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【詩】それぞれのリハビリ

歩けなかった鹿の子供が
ゆっくり立って見あげた太陽は
冷たい洗剤の香りがした
喋れなかった赤髪の少女が
嗚咽まじりの「ありがとう」を言うと
世界中の時計の針が一秒進んだ
スクラップになった長距離トラックが
子供の遊び場所になって
向日葵の花とじゃれ合っている
嘘をつけなくなった政治家が
出来立ての熱いラーメンを啜って
新しい国の形について考えている
戦争のトラウマで眠れない老人が
夜中に淹れる一杯のアイリッシュコーヒー
昔の友達に手紙を書いている所
喉の病気をしたブルースマン
別に自分で歌わなくても構わないと
指先から血を流してギターを練習している
過去を全て忘れてしまった天使が
初めて見た自分の顔に惚れて
鏡の前でファッションショーしている
振り返ることはいつでもできる
だから今は前を向こう

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