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【詩】ハロウィンの頃なら

教会の裏路地に続いている
長い坂道を登っているドクロは
片手に紙袋を抱えて
乾いた口笛を空に溶かす
袋の中身は林檎やキャンディバー
今の季節では珍しくない光景だ
腰の骨に直接ウォレットチェーンを繋ぎ
節穴の目には感情がない
不気味な感じもするけど
ジョギングしている老人や
犬の散歩をしているマダムも
ドクロに気軽に挨拶をくれる
紙袋を持っている手と
反対の手を軽く挙げて応える
モンスターを差別する風習は古いのだ
同時に恐怖が麻痺しているのかも
紅葉した街並みに懐かしさはなく
黒いバタフライとすれ違うとき
自分が何歳なのかも分からない
肉がないから隠し事もないのに
嘘をついてしまう自分がいて
戦争の記憶は消えない
死はもはやメタファーでしかなく
咳もできないのに
欲望だけが残っている
ピザ・ハウスから漂う香りに
思わず足が近づいていくのだ

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