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【連詩】星に届いたレヴェランス

(へ)へちゃ  (笠)笠原メイ

(へ)家庭教師先の隣が教会で
ゴスペルの合唱が聞こえて来て
美しいハーモニーにこっそり聞きほれてた

誰かが完璧な音楽は静寂だと言っていた
静寂が神に届くかは知らないが

神がいたとしてその音楽は
全宇宙に遍く伝わるように
数学で書かれてるかも知れない

電波なら80光年
ボイジャーは17光時先を飛んでる

(笠)庭でバレエを踊っている少女
煙草を吸って眺めている老いた神父
さざ波が耳を優しく洗う

ゴールデンレトリーバーのお腹を枕にして
見上げた青空を半分に切り裂いた

耳を塞いでも聞こえる音楽は
心臓音じゃないし、いらないものが多すぎる
癒えない傷については何も言えないよ

愛が楽譜化された世界でも
8ビートに宿った涙を信じたい

(へ)断末魔のバッハの旋律
神父と愛犬と少女のお伽噺
ビロードに包まれて

光速で進む者の時間は進まない
偏在する

普通の家庭の少女には
学費が払えず
夢は中途に終わった

いつしか神父からもらった
クロスを胸に着け
パンクロック
愛と憎悪
夢と絶望
体制を批判する
歌を歌った
MCには
バレエ式のお辞儀をした
メンバーには笑われたが

(笠)パンクロックは革ジャンを着たり
ギターを壊したり、刺青を彫れることじゃなく
自分に素直になることだった

生きることは負けることだった
だから少女は息を続ける

星座の位置
赤いカーディガン
色褪せた讃美歌集
錠剤の白い罪
愚図ついた曇天
ビートの亡霊
声にならない声
お願いだ
生まれた町まで
行ってくれないか?

神父も愛犬も灰になってしまった
世界はそれでも美しく
夢は不死鳥のように蘇った


※今回はへちゃさんとの連詩です。テーマは「音楽と救い」です。僕が思い描いている音楽の形を見事にへちゃさんが掴んでくれて、スタイリッシュな詩が完成しました。

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