第704回 なぜフクロウとカモのヒナがいっしょに?
①https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/smart/news/genre_life.shtml?bn=New&P=14&M=10&ST=newsより引用の左側ヒガシアメリカオオコノハズクと右側アメリカオシのヒナ
①の写真をご覧になって思われることは巣箱の中からフクロウとカモのヒナが仲良く外に出てくるんだなあと思われることだと思います。昨今はペットブームで、犬と猫が仲良く寝ていたり、動物園で猪のウリ坊の背中に子猿がしがみついていたり、人を介すると本当の自分の親に育ててもらっていないので、自然界なら睨み合って殺し合いをするようなこの猛禽類のコノハズクとカモのヒナなんて、いつフクロウがお腹を空かして、このカモのヒナが食べられても不思議ではないです。
②https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/041800234/?SS=imgview_smart&FD=-223638920より引用のヒガシアメリカオオコノハズク(体長約20〜25㌢)
この②の写真のフクロウはヒガシアメリカオオコノハズクです。長い名前なので、漢字表記にしてみても「東亜米利加大木葉木菟」と漢字を十字も使います。この写真でヒガシアメリカオオコノハズクは樹木に擬態して、天敵から身を隠しています。猛禽類としては小さい方ですが、それでも食性は、主に昆虫類、その他小さな齧歯類や鳥類などを捕食します。こんな小さなカモのヒナなんて、このフクロウにとっては、柔らかくて美味しいひとつの餌にすぎない、危険な関係なのです。
③https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/041800234/?SS=imgview_smart&FD=-223638920より引用のアメリカオシのヒナ
そしてこの小さなカモのヒナはアメリカオシといいます。アメリカオシはやはり別名をアメリカオシドリといってオシドリの仲間です。日本固有に近いオシドリはカモの仲間にしては珍しく、留鳥で、繁殖期にはオシドリ同様水辺近くの樹洞に営巣します。また、人間の設置した巣箱もよく利用するといいます。アメリカオシとオシドリの違うところは、アメリカオシは特定のメスと番いを保ちますが、オシドリはオスが集まってディスプレイし合い、特定のメスを対象としません。
④https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/photo/14/1497/?ST=m_wallpaperより引用より引用のヒガシアメリカオオコノハズクのヒナ
ヒガシアメリカオオコノハズクは擬態の達人です。この小型猛禽類が②の写真のように、本気で身を隠してしまったら、見つけるのはなかなか難しいみたいです。水生生物を捕らえる際は、水深10cmまでの浅瀬なら、水中に入り水辺の近くにある木の枝や岸辺から、水中にピョンと飛び込み、魚やオタマジャクシを足で上手に捕まえます。また空での狩りも飛びながらクチバシで上手に獲物を捕獲し、空中でホバリングして隠れた獲物を翼の一撃で追い出して捕獲します。
⑤http://gomangoku.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-e1e1.htmlより引用のアメリカオシ(左がメス体長約47㌢、右がオス体長約54㌢)のつがい
ではなぜ、ヒガシアメリカオオコノハズクの巣箱の中にアメリカオシのヒナがいるのでしょう。いまわかっていることは猛禽類のフクロウに、この⑤の写真のアメリカオシは一夫一妻の真面目なカモなのにって思ってしまいます。それはカッコウの仲間が行う「托卵」なのです。アメリカオシもこの托卵の習性を持っており、そのためフクロウの巣に自らの卵を産み付け、このようなことが起きてしまったとみられています。このアメリカオシはかなりの早さで独り立ちします。