第2051回 托卵する側とされる側
①https://wapipi.net/home/より引用の一般的な托卵を示したイラスト
托卵という子育て方法は、これを鳥の世界だけの出来事とするか、私たち人間社会にもある現象だとするのでは大きな違いがあると思います。托卵というのは、事情があって産卵後の子育てが出来ない鳥が、ほかの産卵後にあとは孵化を待つだけの営巣に、親鳥が巣を離れた瞬間を逃さず、孵化待ちのその中の卵一個分をこれから托卵しようとする托卵する側のメスが、巣の外にわざと落として、自分はその落とした卵一個分を托卵される側の巣に産みつけます。托卵する側の親鳥は、される側の卵の孵化と我が卵の孵化を予測して、相手側に産みつけ、托卵した側の卵が早く孵化し、産まれたばかりのヒナは、托卵される側の卵を一個ずつ背負うようにして、巣から除外し、自分だけが托卵される側の親鳥から、巣立つまで給餌を受け続け、①のイラストの様にいつの間にか、された側の親鳥よりも大きく育ち、離れていきます。
②-1.https://www.birdfan.net/2019/08/23/72791/より引用のホトトギス(体長約28㌢)
②-2.https://www.birdfan.net/2013/07/12/23498/より引用のカッコウ(体長約35㌢)
②-3.https://www.birdfan.net/2013/07/12/23498/より引用のツツドリ(体長約33㌢)
②-4.https://www.birdfan.net/2011/10/14/16742/より引用のジュウイチ(体長約32㌢)
②-1.〜4.のそれぞれの写真は、托卵する側のホトトギス、カッコウ、ツツドリ、ジュウイチの四種の鳥です。ご覧になられてお分かり頂けるようにすべてがホトトギスの仲間と言うことです。四種すべてが夏鳥で、初夏に繁殖するために托卵を産まれ故郷の日本で行います。こうするほかに繁殖することが出来ないのです。その理由はいまだ完全にはわかっていませんが、ホトトギスの仲間は綿羽のない種が多く、日によって体温が大きく変動してしまうので、体温変動の少ない他種の鳥に抱卵して貰った方が安定して繁殖できる為という説が有力です。つまり抱卵が出来ない鳥です。
③-1.https://www.birdfan.net/2017/03/10/50850/より引用のホトトギスに托卵されるメスのウグイス(体長約14㌢)
③-2.https://blog.goo.ne.jp/hikochu38sotu/e/39bd7a17b3ee06b57bc8f88115d749c5より引用のカッコウが托卵してくるとその卵を破棄するメスのホオジロ(体長約16㌢)
③-3.https://2ndart.hatenablog.com/entry/2022/01/18/161405より引用のツツドリに托卵されるメスのセンダイムシクイ(体長約12㌢)
③-4.https://www.google.co.jp/amp/s/plaza.rakuten.co.jp/mamikibi/diary/201909290001-amp/より引用のジュウイチに托卵されるメスのオオルリ(体長約16㌢)
する側の托卵鳥を紹介致しましたので、次にされる側です。代表的な種を③-1.の写真がホトトギスのウグイス、③-2.がカッコウのホオジロ、③-3.がツツドリのセンダイムシクイ、③-4.がジュウイチのオオルリです。細かく紹介しますと、 ⑴ ホトトギス→1. ウグイス 2. ミソサザイ 3. クロツグミ 盛んに鳴く鳴鳥ばかりで、林の中など種ごとにほぼ同じ ⑵ カッコウ→1. オオヨシキリ 2. ホオジロ 3. モズ 4. アカモズ 5. コヨシキリ 6. アオジ 7.
キセキレイ 8. オナガ 普段からあまり鳴かない鳥で、開けたところに営巣を好み、模様や大きさがまちまち
⑶ ツツドリ→1. センダイムシクイ 2. メボソムシクイ 3. モズ 4. ビンズイ 5. メジロ 6. アオジ 7. ウグイス 8. サンコウチョウ 9. ヤブサメ やはり普段は鳴かない鳥 ⑷ ジュウイチ→1. オオルリ 2. コルリ 3. ルリビタキ 4. コマドリ 5. キビタキ 6. ビンズイ 時々鳴く鳥が多い
④-1.https://www.birdfan.net/2020/02/07/76974/より引用のカッコウとツツドリに托卵されるメスのモズ(体長約20㌢)
④-2.https://www.birdfan.net/2021/09/10/83260/より新しくカッコウに托卵されるオナガ(体長約36㌢)
される側にも色んなことがいえます。④-1.の写真は鷹になれなかった雀と揶揄されるモズです。モズは猛禽類に近い食性で肉食です。非繁殖期ではメスも自分の縄張りを持ちます。そのこの鳥はカッコウとツツドリの托卵先です。その理由に餌が基本的に同じということが挙げられます。托卵鳥は昆虫食で特に毛虫を好みますが、他の鳥は毛虫を好みませんが、昆虫などであれば育ちます。また子育て中のモズはヒナにはイモムシなどの消化の良い幼虫を与えるので好都合とも言われます。また、江戸時代の文献では、カッコウはホオジロの巣に好んで托卵するとの記述がありますが、現在ではホオジロを托卵先に選ぶカッコウは減っています。ホオジロは、巣の中にカッコウの卵に似た卵があると放り出してしまうからです。ホオジロは、カッコウに繰り返し托卵されたことで、高い卵の識別能力を有し、それが子孫にまで受け継がれているのです。それでカッコウはよく似た卵を産む④-2.の写真のオナガを選んだようです。される側も防御が進んでいるのが判ります。
⑤-1.https://amanaimages.com/info/infoRM.aspx?SearchKey=32218001834より引用のカッコウを追い払うオスのノビタキ(体長約13㌢)
⑤-2.https://originalnews.nico/76938より引用の托卵とよく似た卵
される側にとっては死活問題です。自分の子供と信じていますから、せくせく餌を運んで早く巣立って貰おうとして育てていて、最後まで托卵の子供だと知らないのですから。④の項でもホオジロがカッコウの卵を認識し、反対にカッコウの卵を排除するとありましたから、今までの経験を学習したと思います。また、する側にも生き残りをかけないといけませんので、今度はされる側にオナガを選びました。オナガにとっては、カササギとの生存競争に敗れ西日本から去り、更には天敵カラスからヒナを守るために、猛禽類ハイタカの営巣の近くに数つがいで営巣することで、カラスから逃れようとしていますが、ここに来てカッコウと卵が似ていることから狙われる対象になってしまいました。しかし新規開拓先のオナガは、托卵の開始からわずか10年ほどで、⑤-1.の写真はカッコウを追い払うノビタキですが、カッコウに対する攻撃や、似ていない卵を除去する行動が見られるようになりました。またどのような能力なのか、托卵する側のカッコウも、卵の柄を似せる方向へと急速に進化を遂げ、識別の目を逃れるように対抗しています。種の存続の為、進化の戦いが行われています。もう一つの謎は鳥は刷り込みをして、親鳥を認識していき、自分も親鳥の生き方に近づきますが、托卵の鳥は親鳥をみてません。
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