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第1883回 アトリって

①https://www.ac-illust.com/main/search_result.php?word=%E6%AD%A2%E3%81%BE%E3%82%8B%E6%B0%B4%E5%BD%A9より引用のアトリの仲間のイラスト

   『アトリ』の仲間の鳥は世界に120種類余りいまして、狭い意味での「アトリ」はたったの三種類(アトリズアオアトリゴシキヒワ)で、日本ではアトリだけです。カワラヒワベニマシコなどはすべて『アトリ』の中の「ヒワ」の仲間です。アトリの漢字表記は「花鶏」「臘子鳥」「獦子鳥」で、その『アトリ』の仲間はアトリをはじめ、イカルウソシメマヒワカワラヒワベニヒワアカマシコオオマシコギンザンマシコベニマシコイスカナキイスカの13種です。

②-1.http://www.birdfan.net/2017/03/03/50656/より引用のアトリ(体長約16㌢)

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②-2.http://bird-sakai.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-3141.htmlより引用のアトリのつがい(左がオス、右がメス)

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   「アトリ」の仲間が日本では②-1.の写真のアトリ一種というのは寂しいですが、日本には冬鳥として秋にシベリア方面から渡来します。主に日本海より山形県や富山県などに飛来した後、各地に散らばり、渡来する個体数は年による変化が大きいです。それが『アトリ』の仲間の渡りの特徴かもしれません。雌雄同色で身体の色が濃いめがオスです。山麓の森林や農耕地に生息し、昼行性で昼間は小規模な群れで生活しますが、夜は集団で休みます。日本においては渡来直後や繁殖地への渡去直前に、数千羽から数万羽になる大群を作る事がある謎の行動です。またこの集団行動が「集まる鳥」が転じてアトリと名前がつきました。

③-1.http://www.birdfan.net/2019/04/12/69928/より引用のイカル(体長約23㌢)

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③-2.http://www.birdfan.net/2020/03/13/78062/より引用のウソ(体長約16㌢)

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③-3.http://www.birdfan.net/2020/06/12/78982/より引用のシメ(体長約19㌢)

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    『アトリ』は元々がフィンチの仲間です。その代表的なクチバシを持つのが、③-1.の写真のイカルと、-2.のウソ、-3.のシメのクチバシの形状が物語ります。この紹介の仲間は三種三様で、イカルは基本的には漂鳥で、フィンチ独特のクチバシの強さで「マメマワシ」や「マメコロガシ」と呼ばれた平安時代からの『アトリ』の仲間です。ききなしの「月日星(つきひほし)」はサンコウチョウと並んで夕飯です。そのイカルの体型に良く似た③-2.のウソは紹介三種の中ではクチバシが小さく、和名の由来は口笛を意味する古語「うそ」から来ていてヒーホーと口笛のような鳴き声を発することから名付けられた日本では冬鳥か、漂鳥です。各地の天満宮で行われる「鷽替神事」は有名です。三番目の③-3.の写真のシメは怖い顔で有名です。イカルと同じような大きなクチバシで硬い木の実も殻を砕いて食べることが出来ます。蝋嘴鳥(ろうしょうちょう)という異称があるシメは日本では基本的には留鳥で、本州以南では冬鳥です。

④-1.http://www.birdfan.net/2016/11/11/47468/より引用のマヒワ(体長約12㌢)

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④-2.http://www.birdfan.net/2021/03/05/81728/より引用のカワラヒワ(体長約14㌢)

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④-3.http://www.birdfan.net/2014/04/18/27817/より引用のベニヒワ(体長約13㌢)

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   これから紹介する「ヒワ」の漢字表記は「鶸」です。弱い鳥と書いて「鶸」です。三種の「ヒワ」は④-1.の写真のマヒワに、④-2.のカワラヒワと④-3.のベニヒワかいます。マヒワは日本では冬季に越冬のため飛来する冬鳥と、北海道や本州中部以北で繁殖する留鳥に別れます。漢字表記は「真鶸」から真に弱い鳥というのが名前の由来です。しかし、鶸と付くだけで弱い鳥かどうかわかりません。カワラヒワは日本国内ではほぼ全域に分布する留鳥です。地鳴きは「キリリ、コロロ」さえずりは「チョンチョンジューイン」で、もっと特徴的なのが、『アトリ』の仲間のシメに写真をご覧になってわかるように怖い顔です。三種目のベニヒワは、日本には本州中部以北に越冬のため飛来する冬鳥ですが、飛来数の変動が大きいです。頭に小さな赤いベレー帽をかぶって、どちらかといいますと、次の項の「マシコ」に似ています。

⑤-1.https://www.naturephoto-cz.com/%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%82%B3-picture_ja-23432.htmlより引用のアカマシコ(体長約14㌢)

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⑤-2.http://1971.p2.weblife.me/bird/b100.htmlより引用の左がベニマシコ(体長約15㌢)と右がオオマシコ(体長約17㌢)

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⑤-3.http://www.birdfan.net/2017/07/28/54572/より引用のつがいのギンザンマシコ(左がオス、右がメス共に体長約20㌢)

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   『アトリ』の仲間の「マシコ」は四種いて、全てが赤っぽい色をしています。前項のアカマシコは頭頂部が赤いベレー帽のようですが、⑤-1.の写真は「マシコ」の中では一番小さな鳥です。また日本では数少ない旅鳥として、主に日本海側の島嶼で記録されるだけです。⑤-2.の写真のベニマシコオオマシコは身体の大きさが違うだけで、良く似た仲間です。ベニマシコはちょっと変わっていまして、中国、韓国などから日本では夏鳥としてやってきて、北海道、青森県下北半島で繁殖し、冬鳥として本州以南へ渡り、越冬します。反対にオオマシコは日本では、冬鳥として本州中部以北に渡来しますが、数はそれほど多くありません。ギンザンマシコは日本では、北海道の高山の大雪山系などで少数が繁殖するほか、冬鳥として北海道の各地に渡来します。本州では冬季まれに観察されます。翼の白線から付けられた”ギンスジマシコ”が訛ったという説や、後志の仁木町にある銀山に由来するなどいくつか説が存在するようです。写真をご覧になって分かると思いますが、この鳥は雌雄の区別が一目瞭然です。また「マシコ」の漢字表記は「猿子」で、身体の赤い色が日本猿の顔やお尻の色に似通っているからだそうです。

⑥-1.https://ja.m.wikipedia.org/wiki/イスカより引用のつがいのイスカ(左がオス、右がメス共に体長約17㌢)

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⑥-2.https://www.google.co.jp/amp/s/digitorink.exblog.jp/amp/20803877/より引用のナキイスカ(体長約15㌢)

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   最後に紹介の『アトリ』の仲間の「イスカ」の二種はこれもまた赤っぽい身体をしています。⑥-1.の写真のつがいのイスカに⑥-2.のナキイスカイスカは日本には主に冬鳥として渡来しますが、年によって渡来数の変動があります。少数だが北海道や本州の山地で繁殖するものもあり、ナキイスカは、イスカの群れに混じって、日本では数少ない冬鳥として、本州中部以北に少数が渡来します。野鳥のクチバシは色んな形がありますが、イスカナキイスカのクチバシも同じように、物事が食い違って思うようにならないことを「交喙(イスカ)の嘴(ハシ)の食い違い」と言われるように、イスカナキイスカのクチバシは、左右互い違いになっており、このクチバシを使いマツやモミなどの針葉樹の種子を啄んでで食べるのです。二種のクチバシは幼鳥の頃には食い違っていません。

   追記
   みかんこさんに「蝋梅とヒヨドリ」の投稿記事の中で、私の拙い三つの記事を紹介して下さいました。ありがとうございます。

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