ちょっと昔に経験したこと VOL.2

直近のものがアートポート(正確には「アートポート・プロジェクト」)
のインタビュー記事。

「ARTPORT PROJECT」(STRANGE DAYS 2015年7月号)

これは当時自分の方から厚かましくお願いして実現した企画だった気がする。
アートポートは80年代初頭にムーンライダーズの故かしぶち哲郎さん(Dr.)、鈴木博文さん(B、Vo)と白井良明さん(G、Vo.)が始めたバンド内ユニットで、僕はその音楽を多少のライブ音源でしか聞いたことがなかった。
なのになんでこんなにインタビューすることにこだわったのかあれから6年の月日が流れ、その理由は判然としない。

しかしこの数年前下北沢某所で開催されたムーンライダーズの所属事務所ムーンライダーズ・ディヴィジョンのガレージセールの時に会場で平澤さんが博文さんを紹介してくださって、購入したグッズ(はがきサイズのポートレート)にコメント入りのサインを頂いたことがあった。とある事情で肉体的・精神的に困難な状態にあった自分はそのおかげで乗り越えられたという経緯があった。
平澤さんには本当に感謝しています。

当日は折しも関東地方に近づいた梅雨前線の影響で定刻の数時間前からすでにぐずついた空模様だった。
最寄り駅を降り、近くの喫茶店で質問内容をギリギリまで書き直したりして、取材場所となったムーンライダーズ・ディヴィジョンに着いたころにはけっこう土砂降りだった。
自分は全く慌ててないフリをしつつその実かなり焦りつつまだ買ったばかりで操作も覚束ないICレコーダーの電池交換などしていたら大御所白井良明さんが入ってきた。
挨拶したかしないかのうちに白井さんは「さっそく始めちゃおうよ」と切り出し、インタビューは単独のかたちでスタートした。
数分お話を伺ったところでICレコーダーの様子がおかしいことに気づいた白井さんは「あれ?これ回ってないよね」と指摘。
たしかにパイロットランプは点いているものの「スタンバイ」の状態になっている。
さすがは芸歴40年、洞察力も尋常じゃない!と感心している場合ではない、どうしたらいいんだろうとまごまごしている自分に「いいよ、最初からもう一回喋りますよ」とニッコリ笑って全く同じ内容をお話してくれた。
そうこうするうちにもうひとりのメンバー鈴木博文さんが雨で濡れた皮ジャケット姿で現れた。
博文さんは「どこまでいったの」と確認すると、あたかも最初から参加していたかのようなスムーズさで当時を振り返りながら穏やかな口調で活動当時の状況歌詞の着想などについて語ってくれた。それはまさにプロの仕事だった。圧倒された。
作品についての話は定刻通りに終わり(リイシューゆえ基本的に新しいトピックもなくおふたりとも非常に難しいミッションだったと思う)
レコーダーが止まったあとは野田さんが準備してくれた93年に行われたアートポートのライブ動画を観ながら雑談になって、亡きかしぶちさんのドラミングについて白井さんがコメントしたりしながら一緒に観ていた。
写真撮影。3人組ということでクリームの「グッバイ」のジャケットのポーズをとってくれたり終始和やかなムードで、最後は事務所の奥から鈴木慶一さんが現れ、「俺もアートポート入れてくれよ。ドラムで」と笑っていたのが印象的だった。

最後に、もう一度、平澤さんには本当に感謝しています。

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