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第870回 『スズメ』も隅々まで調べてみよう

①https://amanaimages.com/info/infoRM.aspx?SearchKey=22276006864より引用のスズメのイラスト

   本当にどんな国にも日本に住んでいるような『スズメ』はいます。日本での『スズメ』の定義は尾の長いものを「鳥」、尾の短いものを「隹」と書き分けました。『スズメ』は小さくて尾が短い鳥を指します。『スズメ』は人が住まない場所にはいません。人家の密度と『スズメ』の個体数に正の相関があります。人家が二十軒以上ないと巣を作りません。なぜなら『スズメ』は二十つがい集まらないと繁殖できないのです。また北極や南極にはいませんし、何故かインドにもいません。

②身近なスズメ(体長約15㌢)

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   ②の写真は日本のスズメです。スズメは留鳥と言われていますが「成鳥」の大部分は留鳥で、小さな群れ、建物などをねぐらとします。しかし、一部の「成鳥」は一定地域に留まらず、都市部と農村部を繁殖と越冬のために移動し、大きな群れを形成し、都市の街路樹などをねぐらにします。親の縄張を追い出された「若鳥」は群れで放浪し、出生地か300km以上の移動が確認されています。
「成鳥」にも100km以上移動する個体が知られています。スズメなのに『旅ガラス』かも。

③もうひとつの「スズメ」であるニュウナイスズメ(体長約14㌢)

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   スズメはアフリカで発生、人の移動と共に地中海地方に進出し、農耕文化の伝播に伴いユーラシア大陸に広がり種分化しました。日本には稲の伝播に伴い大陸からやって来ました。ヨーロッパではスズメが先に住み着き、後から来たイエスズメにより森に追いやられました。ニュナイスズメは日本ではスズメより先に生息していましたが、身体の大きなスズメに追いやられました。分布はスズメとは100%近く重なるのに、イエスズメとは殆ど重ならないので、争いがなかったと思います。

④https://jackviolin1945.blog.fc2.com/blog-entry-1258.htmlより引用のイエスズメ(左側がオス、右側がメス、共に体長約16㌢)のつがい

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   三種の『スズメ』の中で一番身体の大きなイエスズメは、エジプトから麦作文化と共に中央アジア、ヨーロッパへ広がり、シベリア開発に伴い東進しました。このイエスズメも渡る個体がいて、1990年に北海道の利尻島でオスと若鳥が確認されたらしいです。スズメより低い声で「チーップ、チシッ」と鳴きます。クチバシはスズメと同様で成長は黒、若鳥は黄色です。『スズメ』の世界から若鳥になってもクチバシが黄色く独り立ちできないことを「クチバシが黄色い」と評します。

⑤https://zukan.com/jbirds/question/3979より引用のスズメニュウナイスズメの雌雄の色の違い(左側のスズメは雌雄同色、真ん中がニュウナイスズメのオス、右側がメス)

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   営巣形態は開放営巣と隙間営巣があり、開けた樹上に営巣するのは、熱帯アフリカの『スズメ』に多く、隙間に営巣するのは日本のスズメです。いずれの営巣形態でも『スズメ』はお碗型の巣を作ります。隙間を利用しても尚且つお碗型の巣を作るのは、隙間営巣の習性は最近獲得したものであり、開放営巣が本来の営巣形態であることを示します。つまりスズメは日本での環境に応じて、営巣の場所だけは民家の屋根裏と戸袋なんかにしましたが、本能的には樹上生活だということです。

⑥https://ebird.org/species/gyhspa1?siteLanguage=jaより引用の日本のスズメに一番近いハイガシラスズメ(体長約15㌢)

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   ヨーロッパにいたスズメはエジプトから来たイエスズメに追い出され、日本にたどり着いて本来なら日本の『スズメ』であったニュウナイスズメを森林へと追いやり「雀のお宿(舌切り雀)」の主人公になりました。同じように見えるこの三種の『スズメ』はスズメだけが雌雄同色です。アフリカから稲作と一緒にやってきた今では日本のスズメはアフリカ大陸中部から南部に生息するハイガシラスズメが、日本のスズメに最も近い種です。雌雄同色なのはスズメハイガシラスズメだけです。

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