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第771回 もう一度ウグイス(9回目)

①http://www.worldfolksong.com/sp/calendar/japan/ume-uguisu.htmlより引用の『梅に鶯』

   第755回に「いろんな角度から見たウグイス」で『梅に鶯』をこれは『梅に目白』みたいなことを語りましたら、職場の歴史好きな同僚から、「その考え方は風情がない」と言われてしまいました。なぜ日本画や花札にもなっている『梅に鶯』なのかを勉強しなさいとまで言われて、調べてみました。早春の二月半ばからウグイスの別名を春告鳥、報春鳥といわれるほど初鳴きを行います。ウグイスの主食は虫などの動物食です。その時期に花を咲かせ、蛾の幼虫は梅の木にいます。

②https://meziro-bird.com/archives/16より引用の『梅に目白』

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   それ故に①の写真のように、あまり見ることは少ないですが『梅に鶯』の場合もあり得るわけです。しかしどうもウグイスは梅をそれほど好きというわけではないらしいです。初鳴きのころ咲いている花といえば梅ぐらいしかないというのが実情なので、またその花びらや葉っぱを食べにいわゆる毛虫や青虫が動きだします。もっと以前の日本絵画には『竹に鶯』という取り合わせもあったみたいです。普段から藪中に生息しているウグイスですからそれが当たり前なのかもしれません。

③https://kotori-pastry.com/uguisu-meziro-toritigai/1733/より引用の鶯色とメジロのオリーブグリーンの色彩の違い(左が鶯色、右がオリーブグリーン)

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   ③の鶯色という色があり、私たちはすぐに鶯餅のあの鮮やかな緑色を思い出して、ウグイスを思い浮かべます。②の写真にもあるように私たちにとって『梅に鶯』より『梅にメジロ』の方が普段から春になると、眼にする光景なのです。また日頃から眼にする鶯餅のあの鮮やかな緑色も鶯餅からの思いからこの色が『鶯色』と思い込んでしまったに違いありません。『鶯色』を調べると辞書には「説明鶯色とは灰色がかった緑褐色を言う」と書かれていて、決して鮮やかではないのです。

④-1.https://kotori-pastry.com/turu-matu-toritigai/592/より引用の『松に鶴』のイラスト

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④-2.https://kotori-pastry.com/turu-matu-toritigai/592/より引用のツルのタンチョウコウノトリの趾(あしゆび)の違い

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   『梅に鶯』に似たような例えとしては『牡丹に唐獅子』『竹に虎』『紅葉に鹿』『柳に燕』『松に鶴』などの組み合わせがあります。これらは自然界において実際によく観察される組み合わせではなく、あくまでも詩歌や絵画において、良い組み合わせの風情なのです。④-1.で例えるならば④-2.のような後ろ指が上に付いて木の枝に止まれない鶴が松の枝にとまるなんて『梅に鶯』所の騒ぎではありません。しかしこの組み合わせが『鶴に松』も正月には縁起の良い風情があります。

⑤http://news.philip-collegering.com/?eid=2370より引用のウグイス(体長約14〜16㌢)とメジロ(体長約12㌢)の比較

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   確かに、実際に梅の木を見ると、ウグイスよりメジロをよく見かけます。藪の中によくいて遠くに澄み渡る声でさえずるウグイス。姿をあまり見たことがないにしろ、この⑤の比較写真を見る限り見間違いはないのかもしれません。あくまでも『梅に鶯』は、美しい声で早春を告げるウグイスと、美しい花で春の訪れを知らせる梅の木を、詩歌や絵画の題材として抱き合わせ、優美で絵になる素晴らしい組み合わせだ、ということを表した美しい風情の一例にすぎないのでしょう。



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