【詩】シャガールと学生
学校をさぼって噴水のある公園
軋むブランコを揺らしながら
煙草を吸っているスイート・リトル・シックスティーン
友達もいらない、恋愛もいらない
かと言って他に欲しい物も特にない
掲示板に貼られているシャガールの展覧会
そのフライヤーを見つめている内に
空とは違う青色に惹かれて
前橋の市美術館に足を動かした
バス代がもったいないから
初夏の空気は湿っぽいけれど
大きな橋を渡る足取りは猫のように軽い
途中で紫陽花を写メに撮る
美術館と呼べるほど立派な建物じゃなかった
申し訳程度の赤いリップクリーム
指で唇に撫でつけながら
入口で学芸員のお姉さんは
学生だと分かっていても注意しなかった
なんとなく許された気分で
青い翼をもつペガサスの絵や
少し悲しくて楽しい黄色いサーカスの絵
息をするのも忘れてじっくり鑑賞する
外に出たとき、心に小さな穴が空いていた
その穴からようやく呼吸をする
美術館の裏にあるアイスクリーム屋で
ピスタチオのアイスを買って
指をつたう緑を舐めて幸せを感じた
帰りはバスを使おう
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