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第1880回 カモの何が不思議なのか

https://www.ac-illust.com/より引用のつがいのカモのイラスト

   タイトルの「何がカモの不思議なのか」というのは、私の好きなモズの「速贄」みたいに謎めいたもねではないのかもしれませんが『カモ』も不思議なことがいっぱいあります。『カモ』自体も、「ガン」の仲間も、また「ハクチョウ」も『カモ』の仲間でありました。また「カモ」の仲間でも陸ガモや海ガモといった細分化もされ、種類の多さも目を惹くものがあります。その仲間の「カリ」や「ハクチョウ」を除いた陸ガモと海ガモを合わせた「カモ」の仲間の不思議なことです。

②-1.http://www.birdfan.net/2017/02/17/50140/より引用のつがいのオシドリ(左がオス、右がメス共に体長約45㌢)

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②-2.https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=&link_num=24358より引用のエクリプス中のオスのオシドリ

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   あまり野鳥のことをご存知でない方に、②-1.の写真をご覧になられた方は「ああ、これが鴛鴦夫婦といわれるもとのつがいのオシドリか」と思われ「やはり、オスが派手な出立ちで、メスはやはり地味な目立たない」のだなと思われたかと私は思います。そして②-2.の写真をご覧になられたら「メスのオシドリ」と思われるかもしれません。この写真は『エクリプス』中のオスのオシドリです。地味な目立たないメスの様になっています。

②-3.Twitterより引用のスズメの換羽

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   エクリプス(Eclipse)とは、直訳致しますと、日食や月食のことを指します。『光を失う』ことから、エクリプスと呼びます。北半球の『カモ』のオスだけでなく、タイヨウチョウ、サンショウクイ科や、ハタオリドリ科などの一部のオスにも見られる特殊な羽衣です。一般の鳥の冬羽(非繁殖羽)に相当致します。カモの成鳥オスは繁殖期の終わりに、全身の換羽で、飛行に必要な翼や尾の羽がいっぺんに(三日間ほどで)抜け、一時的に20日間ほど飛べなくなります。そこで、メスの様な地味な羽に変えて地味にし、外敵の眼を逸らします。

③-1.https://sigma-nature-vlog.blogspot.com/2020/06/1_30.html?m=1より引用のメスを囲むオスのオナガガモたち

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③-2.https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_mo_diary_detail&target_c_diary_id=275851より引用のマガモの求愛

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   カモの求愛は③-1.の写真のように「囲み追い」という行為を行い、複数のオスがメスを囲みます。「水はね鳴き」はクチバシで水を跳ね飛ばして鳴き、「反り縮み」は上体を反らし、「下げ上げ」は体を上下させ、「交尾前のポンプ」は
向かい合い、水を吐き出し、③-2.のようにメスは姿勢を低くして、オスがメスに近づき、並ぶび交尾。メスは殆ど水中に沈みます。オスのホオジロガモの求愛では、反り返り行動の平均時間は1.29秒。他の種でも1.13~1.45秒が95%らしいです。

③-3.http://www3.famille.ne.jp/~ochi/bird/kogamo-1.htmlより引用のオスのコガモのげっぷ行動

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   ③-3.の様子はげっぷ動作と呼ばれるディスプレィで「カモ」の仲間では写真のコガモトモエガモシマアジでは見られますが、「ガン」の仲間では見られません。従ってこのグループが共通の祖先から分岐した後に、進化した行動だと考えられます。「受精可能期間」は巣の作り始めから、最後の一卵を産む前日をいいます。この期間によく交尾が行われます。オスはこの期間メスに付き纏い他のオスから防衛します。受精可能期間が過ぎるとオスはメスから離れ、子育てはメスだけ。

④-1a.http://www.birdfan.net/2020/02/07/76860/より引用のつがいのオナガガモ(奥がオス体長約75㌢、手前がメス体長約53㌢)

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④-1b.http://biwakoya.livedoor.blog/archives/14274415.htmlより引用のメスのオナガガモの老齢雄化現象

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④-2.https://www.takaokakojyozoo.jp/2018/10/14/post-679/より引用のメスのオシドリの老齢雄化

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④-3a.http://www.birdfan.net/2015/05/15/34991/より引用の左端がオスのキジ(体長約80㌢)、他二羽がメス(体長約60㌢)

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④-3.http://nakigoe.jp/nakigoe/2017/1710/report02.htmlより引用の高齢のためオス化したキジのメス

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   「カモ」には雄化個体したものがいます。上の写真の④-1a.や-1b.のオナガガモマガモコガモ、宝塚スターのような④-2.の写真のメスのオシドリなどで知られていますメスの老齢雄化現はメスがオスに似た羽色、オスのように長い尾羽になります。しかし、全体に色が薄く、脇腹の縞模様が太いです。年齢を重ねてホルモンバランスを崩したのが原因かも知れず、反対に、オスが雌化した例は観察されていません。このメス老齢雄化現象は「カモ」だけでなく、④-3a.-3b.のキジでも。

⑤-1.https://db3.bird-research.jp/news/201908-no4/より引用のヒナまぜにあったカルガモ(体長約61㌢)のメス

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⑤-2.https://www.google.co.jp/amp/s/gendai.ismedia.jp/articles/amp/65605より引用のヒナまぜに合いそうになって激怒するオシドリ(体長約45㌢)のお母さん

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   ヒナまぜという「カモ」独特な行動があります。それはケワタガモ類、ツクシガモ類、コオリガモ、アイサ類、アラナミキンクロアメリカオシシジュウカラガンや、⑤-1.のカルガモ、⑤-2.のオシドリで知られています。巣立ったヒナを連れて泳いでいる家族たちが出会い、一時的にヒナが別の親についていってしまうことをいいます。
親鳥は気にせず、自分の子と同様に扱うといいますが、⑤-2.の写真のオシドリの場合を見る限りは皆んなが皆んなそうではないようです。しかし、何羽かがついて来ましたらそのままみたいです。

⑤-3.http://opipo.blog.fc2.com/blog-category-200.htmlより引用のホンケワタガモ(体長約53〜60㌢)のヒナのいる家族に寄り添うほかのメス

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 ⑤-4.https://switch-news.com/nature/post-31397/より引用のアメリカオオコノハズクの木箱営巣に托卵されたアメリカオシドリのヒナが一緒に顔をだす

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親鳥が餌を与えるわけではなく、親鳥の負担は増えません。カワアイサの場合で76羽というヒナを連れていたという記録があるようです。これは反対に薄めの戦術らしく、多くのヒナを獲得することで、敵に襲われても自分のヒナがやられる確立を低めようとしている。危険分散のためでもあり、自分の連れているヒナが全滅しても、他の親に預けた自分のヒナが生き残り、種の保存にあたります。おばさん行動というのがあり、もともとホンケワタガモは、メスとヒナは数家族が合流することがあり、他のメスが連れているメスに付いていき、捕食者からヒナを防衛することがあります。それは過去にヒナを失ったメスや繁殖をしなかったメスが行います。また、托卵はカッコウホトトギスなどだけでなく、カモ科では比較的多く見られます。⑤-4.の写真はアメリカオオコノハズクに托卵して育ったアメリカオシのヒナです。
日本の「カモ」では特にハジロ類に多い様です。

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