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第792回 ミヤコドリ

①群れているミヤコドリ(体長約45㌢)

   ミヤコドリという名前を聞くと、古い人間な私なんかは京の都によく現れた渡鳥なんだろうなと想像してしまいます。漢字表記も「都鳥」なのですからぴったりと当てはまると考えます。①の写真のように群れているのだから、きっと冬鳥なんでしょうと思って調べてみたらやっぱり冬鳥もしくは旅鳥と明記されていました。でも英名は"Eurasian Oystercatche"と「アジアの牡蠣喰い鳥」となります。確かに二枚貝を食べる習性に由来した名前で、他に蟹やゴカイも食べます。

②https://ja.m.wikipedia.org/wiki/伊勢物語より引用の在原業平の伊勢物語

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   ミヤコドリを日本で有名にしたのは、大伴家持が、万葉集で都鳥が詠まれ、また在原業平によって、伊勢物語で都鳥が詠まれました。他にも古今和歌集や今昔物語にも登場します。⑴古今和歌集→『白き鳥の はしと足と赤き 川のほとりに遊びけり』⑵伊勢物語→『しろき鳥はしとあしとのあかき、しきのおほきさなる 水のうへにあそひつつをくふ』⑶今昔物語→水ノ上ニ 鴫ノ大キサ有ル 白キ鳥ノ 嘴ト足トハ赤キ 遊ツツ魚ヲ食フ』身体が白い?でもクチバシと脚は赤い。

③https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ミヤコドリより引用のミヤコドリの分布図

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   何が引っかかるのかというと、そのあとの伊勢物語に『白き鳥の嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ魚をくふ京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず』とあり、ミヤコドリは二枚貝や蟹、ゴカイなどの節足動物は食べますが、魚は食しません。かつて日本では旅鳥または冬鳥として主に九州に渡来していたとあります。北欧、中央アジア、沿海州、カムチャツカ半島などで繁殖し、西欧、アフリカ西岸、中東、中国南部、日本にかけての海岸で越冬します。

④https://www.abysse.co.jp/flags/europe/ireland/より引用のアイルランドの国旗

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   聞くところに寄れば、ミヤコドリはアイルランドの国鳥に指定されています。また日本では少ないが、世界的に広く分布しています。チドリ科と違い、クチバシが長く、縦に扁平して三角形の断面を持ち、丈夫な構造をしています。ややこしいことに個体によりクチバシの形状が異なります。
ハンマー型はクチバシの先が太く、貝を叩き壊して食べます。突き刺し型のクチバシの先は太くなく、貝の隙間に嘴を入れて、殻を閉じる貝柱を切断し、中の貝の身を食すのが、Oystercatche。

ユリカモメ(体長約40㌢、左端は夏羽の個体)

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   上のような疑問があり、証拠の写真がない世の中で書物が一番の手がかりでした。⑤の写真はユリカモメです。身体は白いし、脚とクチバシは赤色です。上記の文章に当てはまります。ミヤコドリは白くないからです。しかし、旅の順路をたどれば季節は夏です。伊勢物語に出てくる主人公は隅田川に七月の始めに到着、当然ユリカモメは冬鳥で北に帰っていないはずです。いても頭部が黒くて、伊勢物語の表現には当てはまらないという意見もあり、やっぱり決着はつきません。


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