【連詩】相互依存性同じ朝中毒

(エ)エキノコックス　(笠)笠原メイ

(エ)出てこれんヤドカリ

(はじまり)おわり
人間は比べたがる
レッサーパンダとかイヌサフランとか
比較実験。あたし、研究中じゃけん。
出てこれんヤドカリ。
素晴らしい研究結果、出ました。
「希望を持つようになったら
おしまいだよ。」
頭でっかちになって貝殻から出れん。
賢くなった気がしたその2秒後
あたしは死にました。
be研究者ゾンビ
おわり(はじまり)

(笠)赤ずきんとカートコバーンの出会った町の空気
精液の匂いがしたけど
花を選ぶように　林檎を売るように
バス停を探すように　星を数えるように
アヒルかと思ったら ぜんぶ愛しい君でした
「私ってググれば出てくるような”女の子”なんだよ？」
わざと傷つく、海岸で拾った貝殻
檸檬語が話せる冬のピノキオと踊る
車に轢かれすぎた猫が最後に見た光景
バグダッドで一番さびれた星のないレストラン
その夜、銀行強盗は天国の家賃を手に入れた


(エ)20年前、ヘラおと出会った町の陰鬱な空気で
あたしのhighが満たされるうちは
ヘラおは自分を保つために
理由をつけてあたしを大切にしてくれた
ので
どこにでもいるよ、あたしみたいな女の子
ってセリフで食いつかせるあたしもヘラって
だから100均でヘラ返しを買いました。
その後、全部便利で
三日月の光をとらえないっていう
スマホのカメラ機能が重要になってきた
時代だけど
あのひとはどこで何してるか知らない
ネットニュースには
あのひとと同姓同名の人が殺されてる記事


(笠)40年後、ジェルソミーナの薄い唇に
蹉跌しきった牙が突き刺さった
海王星が見える、裸で脅えていたヤドカリ
それは好きじゃなくて隙だと思うぜ
燃やされた幾千の天使、死体は見つからなかった
市販薬を片っ端飲み込んで
原子力発電所に頭から突っ込んだ
月も見えない静かな夜明け
綺麗ごとしか言えなくなった部屋に
モンローベッドブルースが流れる

「死になさい」

優しい声で目が覚めた、悲しくはない

＊今回はエキノコックスさんとの連詩です。テーマは「冗句(ジョーク)」です。尖っていて、煌めいている、エキサイティングな詩になりました。書いていて楽しかったです。