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音楽制作業 OFFICE HIGUCHI 10周年までの道のり#28 〜新メンバーのジョイン、新たな日々が始まる〜

お世話になっております。代表の樋口太陽です。

波乱万丈だった2017年度が終わって、2018年度が始まる時。このころ、社員を募集して、新たに音楽プロデューサーを迎え入れることになりました。ジェット宮田です。

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彼と初めて出会ったのは2010年。上京してまもないころ、音楽の仕事だけでは生活できない時期に始めた、中野のカラオケのバイトでの出会いでした。

バイト初日、説明会の同じテーブルに座っていたのが彼でした。説明が始まる前、待ち時間があります。すると、彼はおもむろにテーブルを指で軽く叩き出しました。テーブルと指によってリズムが構築されていきます。そのリズムの的確さとグルーヴがハンパじゃないのです。「えっ、、何か、楽器やってるんですか?」と聴くと彼は「ジェット宮田という名前で カホンやってます」と答えました。

その後、彼とは一緒にライブをやる機会も多くありました。「アコースティック編成じゃないとダメな時にドラムの代わりにリズム刻むやつ」というのが僕にとっての従来のカホンのイメージでしたが、そういった印象を覆すような、アグレッシブなプレイが彼の特徴でした。2012年のライブ映像が出てきました。

音楽制作のお仕事でパーカッションをお願いしたことも、多くありました。
ちなみに、#19で触れた「奥地のフルーツ」の演奏も彼によるものです。沢山のパーカッションで、ジャングルの奥地感を表現していただきました。


彼は生粋のミュージシャンなので、広告音楽の世界の詳しいところにはこれまで触れていませんでした。しかし、音楽プロデューサーという立場も、きっと彼には合うんじゃないかと思って声をかけ、間も無く入社することになりました。彼にとっては、これが社会人としてのデビューでもありました。

鈴木渉さんに再びお声がけして、プロフィール写真を撮っていただきます。

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2017年度の終わりは、様々な「のっぴきならない事情」をエネルギーとして燃やすように突き進んできましたが、ずっとそれを推進力にして進んでいくわけにもいきません。会社史上最大にガタイのよい彼が、自分たちにとって新たなエンジンとなってくれることを期待しました。

恒例の、詳しすぎる年表も形にします。

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再びイラストも形にしていただきます。今回動くのは、ほっぺたです。

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このころ、また新たに出会いがありました。杉山未紗さんです。

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杉山さんは、大手企業を退職後、アメリカの名門、バークリー音楽大学への留学を経て、うちのサイトを見つけて応募いただいて、帰国後にオフィス樋口にジョインするという、変わった経歴の持ち主でした。音楽の才能に加えて英語を使いこなせるという点も期待が持てて、これからの新たな風を予感させました。彼女は音楽作家として入っていただきます。

全くタイプの異なる二人の新メンバーが入社し、この時期のメンバーはこのようになりました。

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 ジェット宮田はこれからは演奏者ではなく音楽プロデューサーになるので今まで突き詰めてきた演奏技術の向上はいったん忘れ、打ち合わせ技術の徹底トレーニングを行います。実際の打ち合わせのほぼ全てに同行し

「さっきの打ち合わせの場では、誰がどういう感情だったのか」「音楽作家には何を伝え、そして何をあえて伝えないのか」

などを、ひとつひとつ噛み砕きながら体感していきます。


杉山さんには、社内共通で使用しているCubaseという音楽制作ソフトを習得して頂く必要があったので、新井さんからマンツーマンで伝授してもらいます。オフィス樋口には、兄のフリーランス時代から熟成させた、秘伝のタレと言えるようなCubase操作ノウハウの数々が存在しますが、それの習得は一人ではなかなか厳しいものです。

誰かが誰かに直接伝授して、身体が勝手に動くレベルになるまで徹底的に付き合う必要があります。#1の記事でも触れておりますが、かつてはそれを兄が僕に伝授したという過去がありました。


音楽クリエイターは、独学で突き詰めるイメージがあるかと思いますが、クライアントワークの世界では独学だと限界がある部分が多いもの。チームでのノウハウ共有によって、飛躍的にやれることの幅が広がります。

杉山さんの元々の音楽的才能に、秘伝のタレのノウハウが組み合わさり、数ヶ月後には、世に出る仕事をいくつも手掛けて頂くようになります。せっかくなので、このころのお仕事をいくつか。

杉山さんが作曲を手掛けた、ポケモン海外向けムービーの音楽です。可能な限りオーケストラ楽器の生演奏をスタジオ収録して、オーケストラアレンジが得意な杉山さんの持ち味を活かせるような音楽になりました。


ジェット宮田はパーカッションだけでなく、印象的な声の持ち主でもあります。ジェット宮田が声を担当したCM音楽です。

杉山さんが声を担当したサウンドロゴです。

ジェット宮田が太鼓を叩き、大人数のボーカルが絡み合った楽曲です。歌えるメンバーが揃っているので、こういう楽曲では皆の力が発揮できます。


新メンバーの持ち味を活かしながらの通常業務も進めつつ、ある時、強化合宿を行うことになりました。場所は長野県に建てた自分の新居です。会社存続のため奮闘した忙しすぎる一年間と同時進行で、こんな家が出来ておりました。

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ふだんと違う環境で親交を深めるという目的もありますが、それだけではなく、強化合宿の名にふさわしいイベントを用意していました。

それは、音楽のプロトタイピング体験です。#17の記事でも触れております。


兄と僕は講義や自主イベントで何度も経験していた、即興の音楽制作の経験。あれが血となり肉となってきた。音楽制作を生業にする上で、あれを知らないのはもったいない。

設立当初よりオフィス樋口に流れる文化であったスリリングなイベントを、今こそ新メンバーが加わったこのタイミングで、体感してもらいたいと思いました。

広告音楽制作の現場を模した、役割を分けてのロールプレイを行います。座組みはこんな感じです。

ロールプレイ

クライアント役は、ちひろ。僕は歌を担当するタレント役なので楽曲制作は行わず、声のパフォーマンスのみを行う。

歌詞は、ちひろと僕とで作成しました。このようなものです。

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架空の商品である、新しい銘柄の豚肉「ぶたぶたトントン」をプロモーションするための、30秒のコマーシャルソングをつくるというお題で、音楽プロデューサーと音楽作家がタッグを組んだ、それぞれのチームに発注。同時進行で楽曲制作を行い、短時間で決着をつける勝負です。


まずは、ちひろと僕がいる部屋に音楽プロデューサーを呼んで打ち合わせを行います。よりリアルな現場を模すために、音楽作家はこの打ち合わせの場には不在です。

「朝は爽やかな感じ、昼は元気な感じ、夜は優雅な感じ、どのシチュエーションにも合う万能な豚肉だということを訴求したい」

などなど、このCMで目指したいことを伝えます。

情報を持ち帰ったプロデューサーが、自分のフィルターを通して音楽作家に伝え、そこから楽曲制作スタート。超ラフスケッチなデモ第一弾が形になります。

それを聴かせていただきつつ、歌を担当するタレント役である僕が、いきなりその場でボーカルを録音。少しだけ完パケに向けてのフィードバックを伝えてその場から去る。

各部屋それぞれでブラッシュアップ作業を行い、書き出して納品。AチームとBチームは、お互いの曲をまだ聴いておらず、最後の発表会でついに聴くことになる。


全ての過程が3時間ほどだったかと思います。あくまで社内研修のためだけに制作された音源なので、通常は世に出せるクオリティではありませんが・・・という前置きの元、せっかくなので公開します。

Aチームの完成形はこちらです。


Bチームの完成形はこちらです。

はたして、この勝敗はどちらかだったか・・・ぜひ聴いてみてください。
 
「とにかくやるしかない」という状況の後押しがあれば、まったくの白紙の状態から3時間ほどで、このようなものができるんだ、というのは、新メンバーにとってインパクトある出来事だったのではないかと思います。


もう一つ、今こそどうしてもやっておきたいイベントがありました。2016年に開催したCM楽曲を次々と演奏していくイベントの第二弾。

OFFICHI HIGUCHI THE LIVEです。

このイベントは、周到な準備が必要で、直接的な利益に繋がるかもよくわからない、かなり腰を上げるのがしんどいイベントです。しかし、しんどくても今こそ再びやる時だ。なんとなく、そう思いました。


つづく

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