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【連詩】電飾天象儀

(錫)錫ノ夜 (笠)笠原メイ

(錫)幾層の風は機械音に乗って
剥がれながら折れながら笑いながら
透明を突き抜けて甘ったるく充満する
気持ち悪い景色
もじゃもじゃした貴方のむさ苦しい髪を梳いた
手のひらにまとわる皮脂をワンピースの裾で拭った

(笠)パレードの夜からアトリエの朝まで
光の軌道は指揮棒に委ねられた

虚ろな表情で雅美は言葉を灰にして
水素のジュークボックスに
透明の硬貨を一枚入れる、紅い指先
ゴースト達が踊り狂う
洗剤の雨が町を綺麗に見せる
花が濡れてる 楽譜だった

歌うと傷口が広がってしまうから
冬の海は君の声に似ている

(錫)たくさんの泡を見たことがある?
湿気た波の重なりが産む寂しい光景を

幻想的だなと近づくと実は汚くて臭い
そのときの気まずさといったら

触れるってそういうこと

白鳥が痛がっていた
誰かが金平糖を食べさせたみたい
青い星のような目になってしまった
絞り出す涙がちりちりと音を立てていた

どうしたら覚めるの
褪せていくのはどっち

(笠)君は君に似ていて
僕は僕に似ていなかった
あの約束もただの言葉遊び

目隠しをする天使が後部座席で
六等星を指さして微笑んだ
心配したスピカが近寄ってきて
二人の目を金色の糸で縫い合わせる

意識が戻ったとき全ての夢が
現実になってしまうのがただ怖かった

*今回は錫ノ夜さんとの連詩作品です。錫ノ夜さんの静謐な世界に僕の猥雑がネオンが絡み合うようなイメージです。

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