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音楽制作業 OFFICE HIGUCHI 10周年までの道のり#27 〜怒涛の追い込み、幾千のトライ&エラー、全てを燃やし尽くしたその果ては〜

お世話になっております。代表の樋口太陽です。
年度末まで残された時間はあと4ヶ月の勝負。方針は固まりました。
 
会社存続とかそういうのは置いといて、とにかく小寺さんによい報告ができることを目指す。そのためにできることは、ただひとつ。

いくしかねぇ5000万円。
 
 
この試合において、最初に自分が決めたルールだと「売上」だけが焦点なので、なんだか裏ワザ的な話になりますが、いくら外注費や経費を使って達成しても別によいということになります。目的のためなら手段を選ばないことを決心。

「僕は悪にでもなる」

中島みゆきさんの名フレーズが思い起こされるような心境の中で行われた、幾千のトライ&エラーを、記します。

1.社歌つくってみませんか?作戦


まず考えたのは、今から通常の営業活動をブーストさせても間に合わないだろう、ということでした。目をつけたのは、映像プロダクションや広告代理店などのクリエイティブ業界でなく、星の数ほど存在する一般企業。日本の企業は、350万社を超えると言われます。ここに手を広げれば、数は限りない。

目をつけたのは、社歌。

この時、巷では社歌が流行っている、という情報が目に入ってきておりました。


CMの音楽であれば、CMを打つ事を考えているようなある程度大きな企業にしか関係のない事かもしれないが、社歌であれば、どの企業にとっても関係ない話ではないはず。自分たちのスキルが活かせて、目の前の売上に直結するのは、これだ!

あとは、どうやって告知するのか。電子メールだと見過ごされる。SNSもいいかもしれないが、ここは、古典的な手法。郵送によるDM(ダイレクトメール)だ。思い切り目立つデザインにすれば、他のチラシと同様に捨てるようなものではなくなって、目を通していただけるはず。たくさん投函すれば何かしら結果が出るだろう。こういった独自の考えにより、社歌DMを制作することにしました。

サイトを手がけていただいた、桜井祐さん、吉田朋史さんにお声がけして頼ります。今回のターゲットは、クリエイティブ業界ではない。であれば、明快であることが一番で、とにかく目に飛び込んで無視できないようなもの、という考えのもと、完成したものがこちらです。

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うん、すごい存在感です。

中身も、クリエイティブ業界でない、一般企業の方にもわかるような簡潔な表現を心がけます。

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通常、広告音楽の金額はケースバイケースなので、基本料金のような値段は提示しておらず、一件一件お見積もりという形ですが、この場合は目安となる金額を示さないと動きづらいだろうということで、それも中身に記載しておきました。

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これでもかというぐらいデカデカと書いた連絡先が逆にオシャレです。もちろん弊社には「社歌係」というものは特に存在してありませんでしたが、こう書いておけば、「社歌係」が独立して存在しているような大きくて安心感のある会社に感じて頂けるでしょう。

最高だ・・・。これは簡単には捨てられにくいだろう・・・。

自力でポスティングするにも大変なので、ダイレクトメールの投函サービスを利用することに。予想外だった点は、印刷と投函だけでかなりのお金がかかってしまうという点です。5000部を印刷して投函するのに40万円程度。東京とその近郊の県で、少しでも実を結びそうな業態の会社を絞り込み、お送りします。あとは待つだけ。

多大なる力を注ぎ込んだこの社歌計画の成果は・・・


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ひとつも、結果が出ませんでした。今だと理解できますが、社歌をつくるというお知らせは、本気で今から社歌をつくろうと思っている人にしか、関係のない出来事。「社歌が流行っている」とはいえ、まだまだマイナーな事だったようで、無差別に投函しても、ヒットする可能性が低かったようです。もっと無尽蔵に、それこそ日本中の企業350万社にダイレクトメールを送れば、ご依頼をいただける可能性もあったかもしれませんが、この程度の規模では、効果がありませんでした。せっかくの素晴らしいデザインだったのに、自分の甘い見通しのせいで、もったいないことになってしまいました。

2.リスティング作戦


リスティングとは、お金を払うことにより、検索で上位に出てくるように仕掛ける広告のことです。クリエイターには似つかわしくないような、なんともビジネスライクな手段です。しかし、この時の僕は、目的のためなら手段を選ばない状態ですから、なりふり構っていられません。

このリスティング作戦にも、40万円程度を投下しました。

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「社歌」と入れただけで、うちのサイトが一番上に出てくる!すごい。それだけでなく、「オリジナルBGM制作会社」「音楽制作/動画~CMまで実績多数」などなど、検索ワードによって上位に出てくるように操作していただきます。この類の検索ワードは、あまり一般的でないワードなので、値段が比較的お安めに実行できるとのこと。逆に「旅行」のような一般的なワードだと、値段がとても高くなる。へぇー、世の中色々あるもんだなぁと、勉強になりました。

このリスティングの効果により、楽曲制作が一件、レコーディングが一件、決まりました。ただし、この効果は一時的。それ以降も継続的にお仕事が続いていくような関係にはなりませんでした。

3.緊急スタジオ割引キャンペーン作戦


続いては、緊急スタジオ割引キャンペーンです。生々しい話になりますが、通常の楽曲制作の場合、発注をいただいたあとに納品、請求に至るまでが、場合によっては数ヶ月以上と、かなり時間がかかります。それが6月になった場合は、年度をまたいでしまいます。そうなっては困ります。

だって今は、来年度の売上など、どうでもよいのですから。

しかし、楽曲制作の働きではなく、録音スタジオとしての働きであれば、納品、請求までにあまり期間がかかりません。

今、糧になるのは、録音スタジオ業務だ。しかし、ただ理由もなく割引をするのも、不自然・・・そうだ。会社はもうすぐ7周年を迎える。というわけで、7周年だけに「スタジオを通常の7割の値段で使って頂けます」ということにしよう。30%OFFキャンペーンだ。多少無理やり感があるのは否めないが、まぁいいだろう。仕事でお世話になっている皆さま、思いつく限り広くにお送りします。

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きっと、この機会に多く利用していただけるだろう。これで少しは足しになるはず。成果は・・・


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広告案件のスタジオ利用というものは、普段より少し安いからといって、

「あらまぁ。今だと30%オフなのっ? じゃあ早速レコーディング、もしくはMA入るわよ〜!!」

という流れが起こるようなものではありません。使用者にとって必要なタイミングであるかが全てであって、少しばかり安いという情報を見たからといって馴染みのない初めてのところに駆け込むわけではない、というのがわかりました。

4.毎日Facebook投稿作戦(二ヶ月間)

4月から二ヶ月間、Facebookの投稿を毎日するという計画です。

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僕のFacebookの友達には、直接の仕事相手が数多くおります。この狙いは、少しでも人様の目に触れることによって、自分の事を思い出していただき、お仕事を頂ける機会を創出することです。投稿が多くなって、ウザくて迷惑ではないか?関係ありません。だって、「僕は悪にでもなる」と思っているのですから。
 
あわよくば次の仕事に繋がりそうな実績の告知もたくさんしますが、あまりウザすぎないように、どうでもよい投稿も挟みこみながら、バランスをとります。

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たまにうっかり24時を越えてしまう日もありましたが、内容のバリエーションを考慮しながら一日も欠かさず投稿。そして終わりました。

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この成果は・・・


よくわかりません。


これに関しては、もはや何かしらの具体的な効果を狙ってというよりも「毎朝、神社で願掛けをする」というのに近い、やっておかなければ気が済まない行動だったと言えるでしょう。

5.微妙な時期の売上を本年度にねじこみ作戦


最終手段はこちらです。5月の売上なのか、6月の売上なのか、微妙な時期のものを、全て5月にねじこむ(税務上、問題ない範囲で)。

なお、会社の財務面だけを考えた場合、5000万円にギリギリ満たない状態、4980万円ほどでフィニッシュした方がよいということになります。なぜかというと、5000万円に満たない場合は、当初宣言していた100万円のボーナスを払わなくてよくなるからです(#23参照)。

ただ、言うまでもなく、そのような価値観で生きてはおりません。もはや財務とかどうでもいい。目指すのはただ、5000万円だけ。この状況においては、会社にお金がいくら残るかなんて、僕は興味がないのです。


オラァ!

オラァッ!!

いくしかねぇ・・・5000万円!!

オラァァァアアアッ!!!!!




ギリギリまで全てを燃やし尽くし、5月末を迎えました。2017年度の損益計算書は、こちらです。

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5015万5252円(税抜)。


いけました。
ギリ、いけました。
無理っぽかったけど、いけました。

皆の一致団結がなければ無理だったし、いち早く未来の予想をして手探りでも営業活動を始めなければ無理だったし、通常仕事の運が味方しなければ無理だった。そして、思わぬきっかけから始まった、最後の4ヶ月の死に物狂いのあがきも、振り返ってみれば必要不可欠だった。何がひとつ欠けてもこの結果にはなりませんでした。

盲信的に実行した作戦たちは全然思ったようにはいかなかったけど、リスティング作戦で少ないながらも入った仕事分を抜くと、4952万7252円になります。仮に試行錯誤の中の一つである、リスティング作戦をやっていなければ、5000万円突破は達成できなかったのです。狙ってやったことと、狙っていない偶然と、色んな事柄が少しずつ積み重なり、紙一重でくぐりぬけたようなものでした。

※余談ですが、このラストスパートの代償として、2108年度の6月の売上は、55万円という、まさにケタ違いの悪スタートを切りました。


これが、最終結果のグラフです。

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この全てのストーリーを知らない人から見たら、2015年のピークを境に、右肩下がりになっているというだけの「ちょっと最近調子悪いですね・・・」と言われてもおかしくない会社の売上グラフです。

しかし、僕にとっては今までにないほどにはっきりとした「達成」でした。今までも、その時々でたくさん仕事を頑張ってそれなりの結果は出していましたが、この2017年度は、初めて自らの意志を持って険しい状況を把握しながら乗り越え、真に力強くなれたと感じれるような一年になりました。

仕事をしてお金をいただくというのは、自分たちの働きがそれにしっかり見合っていなければなりません。その時の自分たちにとっての都合だけで、無理にお金を稼ごうとする事の不自然さと限界も感じました。僕たちにとっては、この一年間だけの緊急措置でしたが・・・「長く人や社会と関わりながら豊かに仕事を続けるためには、このような無茶なやり方を追求してはならない」という事も、学べました。

この一年間、僕はクリエイターのイメージとは程遠く、ずーっと「カネ、カネ」言っている、カネの亡者野郎でした。しかし、その奥には、人にはとても言えないような理由がありました。この体験により、人は時として、奥底にのっぴきならない事情を抱えている、というのも理解できたような気がします。

自分のそんな経験を元に、他者に対して想像力を働かせれば、一見すると奇妙な行動をとっている人にも、きっと人はすこしだけ優しくなれるはず。そう思います。


ひとまず、これで、なんとかなった・・・。一年間が終わりました。


これで、やっとみんなで念願の乾杯ができます。小寺さんも参加して、5人揃っての打ち上げをしました。大きな目標を達成できたからといって、クラッカーを鳴らすとか、スピーチをするとか、朝まで飲み明かすとか、そういうことはなく、普通にほどほどに飲んで帰ったので記念写真などもないのですが、その夜に、みんなに送ったメールが出てきました。当時の気持ちを表すものとして、こちらに記します。

ぶち あんちゃん ずきちゃん

今日はありがとうございました。
この一年の思いを話すと、どうしてもしみじみな会になってしまいそうで、
そういう日にはしたくなかったので、ぱっと飲んで終わりましたが、
ひとえにみんなのおかげで、今日がありました。

今日、こうやって過ごす事をずっとイメージして、思い描いていたから、がんばることができました。仕事を始めてから、いままででいちばん心が動いた、強く思い出に残る一年でした。

これから、会社がどうなろうとも、この奇跡のメンバーで走り抜けた2017年度の事を、僕は一生忘れません。

ぶち あんちゃん ずきちゃん、
最高の一年間を、本当にありがとうございました。


この時に会社を存続できたのは、紛れもなく、このメンバーの功績です。

改めまして、ぶち あんちゃん ずきちゃん、この場を借りて、本当にありがとうございました。

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