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第950回 モーフィング翼

①https://fabcross.jp/news/2020/20200301_pigeonbot.htmlより引用のハトの羽を使ったモーフィング翼の飛行機の模型

   本物のハトの羽を使ったバイオハイブリッド翼を組んだ鳥のように飛ぶ飛行ロボッ「PigeonBot」が①の写真です。これはハトをモデルとして、40枚の本物の羽を用い、翼を変形させて飛ぶモーフィングと呼ぶ鳥の自然に飛行する翼の原理の応用です。今までは、鳥の翼の変形をロボットで具体化するのは非常に難しく、これまでの研究は自由度を制御するという方向性が主流でしたが、鳥のように変形させるには至っていませんでした。ドバトの翼の屈曲と伸展の運動学を測定しました。

②http://nature-sr.com/index.php?Page=11&Item=106より引用のモーフィング翼を使った飛行機

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   モーフィングは魚の鱗をヒントに、翼全体の形を変える仕組みについて研究で、鱗のように分割された板を、少しずつ重なるように並べて「面」で翼をつくり、さらに隣り合う鱗が互いにスライドするような構造にする開発に乗り出しています。
翼の内側には、鱗と繋がった形状記憶合金の骨格があり、これらが「腱」のように伸び縮みすることで表面の鱗を動かす仕組みです。鳥のように一瞬にして形が変化する翼を「モーフィング翼」といいます。モーフィング翼は、飛行速度と航続時間に応じて翼の形を変えられる、新しい飛行機の翼として役立てることができます。

③http://nature-sr.com/index.php?Page=11&Item=106より引用の基になった鳥の自然な飛行中の翼の形

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   翼を広げて空を舞う鳥を見かけたら、翼の形によく注目して見てください。彼らの翼が、いつも広げられたままの状態ではない事に気づくと思います。滑空している時には、風をたくさん受けられるように翼を横に大きく広げています。飛び立つ時や着地したりする時には、翼を立ててばさばさと羽ばたきます。また獲物を狙って急降下する時には、翼をすぼめて面積を小さくし、空気抵抗が小さくなるようにしています。このように、鳥は飛んでいる時の状況に応じて、絶えず翼の向きや形、幅、面積を細かく微調整することで、もっとも効率良い飛び方ができるようしているのです。

④http://proposal.ducr.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/ccr_usr/detail_image.cgi?num=6709&fignum=1より引用のモーフィング翼の概念を示すイラスト

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   この制御原理をロボットで再現するために、本物の羽を用いたバイオハイブリッドのモーフィング翼を開発しました。その翼は42の自由度を持ち、四つのサーボ作動式の人工手首と人工指関節を介して、伸縮自在に接続された40枚の羽の位置を制御します。飛行試験では、空気力学的な負荷が加えられた状態で、柔らかい羽毛でできた翼が素早く、丈夫に変形することが実証され、人工手首と人工指関節の動きで、向きを変える挙動を開始できると分かりました。これは鳥は指だけで操縦しているという可能性を示唆したことになります。

⑤http://www.aero.jaxa.jp/research/basic/structure-composite/news200327.htmlより引用のモーフィング翼への施工

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   NASAでも同様の実験や試行錯誤が繰り返されています。実証実験により、静かに飛ぶ種類を除く鳥類全体で、かぎ状の微細構造が羽を固定することが分かりました。特徴的な微細構造が「指向性ベルクロ」を形成し、アンダーラップした羽の上の何千もの葉状の繊毛が、オーバーラップした羽のかぎ状の羽枝でロックして隙間を防いでいます。これにより、モーフィング翼は乱気流に対しても抵抗できる強度を保ちつつ、羽を屈曲させる際にはロックが自動的に解除され、剥がれる際にベルクロのような音がしますが、フクロウのようなサイレントハンターの羽は、この構造がないことも分かった。今後が楽しみな研究分野です。

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