラレルワールドものなどの人気シリーズも存在した)

よって、多彩なキャラクターや作品の隙間という、創作するにはうってつけのタネや土壌がらき☆すたという作品には存在していたのだ。

『らき☆すた』のカップリング要素について

そしてなんと言っても百合SSが流行った最も大きな要因として、「カップリング要素の存在」は避けて通れないだろう。前述のように原作自体はそこまでカプ要素は強くなかったのだが、アニメでは主人公であるこなたとその友人であるかがみのカップリング、通称『こなかが』がかなり分かりやすい形で押し出されていた。もちろん露骨に恋愛描写が描かれていたわけではないが、特にかがみのキャラが当時流行していたツンデレ風味に若干チューニングされており(原作でもそのいじりはあったもののそこまで描写は色濃くなく、この微妙なキャラ路線の変更には当時苦言を呈する原作ファンの方も居た)、男性キャラほぼ不在のらき☆すたにおいてはそれが主人公であるこなたに向けられたことにより、結果としてこなたとかがみのカップリング=『こなかが』がアニメにおいて爆誕した。

それを象徴するかのように、『らき☆すた』のアニメシリーズのキャラソンにおいては、かがみのキャラソンのB面がかなりのカップリングソングになっていたのだ。

柊かがみ(加藤英美里) - 100%?ナイナイナイ 歌詞 
http://www.kasi-time.com/item-16594.html

無題

歌詞の中の「宿題を教える」「グッズ買うの付き合う」というのは作中でかがみがこなたに対して行った描写である。また「クラスは別」というのも仲良しグループ(こなた、つかさ、みゆき)とクラスが別になってしまうというかがみの境遇から取られたものだが、その他の歌詞がこなたのことを歌いまくっているだけに、ここも暗に「こなたと」離れて寂しいと言っているようにも取れてしまう。(ここも原作ファン以下略)

オタクでだらしなくていつも手のかかる相手(こなた)の面倒を見ているツンデレキャラからいきなりこんなキャラソンがでてきたら皆さんはどう思うだろうか?ちなみにこの歌詞が出た当時私は百合好きの友人と一緒にいたのだが、情報を見た瞬間2人で狂乱したことを覚えている。

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この歌詞も百合のオタクから見たらまるで「友人への秘めたる想いを打ち明けられずにいる心境」のようである。うーん百合あるある。

そんなわけで、このキャラソンも手伝って『こなかが』は当時かなりの人気が出た。そしてニコニコ全盛期でもあったため、こなかがMADも多く作られた。

↑上記キャラソンを使ったMAD。いやMADて。(懐い)

尚、『こなかが』はアニキャラ個別板に「こなかがスレ」も立てられており、こういった点からも当時のこなかが人気が伺えるだろう。(ちなみにエロパロスレがわりと非エロも多く取り扱うスレだったので微妙に棲み分けが難しいところもあったが、恐らく反復横跳びしていた方も多かったと思われる)

そしてダメ押しとばかりに、当時発売したDSのゲームのパッケージがコレである。(左がかがみ、右がこなた)

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もはや何も言うまい。

また、らき☆すたのカプ要素はこの「こなかが」だけではなく、他にも多く存在している。

・みなみ×ゆたか(みなゆた)
 →病弱なゆたかにナイトのように寄り添うクールなみなみのカップリング。これもこなかがと同じくらい分かりやすくカップリング要素が存在した…というか、原作からここだけは明らかに百合を意識して描かれていた。ちなみにヤギ子の最推しである。

・かがみ×つかさ(かがつか)
 →双子の姉妹というある種最強カード。しっかりもののかがみが天然系のつかさをフォローする関係。エピソードも多く、ここも当然人気があった。ちなみに、アニメでつかさの黒キャラ属性(ここも原作ファン以下略)が付与されたこともあり、こな×かがを見てヤンデレ化するつかさといった創作も多く存在した

・パティ×ひより(パティひよ)
 →陰オタク腐女子のひよりと、陽オタク腐女子の留学生のパティのカップリング。オトメの帝国か?

・ひかる×ふゆき(ひかふゆ)
 →けだるげズボラ生物教師(白衣・禁煙パイポ付き)のひかるとおっとり養護教諭(お金持ちのお嬢様)のふゆきという設定だけで飯が食えるカップリング。男性教諭から人気があるふゆきだが、ひかるがいつもそばにいるため寄りつけないというこれまた美味しい設定もある。登場シーンが少ないのが唯一の欠点。多分今らき☆すたが放映してたらヤギ子が最推ししてたかもしれない。

その他、担任と生徒だが裏ではネトゲ友達のこなた×ななこや、かがみとずっと同じクラスだがこなた達に親友ポジションを奪われ何かと報われないことの多いみさお(かがみ←みさお)など、ここには紹介しきれないほどかなりバラエティ豊かなカップリングがらき☆すたには多数存在している。もちろんマイナーカップリングも数多く存在し、スレの後期では「このキャラとこのキャラの組み合わせまだ考えられてないから挑戦してみました」などといった実験的発想のもとSSが投稿されることもあった。女女マッドサイエンティストかよ。

こうしてキャラクターの多さと、アニメをきっかけとした百合方向への後押しがいい具合に働き、スレでは連日多数のカップリングによる多数の創作が投稿されるようになっていった。

『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレの思い出

まず、このスレではとにかく多数のSSが投稿された。保管庫の情報によると2138作品は少なくとも投稿されているようだ。もはやよく分からないレベルだが、最後のスレ(Part 64)が2011年7月であることを考えると4年強でこの数字なので、毎日1~2本は必ずSSが投稿されていた計算になる。実際はスレ終盤はさすがに失速していたことを考えると、体感で毎日少なくとも3~4本、多い時で10本は投稿されていたように思う。

こうなってくるとスレを追うのがかなり大変だった記憶がある。スレッドは1000本の投稿があるか、もしくはスレ内テキストの総容量が規定値(500KB)を超えればそれ以上書き込めなくなるが、早いときは3日程度でスレが埋まっていた。単純計算で一日333本もの書き込みもしくは投稿、それもトータル何万字レベルという形なので、SS投稿系のスレとしてはまあとんでもなく賑わっていたのだ。そんなペースで投稿されていたので、すぐにまとめサイト(保管庫)はSSで埋め尽くされることになる。

『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレ保管庫

ちなみにヤギ子は保管庫の管理人とは言ったものの、実は二代目管理人である。当時初代管理人の方が事情で更新が出来なくなるとのことで、それなら、と私が手を上げたのだ。とは言っても基本的に誰でも自由に編集出来る保管庫だったので、私一人が全ての作業をするわけではなかったのだが、大好きならき☆すたの創作を一つ一つ保管庫へと追加していくことや、見やすいレイアウト、アクセシビリティの良さを考えたサイト構築を考えることは、地道ながら全く苦ではなかったことを覚えている。

そして、なんと言ってもとても名作が多かった。今でも語り継がれているこなかがSSの長期シリーズ『4seasons』は、こなたに恋心を抱いていることに気づいたかがみを題材に、二人の関係や丁寧な心理描写をタイトル通り季節を巡って綴っていく物語で、完結の際は多数の感想や激励の言葉がスレに飛び交っていた。

個人的に思い出深いのはタイムスリップものの『人として袖が触れている』という作品だ。らき☆すた本編同様さまざまなパロディなどを交えつつ(当時の自分にはほぼ分からなかったが)、カップリング要素も多彩に、そして引き込まれる物語の展開と、私が夢中になって追いかけた作品の一つだった。ギャクやシリアス、エロに純愛、友情物語や感動モノなど、そういった多種多様な作品があったことも、このスレが人気を博した理由の一つだったように思う。

余談だが当時mixi(じ、時代~~)でスレの作者の方や住民の方を見かけてコンタクトを取り、オフで遊んだり、冬コミのときに一緒に年越ししたりしたことも良い思い出だ。インターネットで知り合った方と会うようになったのもらき☆すたがきっかけだった。自分にとって本当にいろいろなことを教えてくれた作品だと思う。紛れもなくらき☆すたが私の人生を変えたのだ。

そうして毎日らき☆すたの百合SSを読み、自身もちょこっとだけ創作してみたりしているうちに、段々と百合ジャンルそのものにも興味が出てきた私は、次に『マリア様がみてる』や『ストライクウィッチーズ』、『ひだまりスケッチ』といった作品にハマっていくことになり、そこから百合姫コミックを嗜みつつ『けいおん!』『咲-Saki-』などを経由した後、『まどマギ』で杏さやに打ちのめされ…と、分かりやすく百合のオタクとしての道を歩んでいくことになる。その全ての始まりが『らき☆すた』であり、『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレなのだ。私にとってこれらがいかに大きな存在か、少しだけでも分かっていただけるのではないかと思う。

終わりに

そんな他に類を見ないほどの盛り上がりを見せた『らき☆すたの女の子でエロパロ』スレは、私と同様多くの百合好きを生み出すきっかけになったのか、前述の通り今もこのスレ出身の百合好きの方を何人も見かけることが出来る。ちなみに、同様に百合SSが流行った『ストライクウィッチーズ』や『けいおん!』といった人気作品でも、SSの投稿系スレの番号は前者でPart 36、後者でPart 27で止まっているようなので、Part 64まで続いたらき☆すたがいかに規格外だったのかが分かるだろう。(もちろんこの間pixivやTwitterなどのSNSが浸透していったということもあるが) そういった異様なまでの盛り上がりが、このスレッドを伝説足らしめている理由の一つである。

最後になるが、私にとってこの作品やスレッドが特別なものであるように、きっと多くの方にも同じように思い出深い作品や、心の故郷になっているような特別な場所があるのではないかと思う。もしくは今、新しく何かのコンテンツで百合に目覚めた方が、10年ほど経った後に私のようにこうして当時に思いを馳せ、それを感慨と共に誰かに伝えることがあるとしたら、それはまた素敵なことではないかと思う。そうしてきっと私もその頃には、もっとたくさんの作品やコンテンツを愛し、今よりももっと深い百合のオタクになっていることだろう。

「年を取る」とか「年月を重ねる」ということは、マイナスに捉える方も多いのかもしれないが、私は全くそうは思わない。年月を重ねなければ分からないことも、出来ないこともたくさんあるのだ。こうして何かを懐かしむ気持ちや、年々大切なものが増えていくことを、私はいつまでも大事にしたいと思う。

貴方にとって、そういったものは何だろうか?情報やコンテンツが目まぐるしく流れていく今、一度立ち止まって考えてみるのも面白いかもしれない。


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