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第1968回 巣を作らない鳥 ⑵

①https://amanaimages.com/info/infoRM.aspx?SearchKey=32236003020より人工孵化したひよこ

   ①の写真は人工孵化して、いま正に殻から飛び出す寸前のニワトリのヒナ、すなわちヒヨコです。このヒヨコは親鳥に抱卵されて孵化したわけでなく、人工孵化により、今まさに殻の外に飛び出そうとしています。短期間で急速に成長させる狙いで作られた商業用の肉用鶏の品種の総称をブロイラーといいます。ヒナは生育がとても早く、現在では生後5~7週間で出荷され、最大2~3kg前後の肉が取れます。またメスの若鳥は卵をどんどん産みます。それを巣を作らないと言ってやることはできません。むしろ、作らせて貰えない鳥です。

②https://shimoda-aquarium.com/spawning-of-a-penguin/より引用のオウサマペンギン(体長約85〜95㌢)

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   生き物好きの皆さんの記憶の中に、②の写真のようにオウサマペンギンが、産んだ卵を両方の趾の上に於いて大事に抱卵する姿をご覧になっておられるはずです。繁殖地は南大西洋とインド洋の、南緯45度から55度にかけて位置する亜南極の島嶼に点在します。産卵のピークは初夏に当る12月半ばから一月頃で、この時期になると繁殖地の海岸には多くの親鳥が集まり繁殖を始めます。オウサマペンギンはヒナを育てる途中で越冬するのが特徴で、繁殖期間が一年以上に及びます。一腹卵数は一個で、卵は後肢の上にのせ、抱卵嚢(ほうらんのう)と呼ばれる腹部のだぶついた皮を被せて抱卵します。産む卵は一つで、足にのせ抱卵嚢を被せて温めます。足の上で卵を温め、身体一つです。 

③-1.http://endangeredspecies-animal.info/%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9.htmlより引用のウミガラス(体長約42㌢)

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③-2.https://www.saiyu.co.jp/blog/wildlife/?tag=水中のウミガラスより引用の潜水するウミガラス

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③-3.https://www.saiyu.co.jp/blog/wildlife/?p=3166より引用のウミガラスの飛翔

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   ②の項の写真のオウサマペンギンは日本では、旭山動物園、東武動物公園、東山動植物園、のんほいパーク、天王寺動物園、アドベンチャーワールド、とべ動物園の七施設の飼育下でしかみれません。自然界で見れます「巣を作らない鳥」は③-1.の写真のウミガラスです。とはいえ、その生息は世界的には北太平洋と北大西洋、北極海に広く分布します。日本周辺では樺太の海豹島、海馬島、ハバロフスク周辺、北方領土の歯舞群島に分布し、冬期には本州の北部まで南下してきます。また③-1.の写真でもお分かりのようにペンギンにそっくりです。③-2.の写真のように、ペンギンのように、水中では翼で羽ばたいて泳ぎ、水深50㍍(最深記録180㍍)を3分間ほど潜水できます。ただし脚が体の後方にあるため、陸上を歩くのが苦手です。ヒナに給餌する場合、半分のどに入れた状態で繁殖地へ戻ります。この辺りもペンギンです。しかし、違うのは、③-3.の写真の様に、短い翼で高速で羽ばたき、海面近くを飛ぶ事ができます。

④https://www.saiyu.co.jp/blog/wildlife/?p=3166より引用のウミガラスハシブトウミガラスの繁殖コロニー

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   ④の写真は日本ではありませんが、ノルウェー最北東の町ヴァードーにある鳥島での繁殖地で、凄い数のウミガラスハシブトウミガラス二種が繁殖いたしますコロニーです。写真をご覧になってもお分かりのように、超過密な繁殖地となっています。繁殖期には無人島や陸生の捕食者が近づけないような崖や崖の上にコロニーを作ります。繁殖年齢は五歳で、約20年繁殖活動をすることが可能です。ウミガラスは絶滅危惧種に指定されており、国内唯一の繁殖地は北海道の天売島です。

⑤-1.https://amanaimages.com/info/infoRM.aspx?SearchKey=32109006004より引用のウミガラスの産卵

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⑤-2.http://www.seabird-center.jp/ororon_2018movie.htmlより引用のウミガラスの子育て

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   本題としてのウミガラスは巣を作らず岩や土の上に直接一個産卵します。卵が失われた場合一度だけ産み直すことがあります。卵は他の鳥に比べると一端が尖っており、セイヨウナシ型と呼ばれます。この形状は転がってもその場で円を描くようにしか転がらないため、断崖から落ちにくい。平均抱卵日数は33日です。ヒナは生後平均21日間は繁殖地にとどまり、親鳥の半分くらいの大きさでまだ飛べないうちに繁殖地から飛び降り巣立ちし、以後二ヶ月は海上で親鳥の世話を受けます。

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